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沢登り会越国境

只見川 大熊沢一ノ沢 〜 前沢 毛猛山は遠かった!

沢登り

2022年10月1日(土) 14時間50分
奥只見ダム(4:00) – 上大鳥橋(4:50) – 大鳥ダム(6:25) – 船着場(7:05) ~パックラフト~ 大熊沢出合(8:10) – 一ノ沢出合(10:30) – 二俣手前CO1,135m(18:50)
2022年10月2日(日) 13時間20分
二俣手前CO1,135m(6:15) – 支流出合(6:30) – CO1,150mのコル(7:55) – 前沢 – 二俣(10:35) – 標高点542m(13:00) – 前沢出合(14:00) ~パックラフト~ 船着場(15:30) – 大鳥ダム(16:50) – 上大鳥橋(18:30)- 奥只見ダム(19:35)

メンバー : 2人(Waka, Kさん)ラバーソール
天気 : 晴れ
装備:50mロープ(7.9mm)、40mロープ(6.5mm)、パックラフト、パドル、ライフジャケット

以前より気になっていた毛猛の大熊沢へ行ってきた。
大熊沢の出合は田子倉湖に閉ざされており、入渓するには継続遡下降や船で向かうしかない。さらに大熊沢は絶妙な場所にありどこから向かうにしても遠くてアプローチを考えさせられる。

以前、田子倉ダム方面から村杉半島の白沢へパックラフトを漕いで向かったが、約4kmの距離にも関わらず疲れてしまった。当時は、本当は大熊沢へ下見にも行きたかったが果てしない距離にこりゃ無理だと断念した。
今回は奥只見ダムからのアプローチでトライしてみることにした。大熊沢出合まで林道歩き12km+パックラフト3kmをこなす必要があるが、田子倉ダム方面から10kmくらい船を漕ぐよりは楽だろうと考えた。

結果としては「やっぱり遠い」ことに変わりは無かった。
それでも秘境・大熊沢へ足を踏み入れることが出来て本当に良かった。私やKさんにとっては何よりも「この山域で活動すること自体」が価値のあることなのだ。かなり疲れたが、終わった今となってはかけがえのない思い出である。

1日目 : 奥只見ダム〜大鳥ダム〜大熊沢一ノ沢

前日のうちに奥只見丸山スキー場の駐車場まで入り仮眠。翌朝3:30起床。起きて最初の一言はKさんと声が揃った。「寒いっ!」
もう夏は終わり、季節は冬に近づいている。吐く息が白い、外気温9度となかなかの冷え込み。気合を入れながら支度を済ませ4:00出発。

まずは12kmの林道歩きだ。上大鳥橋までの区間は積雪期に2回歩いたことがある。雪があるのと無いのとでは大分印象が異なる。ひたすら歩きやすい車道が続く。4:50上大鳥橋を過ぎてさらに奥へ。とにかく長い。Kさんが何度も「帰りもここ歩かなきゃ行けないのかぁ…。」と呟いている。道中退屈しないためにもKさんと色々な話をして盛り上がった。出発から2時間半後に、ようやく大鳥ダムに到着。

大鳥ダム

さらに歩みを進めてゆく。そのうち舗装路は途絶えて雑草に覆われた道が現れる。道幅狭くうっかりすると踏み抜いてダムに転落しそうで怖かった。日没過ぎたら歩きたくない場所だ。

舗装路が終わった

7:05滝の沢出合にある船着場に到着。ちょうどダム関係者の方が2人いらっしゃり作業をしていた。挨拶をしてこれから山登りへ行く旨を伝えた。パックラフトを膨らまし大熊沢へ向けて出航!

いざ田子倉湖へ!

風はなく穏やかな湖面をのんびり漕いでゆく。すっきりした空気の中、漂う朝靄が幻想的な雰囲気だ。

8:10いよいよ大熊沢出合に到着。とりあえず最初のアプローチを無事にこなせてホッとした。出合から白いゴルジュの様相で実に美渓だ。支度を済ませて、いよいよ秘境へと入渓してゆく。水に足をつけると、まるで雪解け水のような冷たさだ。

真っ白な大熊沢の入り口
期待を胸にを進んでいく

進んでゆくと早速、腰以上は浸かりそうな瀞が現れ始めた。泳がずとも右岸や左岸を歩けるので一安心。

美しい渓相だ
Big Bearの足跡

1m程の小滝がちらほら現れ、ゴルジュが次第に立派になってゆく。そのうち深い瀞の先に4m程の滝が現れた。登るのが大変そうなので右岸より巻き。乾いているヌメがあり、安易に岩に足を置くとツルッと滑り気が抜けなかった。

ゴルジュの先に4m滝

再び沢床に着地すると歩きやすいゴルジュが続く。沢床には土砂が堆積しているのか、浅い箇所が多かった。もし土砂を全部取り除いたら、もし田子倉湖が無かったら、ここはどんな渓相だったのだろうか。相変わらず透き通った青色の水と白いゴルジュのコントラストは見事で、目を楽しませてくれた。

