2023年9月11日(月) 晴れ時々曇り
富山駅周辺前泊
2023年9月12日(火) 晴れ時々曇り
折立 – 太郎平 – 薬師沢小屋 泊
2023年9月13日(水) 晴れ
薬師沢周辺にて釣り
2023年9月14日(木) 曇り時々晴れ
薬師沢小屋(7:20) – 赤木沢出合 (8:50) – 赤木沢大滝 (11:15) – 標高点2237m (12:05) – 登山道合流(13:55) – 北ノ俣岳(14:25) – 太郎平小屋(16:05)/ 行動8h45m
2023年9月15日(金) 晴れ
太郎平小屋 – 折立
メンバー : 4人
装備 : フェルト靴 (Waka . キョンさん) 、 ラバー靴 (イデさん , カネコさん)
8mm×30mロープ1本 、 ハーネス等持っていったが使用せず。
毎年恒例の黒部源流の旅。以前アルバイトしていた薬師沢小屋に年1回は遊びに行くのが私の恒例行事である。いつも単独で遊びに行っていたが、今年は薬師沢小屋つながりの3人と一緒に赤木沢を遡行することになった。
メンバー全員赤木沢は初めてである。イデさんとカネコさんは釣り師だが、キョンさんは沢は全くの初心者だ。
今回の企画は、プロ写真家の川野恭子さん(キョンさん)に撮り方を教えてもらう代わりに、私が沢を案内するというのが始まりである。
富山のえび寿司にて前夜祭。翌日、朝イチ折立に向かい、本日の宿泊地は薬師沢小屋へ。
翌日は薬師沢にて釣り教室&沢の歩き方教室。最初はおっかなびっくりのきょんさんは飲み込みが早く、早速歩き慣れてきた。
釣りも順調で、渇水でイワナが釣れないという話を聞いていたが、釣り初めてのキョンさんも含めて全員5匹以上釣ることができた!今日のコンディションで上出来ではなかろうか?
(黒部はキャッチアンドリリースです。)
私も釣り方を忘れてしまったが、イデさん&カネコさんに改めて教えてもらって、無事にコツを掴むことができた!
翌日、いよいよ赤木沢へ出発。
薬師沢のメンバーがお見送りしてくれる中、まず黒部川の本流を遡行してゆく。途中にゴルジュがあるが、黒部川本流に詳しいイデさんの案内で左岸巻き。イデさんは赤木沢こそ遡行したことのないものの、年に合計30日は薬師沢小屋泊で黒部源流で釣りをしている、ハードな常連さんである。
4年前、薬師沢のけいこさんと赤木沢出合まで遡行した時は、高巻きはせず、竿を片手にずっと右岸を歩いたような…。イデさんに、沢床も歩けますよね?と尋ねたら、「あっちはクライマールートだから!」と返された。確かに記憶の中では、結構クライミングで怖いなーと思った。
当時、私は知らぬ間にけいこさんにクライマールート歩かされたのか。笑
やがて、赤木沢出合に到着。本流上流にはナイアガラの滝と呼ばれる小滝がかかっている。全体的に水量が少なく、今のところ苦戦箇所はなし。
しばし休憩していよいよ赤木沢へ。出合の釜付き滝は右壁をへつって突破した。
しばらく歩くと、早速美ナメ&美滝が出てきた。素晴らしい渓相に全員が完成をあげる。
お写真教室も始まりました。キョンさんに色々テクを教えてもらうが、これがなかなか難しい。
あんまり言うと、有料コンテンツになってしまうが、滝の流れをどの位置に持っていくか?というのもポイントが高いのだ。今までそんなの意識したことがなかった。
とりあえず重要なのは「情報量」「奥行き」です!後は超繊細な微調整。
この滝は右岸巻き。バチバチに明瞭な巻道がついているが、慎重に進む。
キョンさんが初日から写真教室開催してくれているので、私は歩き方やコツ?などをなるべく伝えるように努めた。
藪をかき分け、沢床に降り立ったら、再び「美」が待っていた。
大はしゃぎの4人である。
ひとしきりお写真タイムののち、遡行再開。
かなり短い間隔で、美しい滝が幾度となく現れ、もうこの時点で間違いなく秀渓である。
写真撮る手が止まりません。この滝は左岸巻き。ちょっとしたクライミングだけど、キョンさんも危なげなく登ってきた。ナイス!
