2023年8月13日(日) 晴れ(夕方〜夜、にわか雨)
新穂高 鍋平駐車場 (5:00) 集合 車1台デポして入山口へ
岩波橋 (6:40) – 第一ゲート (7:00) – 小倉谷出合 (10:30) – 広河原Co1465m (15:20) / 行動8h40m
2023年8月14日(月) 晴れ(夕方、にわか雨)
広河原Co1465m (5:30) – 40m大滝Co1635m (8:10) – 両門Co1740m二俣 (9:20) – 2段40m大滝Co1810m (10:50) – 30m大滝Co1895m (12:05) – 奥の二俣Co2070m (13:40) – Co2340m (15:40) / 行動10h10m
2023年8月15日(日) 曇り
Co2340m (5:00) – 笠ヶ岳 (7:35) – (7:50) 笠ヶ岳山荘 (8:25) – 笠新道分岐 (9:35) – 笠新道登山口 (13:20) – 新穂高 (14:10) / 行動9h10m
距離36km 累積標高+3,250m / -2,760m
メンバー : 3人(Waka , Nくん , コミネム)
装備 : 8mm45mロープ、30mフローティングロープ、カム、ハーケン、ラバー靴(Waka , Nくん)、フェルト靴(コミネム)

コミネムから少し長めの沢登り行きませんかー?とグループLINEに連絡があった。いつもは、あまり一般的でない登山を嗜んでいるコミネムだったが、今回はのんびりめの沢登りへ行きたいとのこと。それなら私でも行けそうだ。
他に2名参加予定だったが、直前に怪我してしまい不参加。私の山仲間であるNくんを誘って、コミネム、Nくん、私の3人でメンバーが決まった。
最初はコミネムが「双六谷が気になる」と言っていたのに、私は何故だか「双六谷」を「小倉谷」だと勘違いしていた。双六谷のつもりで「では小倉谷行きましょう!」と発言してしまい、そのまま「小倉谷」へ行くことになってしまった。滝がないのは双六谷で、小倉谷は大滝がある渓である。私大丈夫かなぁ〜?と出発間際に少し心配になったが、心強いパーティーだし、私も覚悟を決める。
台風接近の中であれこれ計画を考えていたが、最終の天気予報でもヤマテンでは「8/15は暴風雨なので8/14午前中までには森林限界まで下りて14日中に下山するように」と厳しめの予報が発表された。小倉谷は増水したらアウトな感じだし、好天が約束された日に行くのがおすすめとされている。まぁ荒れる前に沢は抜けられるだろう、ということで沢に突っ込んでみることに決定。
1日目
早朝、新穂高の無料駐車場に向かうと朝5:00前なのに既に満車。さすがお盆シーズンだ。鍋平駐車場に集合地を変更し、5:00に全員集合。車を1台デポして入山口の双六ダムまで車を走らせる。
他の山行記録を読んで把握していた「第1ゲート前」まで車で入れず右往左往。たまたま周辺にいた釣り師に周辺に駐車場が無いか尋ねると、「この辺りにはないから空いてるスペースに停めるしかないよ。」と言われた。
手前の岩波橋周辺の広い路肩帯に車を停めてひと段落。
支度を済ませて6:40登山開始。まずはながーい林道歩き14.5kmをひたすら歩く。
10:30、ようやく小倉谷出合が近づいてきた。数十m手前で河原に降り立ち、沢支度を整えて出発する。

水量がかなり少ないようで渡渉は楽々。それでも胸以上の沢水にどっぷり浸かったので寒いっ!エメラルドグリーンの沢水は非常に透き通っており、沢床まではっきりと見える。

小倉谷はゴーロから始まるが、次第に良き渓相に。真っ白な花崗岩が非常に美しい。

早速現れた、綺麗な3条の小滝を携えた10mトイ状滝は左岸より巻き。
私はいつものごとく滑落防止でチェーンスパイクをつけたが、踏み跡が明瞭に続いており滝の巻きとしては歩きやすかった。(以降はチェーンスパイクは使用せずに済んだ。)

続く釜付きの1m小滝は水流突破を試みるも水流が強くて登れず。右端のチョックストーンの突破を試みるが難しい。
Nくんも泳いできたが、跳ね返され「寒いから岸に上がります!」と早々に退散…。遠巻きに眺めていたコミネムがついに来てくれて、チョックストーン突破に協力してくれる。カムエイドでなんとか突破!その後に私もお助けロープで上がろうとしたがお助けすらも難しくて、色々動きを変えてみたらギリギリ突破できた…。
コミネムにボルダーで例えるとどれくらい難しい?と尋ねたら「フリーで抜けられなかったから4段かな!」と返ってきた。笑 恐るべし小倉谷である!
かなり奮闘したけど、めっちゃ簡単に右岸から巻ける滝である。コミネム、わざわざ私に付き合ってくれてありがとう。笑