10:30、大熊沢一ノ沢出合到着。出合は4m程の滝を形成している。右岸よりトラバース気味に登りいよいよ一ノ沢へ入る。沢幅が狭くなり岩質は黒っぽく変化した。より一層沢水のブルーが強調され、やや陰鬱な雰囲気。ヌメりがあるので慎重に登ってゆく。

大熊沢一ノ沢出合
沢幅が狭くなった
ポットホールが綺麗な滝

1〜2mの小滝が連続する。たまに腰まで浸かるとちょっと寒い。流木の詰まった狭いゴルジュを抜けると6mトイ状滝が現れたので左岸巻き。その先に安寧のゴーロが続く。沢が開けて日差しが入るようになった。行手に7m滝が現れ右岸の支流スラブ滝より巻き。

7m滝を右岸より高巻く

数十メートル高い側壁が続き降りられず、いくつかの滝をまとめて巻いた後にトイ状滝の落ち口で沢床に復帰。

その後の2段20mの滝は美しく、Kさんと2人で歓声をあげた。

2段20mの滝!

この時点ですでに12時を回っている。地図を確認すると私たちは出合から入ったばかりのところにいる。
その後もただひたすら滝が続く。直登したり高巻いたりして進んでゆく。

14:00、CO820m付近で今回最狭のゴルジュに行き当たる。なかなか素晴らしい渓相でテンション上がるが、その後に待ち構える6m滝にテンションがすぐに下がった。笑

最狭のゴルジュ

付近に優しめの高巻きポイントが無かった為、Kさんが水流左側を直登しようとするが「結構ヌメる。」ということで滝の右にあるルンゼを挟んださらに右壁を登ることになった。Kさんがリードしてくれたが、なかなか壁が立っておりナイスリード!だった。私はロープの流れ的にルンゼを直登したが、出だしは登りやすそうに見えたものの、中盤からスタンスがなくなり結構大変だった。

Kさんは左岸の壁を登り、トラバースして上に行った。私はルンゼ直登で。

その後もゴルジュは続く。そして日没が刻一刻と迫る。ここら辺から私は余裕がなくなり、記憶が曖昧になっている。笑
とにかく滝が連続し、ツッパリムーブを要求される滝が多かった。滝でのツッパリは私にしてみたら結構怖くて、思い切って足を張ってそこがヌメって滑り落ちたらどうしようという想像ばかりが先行する。Kさんが「恐怖心はパフォーマンスを下げる!」と私に言ってくるのだが、怖いものは怖い。結局は思い切って赤茶色の滝に足を張るのだが、これはいつになったら慣れるだろうか。
ずっとKさんが先行してくれて、お助けロープを垂らしてくれたりして本当ありがたかった。同時にダメダメな自分にも落ち込む。

ツッパリムーブで5m滝を登る。落ちそうでヒヤヒヤ

振り返ると、ぼんやりと薄暗く光る南会津の山々が見える。「綺麗だな。」と思うと同時に残される時間があと僅かだということを思い知らされる。

日没手前でまた7mの滝が現れた。Kさんが左側のルンゼから登り始める。結構悪そうで苦戦していたが、無事にテラスまで登ったようだ。上からお助けロープが落ちてきて、次は私の番。
暗くなってくる中、泥ルンゼ内にスタンスもホールドもなくて2〜3回ロープにテンションをかけた。Kさんは良い支点が無かったようで肩がらみビレイをしている。私の体重でロープが食い込むたびに上から苦痛の声が聞こえる。その声を聞いても焦るし、それでもやっぱり足場がなくて安易に登れなくてさらに焦る。Kさんがゴボウで登ってと言って、思い切ってゴボウをしてようやく身体が上がった。
ついにKさんの元へ。既に日没を迎え、辺りは暗くなっていた。ヘッデンを装着して遡行を続ける。

7m滝。左側のルンゼから登る

登っても、登ってもゴルジュが終わらない。滝を登って、遡行してまたすぐに登り辛そうな滝が現れる。つい「もう嫌だ!」と叫んでしまうがなんだか申し訳ない気持ちになって「やっぱり嫌じゃない!」と言い直す。聞いていたKさんが「僕はもう嫌だよ!」と素直な本音を口にした。こういう時、お家の暖かい布団が恋しくなる。もう10月だ。日が暮れると気温は急降下する。

そして、ようやくゴルジュが終わった。

18:50、二俣手前CO1,135mの右岸に幕営。草を踏み倒したらそれなりに満足できるスペースが出来上がった。普段の山行ならもう寝ている時間。疲労が溜まっておりすぐにでも寝たかったがあまりに寒いので暖を取るために頑張って薪を集める。下流には散々流木があったくせにここら辺はすっきり片付いている。どうにか薪を調達し、焚き火成功。乾いた服に着替えた後、米を炊きお腹を満たして就寝。今日はタープは張らずに身体に巻き付けて眠った。真上で輝く星が素晴らしく美しかった。

白米は美味しい!

