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沢登り台高・大峰

堂倉谷 本谷 台高山脈 大杉谷の源流部へ

沢登り

2021年7月29日(木)
6:55 大台ヶ原ビジターセンター – 7:50 日出ヶ岳 8:10 – 9:55 堂倉小屋 – 10:40 堂倉滝 11:00 – 14:00 アザミ谷出合(合計時間 : 7h05m)

2021年7月30日(金)
7:25 アザミ谷出合 – 10:05 橋 – 15:30 堂倉山北西コル – 17:10 大台ヶ原ビジターセンター (合計時間 : 9h45m)

メンバー : 3人(Waka:フェルト、HSさん:フェルト、K山さん:ラバー)

装備:30mロープ

天気 : 遡行中は晴れ,1日目は午後より夕立。

気象庁 過去の天気図

 お誘いを受けて台高山脈の堂倉谷を遡行することとなった。堂倉谷は、日本三大峡谷の1つである大杉谷の源流部に位置する沢だ。大台ヶ原山は日本百名山であり、「秘境」とも呼ばれる場所。いつか行ってみたいとずっと思っていた。初めての紀伊半島は素晴らしかった。

山行記録

 前日、丸1日かけて紀伊半島へ移動したのち近場で仮眠。翌朝ひたすら山道を走り、ようやく大台ヶ原ビジターセンターへ。準備を済ませて6:55出発。天気予報では雨予報が出ている。最悪エスケープだが、出来れば降られないでくれと祈った。

 登山道を辿り、日出ヶ岳を越えて堂倉滝を目指す。コースタイム3時間20分のハイキング。朝一番の山歩きは涼しくて心地良い。あちこちで鳥のさえずりが聞こえる。

HSさんが自前の双眼鏡で小鳥を観察している。鳥に大変詳しいようで、鳴き声を聞いてミソサザイだよ。カケスだよ。と私に教えてくれる。そのうちに見てみる?と双眼鏡を貸してくれた。細かく動き回る鳥たちをなかなか追えなかったが、1羽のヒガラを捉えた。思わず「かわいい〜!」と声が出る。肉眼で眺める小鳥は圧倒的な可愛さだった。藪の中でウグイスの鳴き声が聞こえていたが、残念ながらその姿を観察することは出来なかった。

 7:50日出ヶ岳到着。日本百名山の大台ヶ原。その最高峰に位置するのが日出ヶ岳。

大台ヶ原山の最高峰へ
早速記念撮影

ここら一帯は年間降水量が4,000mmと、日本でも有数の多雨地帯だ。天候が急変しやすいようで、山頂には雷の待避所が設置してあった。待避所の上部は展望台になっている。登って周りの景色を眺めた。初めての山域なので山の名前は分からない。西に見える大峰山脈は主要な稜線が一続きになっておりドカンと目立つ。北に見える台高山脈は細々とあちこちに枝分かれする複雑な稜線。最も目を引いたのは大峰の大普賢岳(だいふげんだけ)。山腹の剥き出した岩盤とギザギザの稜線がよく目立ちカッコ良い。いつかあちらを縦走してみたい。

奥に大普賢岳が見える
西側、大峰山脈
北側、台高山脈

 山頂から北東へ向けてひたすら尾根を下る。植物に詳しいK山さんが、いろいろと教えてくれた。高山植物のみならず、ひっそりと目立たない花の名前まで知っているのだからすごい。

ヒカゲノカズラ
大きなスギの木
アリドオシラン

 10:40堂倉滝へ。いよいよ入渓だ。しばし滝を眺めたのち、堂倉滝の高巻きにかかる。堂倉吊橋の前から堂倉滝右岸に取り付けられた架線場跡を辿る。事前情報にあった「残置ロープ」は見つからず。CO880m付近から谷に向かって落ちているルンゼを下り、ついに堂倉谷へと立った。下部で折れた倒木に巻かれたトラロープを発見した。ルンゼ上から落ちてきたのだろうか。

沢床に立つとナメがお出迎え。オタマジャクシからカエルに変態したばかりの小ガエルが岩の窪みにワラワラと集合していた。カエルは数千個の卵を産む。孵化するのは95%程で、カエルになるのはその内の20%程。卵を産める親ガエルになるのは全体の1〜2%程らしい。(参考: カエルの図鑑)
カエルの生存競争が厳しいことはなんとなく知っていた。こんなにも沢山の小ガエルが生き延びているのは、堂倉谷はカエルにとって住みやすい環境なのだろう。天敵が少ないのか。この後も大量の小ガエルや、大人ガエルを見かけた。堂倉谷はまさにカエルランドだ。

ナメがお出迎え
小ガエル
カエルの腹跡?!