しばらく難所はなく、快適に遡行してゆく。さすが北アルプスの沢でスケールが大きい。
そのうちゴルジュ帯に突入するが、あまり威圧感がなく開放的だ。そして、とにかく美しい!!
透き通った水と白い花崗岩の組み合わせがただただ素晴らしい。
4m滝は右岸より巻き。沢床へはまだ生きていそうな残置スリングを発見したので利用して懸垂下降した。
その後の廊下奥の5mCS滝は左端っこをショルダーで突破。15m滝はサクッと左岸巻き。
大きな滝の落ち口を毎回100%覗き込みに行くN君…。今回もセルフビレイを付けずにま〜たギリギリまで近づいて、危ないなぁと思っていたら、コミネムも一緒になって覗き込んでいた。笑 二人は同類のようだ。
その後、渓相は落ち着き、深い釜での泳ぎを交えつつも順調。初日の幕営適地である広河原に至る。
今回は台風が心配だったため、大ゴルジュ帯の入り口付近まで足をすすめる。ゴルジュ手前の右岸、吊橋のワイヤーが残っている場所を初日の幕営地とした。
にわか雨が降ったものの、集めた薪は乾いておりよく燃えてくれた。Nくんの振る舞ってくれたチャプチェに舌鼓を打ち就寝。寝ていると、雨の音が気になって何度か目が覚めた。幕営地が沢床にかなり近く、増水が心配だった私は何回か沢の様子を確認する。過去、奥利根で就寝中に増水に遭い緊急避難したのがトラウマになっている。男2人は全く気にしていないようでグーグー寝ていた。笑 幸いにも水が濁ることはなく無事に一夜を過ごすことが出来た。
2日目
朝3:30起床、のんびり支度を済ませて5:30出発。
早速大ゴルジュのお出ましだ。朝一番で15mの淵を抱える2m小滝が現れる。コミネムがロープを引いて左壁から突破。続く3m小滝は右壁から。

大ゴルジュ帯、なんかすごい名前だが今のところ順調である。右岸にある30m大滝は実に見事で、つい見入ってしまった。Nくんもコミネムも大きな滝を見るとついついオブザベしてしまうようだ。笑

その立派な滝のすぐ先に6m滝。側壁が狭まり、なんか悪そうな雰囲気。左壁に残置スリングまでくっついている。
Nくんがロープを引いて向かう。見守っていたら意外とあっさり抜けていった。私もFIXロープで追いかけるが想像より容易に抜けることができた。
何故スリングがあるのか謎だったが、ここも増水すると水線脇が登れず条件が違ってくるということだろう。

その後の8m滝をペタペタ歩いて大ゴルジュ帯を無事に突破。若干ゴルジュの気配は残るもののゴーロが目立つようになる。

10m滝を登ると、渓相が一変…。美しいナメが広がっていた!
ナメ&ナメ滝を楽しく登っていると、突如として立ちはだかるのは40m大滝。真っ平なナメから急にぶっ立つ大滝、なんという景観…。こんな滝、今まで見たことがない気がする。

しばし堪能して右岸から巻きを試みる。Nくんは巻きの最短ルートと思われる右岸のヌメったスラブ壁を直登していたが、なんか怖そうだったので、私はもう少し戻って笹藪から高度を稼ぐ。コミネムも私についてきてくれた。途中まで笹の中に踏み跡があったものの、トラバースを始めた時点で消失。数mの藪漕ぎののち、スラブにいるN君と合流して無事に沢へ復帰。
Nくんに「スラブどうだった?」と言ったら「うん、楽しかったよ♪」と返ってきたので、やはりついていかなくて良かったなぁと思った。笑

しばらく進むと、まさに「両門の滝」と呼ぶにふさわしい、それぞれ立派な滝を携えた二俣分岐に至る。右俣の滝は厳しそうなので過去の記録を参考にして左俣の滝を登り尾根越えで高巻き右俣に着地する作戦にする。

左俣の2段30mの滝はコミネムがロープ出そうかと言っている。
下段はスラブ状で傾斜が寝ていたので、ロープ無くてもいけるんじゃない?と私が答えた。フリクション勝負でいけるかと思いきや予想以上にヌメる!一歩が緊張して、途中でセミになりかけた私だったがNくんがサッと先に登って上からお助けロープを寄越してくれた!なんか最近、N君が私の習性をすごく理解してくれている…。笑