2日目 : 大熊沢一ノ沢〜前沢下降〜田子倉湖〜奥只見ダム

疲れているはずなのに、目が冴えてあまり眠れなかった。
3:30起床、吐く息が白く、極寒である。Kさんが焚き火を着火してくれて、食事を摂る。疲れているためかあまり喉を通らなかった。

既に濡れている沢装備に着替えたり沢靴を履くのはかなり辛いが、これは毎度こなさなければならない儀式でもある。いつもは我慢して着替えられるのだが、今回は普段の数倍寒く感じて支度を整えるのに時間がかかった。

ようやく日が昇り少しは暖かくなってきた。6:15、遡行再開。すぐ上流の二股を右へ入ってゆく。左沢は水が流れているが右沢は伏流している。滝の気配はなく、穏やかで、まるで登山道のようなゴーロを登ってゆく。

当初は毛猛山山頂を目指す予定だったが、初日に散々疲弊したために最短で周回することにした。左岸に降りている支流へ入り、標高50m程高度を上げると間も無く毛猛山から南東に伸びる尾根に乗り上げた。

藪の隙間から未丈ヶ岳

足に絡まる蔦を丁寧に外しながら前沢下降ポイントのCO1,150mのコルを目指す。尾根筋に一切の踏み跡がないことに感動した。全くの原始の山である。

コルからいよいよ前沢へ下降するが、沢筋は草付きで悪そうだったので、しばらくは支尾根から下降することにした。素晴らしい展望に別れを告げて、再び谷底へと潜ってゆく。

Kさんが残雪期にスキー滑降した尾根でもある。目前に村杉の山々
支尾根から前沢に降る。目前に浅草岳

見下ろす沢筋がゴーロになってきたので、50mロープ一本で懸垂下降。支尾根の灌木も無くなりそうだったので良いタイミングで下降できた。

しばらくゴーロが続く。CO855mの支流を合わせた後はちょこちょこと小滝が現れるようになった。クライムダウンしていたが、ついに降りられない滝が現れた。3つ分の滝をまとめて懸垂下降。合計で35mくらいか。

懸垂下降

右俣左俣の出合を過ぎるとグッと水量が増えた。ゴーロは続くがその中にも滝がポツポツ。そして、それは突然現れた。滑らかな黒々とした沢床が続く。これを見てはもうはしゃがずにはいられない。

地形がはじまった!

ナメ歩きを楽しく歩いていたら、また滝が現れたので右岸を懸垂。その下流にはプチゴルジュがありKさんが嬉しそうに跨いでいる。

10m滝
プチゴルジュにご満悦

黒かった沢床はまたまた色を変えて今度は白く輝く。続く釜釜が非常に美しい。そして美麗なゴルジュが続く。

釜っ!

沢の色はさらに変わってゆく。側壁が高くなってゆき今度は茶色っぽいゴルジュに。1箇所、10m滝を懸垂下降した。

白いゴルジュ!
茶色っぽいゴルジュ。異世界空間!

コロコロと雰囲気を変える沢が本当に面白い。これは名渓だ!

雪崩の影響か、木々が薙ぎ倒されている
振り返れば毛猛山

下流に行くほどに瀞が増え数mの泳ぎを余儀なくされる箇所も出てきた。私がロープを引いて泳ぎ、Kさんを引っ張った。Kさんが、引っ張ってくれなかったら低体温症で死んでたと言っていた。私が引っ張ったおかげで命拾いしたって!

他にもちょこちょこ泳ぎ(ここはKさんはへつりで突破した)
見事な渓相

続く6mバッテン滝は左岸より巻き下る。

バッテン!

いよいよ足元は河原っぽくなってきた。砂地に動物の足跡があり、この場所が穏やかであることを物語っているようだ。

そして14:00、田子倉湖のバックウォーターに到着した。支度を済ませていざ毛猛より脱出!

パドルにヒビが入ったらしくダクトテープで補修している。
これから奥只見ダムに帰ります!

15:30船着場到着。どうにか日没前にここまで帰ることが出来た。さて、ここから4時間の林道歩きだ。どう頑張っても下山予定は20時頃になりそうだ。

行きと同様、帰りも努めて明るく振る舞う。少しでも疲れた表情をしたら一気に暗示が解けてどっと疲れが出てくる気がする。Kさんも多分同じことを考えていて、やっぱり明るくて口数が多い。それでもラストスパートの登り坂は心身に応えて辛かった。ようやく坂を登りきり、そして19:35奥只見ダムに無事帰着。

2日連続で夜間行動

遡行図

遡行図 Waka記

お食事

こあさ焼肉店 小出ICの近く(17:00 – 23:00)
新潟岳人のモエピー氏に教えてもらったが、いつも営業時間に間に合わず行きそびれていた。今回ついに入店!安くて美味くて満腹!いや〜やっぱ肉ですよ、肉。1人あたり1,600円分、満足いくまで食べました。

嬉しそうで何より
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