その後はゴルジュっぽい空間がちょっと出てくる。
渓相は穏やかになり、しばらく二足歩行可能な美渓を楽しむ。
水量は少なく、滝も登りやすい&巻きやすいので順調に遡行できる。
そして、いよいよ核心の赤木沢大滝が現れた。
瀧上から流れる水量は少なく、霧雨みたいになっている。
ふと右壁のリッジを見上げると、木に赤テープがくくり付けられている。カネコさんやキョンさんが「ここから巻くの…?」と不安気な声音。
私が「ここから巻きたいですか?」と尋ねたら「怖い!」という返事が返ってきたので、じゃあ別の場所から巻きましょうと言った。
赤テープがいかにも「巻道ですよ。」と誘っている。確かに巻き道だが、わざわざ怖い思いをしながら登る必要もない。
沢登りは目先の情報に惑わされず、自分で地形を見て自分の歩けるルートを探すことが大切である!
てな訳で、もう少し手前から。
赤木沢大滝を巻くといよいよ水量は減り、源頭の様相になってきた。小休止ののち標高点2237mの支流に入り、赤木岳方面へ向かう。
そのうち水はなくなり、ひたすらゴーロを上がる。藪漕ぎがなくて快適だが、標高を上げるので疲れる!
上部は草原になりフェルトソールだとツルツル滑るのでアプローチシューズに履き替え。
赤木岳にはよらず、上部で適当にトラバースして登山道に無事合流!!
朝よりもガスが増えたが、それでも稜線歩きが気持ち良い。やっぱり黒部源流は良いなぁ
天気が悪いから、雷鳥いないかな?なんて話しながら歩いていると、カネコさんが「くまだ!」と叫んだ。
登山道から15m程離れた、斜面の下の方で、餌を食べるのに熱心になっているようだ。熊って怖いけれど、なんだか可愛くて、みんなで動画やら写真やら撮るのに夢中になる。
私たちが、太郎平方面へ歩いていると、熊も斜面の下を同じ方向へトラバースしている。こちらに気づいていると思うが、関心はないようだ。
植物を食べるのに夢中になっている熊が次第に斜面を上がってきて、私たちとの距離が10m、7mと狭まってきた。流石にこちらが離れた方が良いと思ったものの、イデさんが撮影を続けている。笑
する突然ハイマツから物音がした。見れば雷鳥が2羽出てきたではないか。「雷鳥!」と叫んだ。クマを見やると耳を立てて警戒したかと思えば、一目散に逃げていった。視線を戻すとハイマツからボロボロと雷鳥がいっぱい飛び出してきた。
あまりにも情報量の多い展開である。笑
慌てた熊は雷鳥を避けながらぐるっと迂回し北ノ俣方面の登山道に乗り上げた。そして再び登山道からこちらへ向かって降りてくる…。
そしてこんな展開に。
対峙する熊と雷鳥6羽。雷鳥も警戒しているようで微動だにしない。
睨み合いの末、熊は踵を返した。(登山道を上がっていったので、それはそれでヤバいが…。)
最終的に勝利したのは雷鳥であった。
熊が去って一安心したのか、雷鳥たちも動き出した。横一列になって地面をツンツン突きながら草原に繰り出していく様はまるでニワトリのようだった。
色々と驚いた展開だった。
そしてまさか雷鳥が木道のすぐ脇にあるハイマツに6羽も潜んでいるなんて思いもしなかった。荒天の時によく姿を見せてくれる雷鳥だが、晴れの日も実はすぐ近くに潜んでいるのかもしれない。
やがて今日の宿泊地、太郎平小屋が見えた。
無事に山小屋へ到着。
・・・・
楽しい薬師沢小屋でのひととき、釣り、沢登り、熊や雷鳥の発見、太郎平小屋でのひととき、てんこ盛りの数日間だった。
最近、仕事の山ばかりで、お客さまに安全に楽しんでもらうために自分は緊張感を持って登山することがほとんどだった。久々にゆるりとプライベートで登って、忘れかけていた山の楽しさを思い出した。本当に、心から楽しめた数日間だった。
自分が山をガイドする時はお客さまにもこれくらい楽しんでもらえたら良いな。と思った。
釣り師のカネコさん、イデさん、写真家のキョンさん、個性的な面々とご一緒して新たな学びや発見があった。大好きなけいこさんにも会えて、嬉しかった!
黒部源流は、私にとって心の拠り所です。
↓キョンさんこと川野恭子さんのホームページ