というか途中でセミになり情けない。私もまだまだ未熟である…。沢登りで自分が登れるかどうかしっかり判断できること。登れなくなったとしても、クライムダウンできる余裕を持つことが大事だとあれほど言われていたのに…。
無事に上のテラスまで登りNくんに「コミネムさんもロープいるかな?」と尋ねたら「大丈夫でしょ!」と言ってさっさとロープを片付けようとするNくん。
すると下にいるコミネムがNくんに向かって「ロープ欲しい!」と声をかけた。Nくんが「えぇ〜!?」とびっくりしていた。
もっとヤバい数々の修羅場を経験しているであろうコミネムでもヌメるの怖かったりするんだ、とちょっと意外な出来事だった。笑

上段はN君リードで。コミネムがカム2つで岩壁に支点をとりビレイ。ここは落ち口付近がヌメって怖かった。

数m先にあるナメ滝の途中あたりから尾根を乗越す。良い感じに高巻きして右俣の滝の落ち口に着地することができた。
しばし河原が続き「平和になったね〜。」って話していた矢先、デデンと2段40m大滝が現れる。またもや平穏からの突然のギャップに驚かされる。
この滝は私としては完全にロープ案件ですわ。笑

とりあえず皆んなで左壁のテラスまで上がる。ハーケンを打ちビレイステーションを作り登攀開始。Nくんが「1段目は僕登ります、コミネムさんは2段目お願いします!」と言って登っていった。水線左を無事突破!コミネムが「上段登れそう?」と尋ねたらNくん腕をマル!の形でジェスチャーをする。

てっきりピッチを切るかと思ったら、そのままジワジワとロープが伸びていく。コミネムと「Nくんなんか上段も登ってない?」と話す。さっきコミネムに任せる!と言っていたのに間近で見上げたら我慢できず登りたくなったのだろうか。
そのうち、ピーっと笛の音が聞こえた。無事に落ち口まで登ったようだ。
続いて私がFIXロープで登る。滝の左壁にロープが伸びていたが、私としてはなかなか緊張した!最後が悪くて、スタンスが無い!自分の肩くらいの高さにある木の幹に気合で身体を持ち上げて、トドのように腹ばいになりながらも必死に登った…。
続いてコミネムが登ってくる。最後どうやって登るんだろ?と上で観察していたら、腹ばいにもならず、よっこいしょって感じで普通に登ってきた。え、どうやったの?!スタンス無かったのに!参考にしたかったが結局コミネムーブは解明できなかった…。
無事に全員落ち口へ。N君ナイスリード!コミネムがN君に「良いラインだったね!」と言った。大滝登攀愛好家のコミネムの血も騒いだようだ。
しばし安寧のゴーロが続くが、またしても30m大滝出現!昨日は割と快適遡行だったのに、今日は一転、ひたすら大物が続く。
直登は大変そうなので右岸のガレより巻き…。浮石に厳重注意しながら登る。落ち口へ飛び出すと、一枚岩の美しい空間が広がっていた。見晴らしが良くて気持ちが良い。

この辺りから、より渓は開けてきて、登ってきたなーと感じさせられる。いよいよ目前に笠ヶ岳が見えてくると、それはもう感動ものだ。スケールの大きな沢ってやっぱり良い!

ヌメりが目立ってきたものの、快適に遡行してゆく。
すると15m滝が出現。パッと見た感じ、右壁なら私でも登れるかも。
コミネムが「ロープ出そう!」と提案してきた。この滝は割と優しめに見えるが、まぁロープがあることに越したことはないだろう。
N君は水線を登ってみたいらしく、コミネムに直登で登ってほしいと伝えていた。
いざ、登攀開始!
コミネムがNくんの希望通り水線に向かうも、数m登ったのち、何か思ったのかクルッと方向を変えて右壁に行ってしまった。笑
N君が「えー!」と不満そうだ。笑
コミネムはスイスイと登り、あっという間に落ち口へ。セルフビレイを長めにとり、落ち口の上から私たちを見下ろして「いいよー!」と合図が聞こえた。

N君は水線突破に未練があるようだったので「じゃあ私が右壁の中間支点回収しながら登るからNくん水線をビレイで登れば?」と提案して決定。
右壁はよく乾いておりホールド豊富で快適。屈曲点にあるカムを1つ回収して落ち口へ向けてトラバースする。僅か3m程の距離だが、その間にさらにカムが2つも決まっていることに驚いた。後続用の振られ止めが主な目的だと思うが、コミネムの慎重な性格が伺えた。
お陰さまで、かなり高い安全を確保しながら無事に落ち口へ。
ふと以前山仲間のHSさんが言っていたことを思い出す。
「沢屋は高さのある滝でも簡単ならロープを出さずに登っちゃうけど、クライマーはどんなに簡単でも高さがあればロープ出す人が多いよ。」
当時はへーと聞いていただけの話だけど、改めて考えさせられた。
私自身は沢屋的思考だと思う。ロープを出すと時間がかかるから、ロープを出さずに安定して登れるのが良い!みたいな。周りの仲間でもそのタイプが多い気がする。でも人間いつ事故って死ぬかわからない。この滝だって足滑らしたら簡単に死ねる。
卓越した登攀力があり、経験の豊富なコミネムなら安定してどこでも登れると思うのに、そのコミネム自身が誰よりも慎重である事実にハッとさせられる。(単に私が危なっかしいので心配しているだけの可能性もゼロではない。笑)
はるかに経験の浅い私が特に深いことも考えず「この滝は簡単だから〜ロープ無しでイケるよ☆」って言うと、なんか山舐めオバサンな感じではなかろうか。
ロープで安全を確保しつつも、スピーディーに遡行できるのが理想的ですよね。まぁとりあえず今の私は色々不十分すぎるので、色々と頑張らないとねって感じです…。
さて、Nくんはお楽しみの水線突破、、、と思いきや、あら、ロープが右壁に引っかかって取れない!私とNくんでロープをヒュンヒュン外そうと試みるも、効果なし。
結局Nくんも右壁を登ることに。ごめんね…(汗)

滝を交えながらも、ぐんぐん高度を上げてゆく。
「その空の下で。。。」のヒロタさんの記録を参考にCo2230m右岸の幕営地を探していたがそれらしきものが見当たらず、いつの間にか登りすぎてしまった。
Co2340m右岸にギリギリ3人寝れそうな台地があったのでここで幕営することにした。これ以上遡行すればいよいよ幕営地はなさそうだった。岩をどかしたり草を刈ったりしたらなかなか良い感じに仕上がった。
見晴らしがよく、ロケーション最高。少しにわか雨があったものの良い天気だ。本当に明日、台風が直撃するのか信じられなかった。
翌朝は3:00起き5:00発と決めて、食事の後は早々に就寝。標高が高いもののあまり寒さを感じず快適に眠ることができた。
3日目
支度を済ませて5:00出発。見上げれば雲量5くらいで予想よりも天気が良い。荒天になるにしてもまだ余裕がありそうだ。ちょこちょこ滝が出てくるものの難しくはなく、各々の登れるラインで越えてゆく。沢床がヌメるので慎重に。

やがて水線が途切れゴーロ帯になる。

笠ヶ岳が近づくにつれ傾斜が増してゆき、浮石が増えていく。絶対に下に落とさないよう細心の注意を払う。
山頂直下はど急登だったので、ハイマツ帯に逃げ高度を稼ぐ。ハイマツの中が歩きやすくてホッとした…。
そしていよいよ登山道へ合流。10m程歩いて笠ヶ岳登頂!
記念撮影ののち、笠ヶ岳山荘へ。意外な人物とお会いして、会話を楽しんだのちいよいよ下山。

午前中よりも雲量が増えたものの、稜線の続く先に見える黒部五郎岳や薬師岳を楽しみながら歩く。振り返れば、険しい笠ヶ岳が見える。

笠新道をくだりはじめて、休憩していたらふと視界に茶色い小動物がうつった。「オコジョだ!」思わず声を上げるが、オコジョさんは素早くてすぐに隠れてしまった。オコジョを身損ねたN君が「オコジョ待ちするから先にいってていいよ。」と言うので、コミネムと先に歩き始める。どうやらN君の世界一好きな動物はオコジョらしい。
しばらく歩いていたらN君が追いついてきた。オコジョに会えたか尋ねると、出てきてくれなかったらしい。なんだかションボリしていて、ちょっと可哀想だった…。

ひたすらながーい笠新道をくだり、13:20笠新道着。

14:10新穂高着。さーて、実は私たちのゴールは新穂高ではない。標高差150m登り返した、鍋平園地駐車場である…。話し合いの結果、じゃんけんで勝利したものが車を回収しに行く権利を得てみんなの役に立つことが出来る、ということでまとまった。
勝負の結果、栄誉を手にしたのはコミネムであった。流石である。最後までとっても頼りになる!
てな訳で、名残惜しそうに何度も振り返りながら山道へ入ってゆくコミネムにバイバイと手を振って、Nくんと私はベンチに座り一息つく。

数十分後に車でお迎えに来たコミネムと再開!コミネムが「素晴らしい景色だったよ、歩かないの勿体なかったかも。」と新穂高〜鍋平の登山道の素敵な感想を聞かせてくれた。
その後、入山口に置いた車を回収して、無事に山行が終了した。
結局、最終日も夕方ににわか雨に降られたのみで概ね良い天候の中歩けてよかった。台風直撃予報の中での出発だったが、結果的に当初の予報よりも進路が変わったようだ。行って良かった!楽しいお盆休みでした。Nくん、コミネム、ありがとう。またよろしくね!
ヤマレコ
コミネムがヤマレコにも記録上げてます!↓