少し進むと、目前に堂倉谷最大の30m滝が見えた。手前には7mの滝を抱えている。

早速腰まで水に浸かり、7m滝に取り付いた。30m滝は右岸ルンゼを利用して小さく巻き。うまい具合に落ち口へ出ることが出来た。HSさん、K山さんに「ナイスルーファイ!」と褒められて嬉しくなった。

目前に早速滝
堂倉谷最大の30m滝
30m滝の落ち口

 続々と滝が現れるようになる。ここら一帯は中七ツ釜と呼ばれているようだ。巨大な釜を抱えた滝が大半で突破も楽にはいかせてくれない。泳いだりへつったり、好きな場所から越えてゆく。

泳ぐ
へつる
釜風呂でご満悦のHSさん

堂倉谷のスケールの大きさには胸がワクワクさせられる。大きな谷の中にいる自分は、なんとちっぽけな存在なんだろう。私の沢経験はまだ数える程しかないが、自分の渓相の好みが見えてきた気がする。でっかい沢を歩くのがとても楽しい。

大きめの岩が多い
釜を泳ぎ滝を登る
白い岩壁

やがて巨岩帯に突入。背の丈以上の巨岩がゴロゴロ。一際目を引く4m程の巨岩。HSさんが早速岩に張り付いていた。上まで行ったら3級くらいかな〜なんて呟いてる。その声音がとても楽しそうだった。

アザミ谷出合手前で、再び大きな滝、10m。K山さんとHSさんは右側から直登。私は釜を泳いで左側を直登。HSさん、上部でホールドにカエルが鎮座していたせいで、突破に多少難儀した模様。

素晴らしい渓相に、ついつい休憩時間も長くなってしまう。じっくりと堂倉谷の自然を満喫する。

ボルダー始めるHSさん
大きくて良い岩がゴロゴロ
10m滝

のんびり遡行して時刻は14:00。アザミ谷出合に到着。小雨が降ったり止んだり不安定な天気だったので出合の左岸で幕営することとした。

HSさんと私で釣りを試みたが、HSさんは小さなヤマメ1匹、私はゼロだった。
私がちょっと長引いて釣りをしている間に、K山さんとHSさんがタープを張ったり薪を集めてくれていた。しかし、薪の量がちょっと少なくないか?2人は満足の様子だが・・・。てなことで、追加で薪を集めに行く。

出合右岸にある岩の下によく燃えそうな薪を発見したので、拾いに行こうとして悲鳴を上げた。岩には巨大な蜂の巣がくっついていた。出合に到着したときからブンブンと蜂が飛んでいたが、これが原因か。K山さんは蜂の巣のことなんてつゆ知らずすぐ近くでグースカ昼寝している。慌てて教えたら、K山さん、びっくりして飛び起きた。(笑)

薪も、ようやく納得できる量が集まった。HSさんやK山さんに、どれだけ気合入ってるの。とか、行商ですか?とか突っ込まれた。

2人の集めた薪。あと5倍は必要じゃないか?

ようやく満足。
昼寝をするK山さんの頭上の岩に・・・。

HSさんが再び釣りに出かけている間にK山さんと2人で焚き火着火に取り掛かる。献身的なフーフーのおかげで、どうにか着火に成功したが、その後雨が本降りになり悲しいことに鎮火してしまった。

タープの少し横、岩壁が迫り出しており雨を凌げる場所があったので、そこでリトライ。私はなんか疲れてしまったので後はHSさんにお任せ。笑
さすがHSさん、無事に着火し炎はごうごうと燃え、暖かい夜を過ごすことが出来た。

夜ご飯は、HSさんお手製のスパイスカレー。焚き火を使って茹でたバスマティライスと一緒にいただく。美味しい。めちゃくちゃ美味しい。大大大満足な夜だった。

釣りをするHSさん
調理中のHSさん
ズッキーニとうずらの卵のスパイスカレー

翌朝、7:25アザミ谷出合出発。昨晩は増水で濁っていた水も、朝にはひいて、透き通った水に戻っていた。最初のトイ状2段8m滝を左岸より高巻くと、その後には美しい釜が連続していた。

トイ状2段8m滝
奥七ツ釜
ハート形の釜

 上流へ進むと、岩盤の質が変わった。白い渓から黒い渓へ。相変わらず澄んだ深いエメラルドグリーンの水が美しい。

水中の岩盤には白い線がいくつも入っている。単なるひっかき傷ではなくて、岩の隙間に熱水が入り込んで出来たとか。白い部分とその他の部分では鉱物の成分も異なるらしい。
ちなみに岩盤にオタマジャクシが張り付いているのは口にある吸盤で流されないように吸い付いているからだそうだ。吸盤があるのも渓流に住むカエルの特徴だ。

おたまじゃくしと堂倉の岩盤
大きな釜をかかえる
渓相が変わった

そのうちに堰堤に突き当たる。右岸樹林帯より越えると、その上には穏やかな河原が広がっていた。ついついのんびりと大休止。相変わらず、あちらこちらに小ガエルが歩き回っている。
歩みを進めてもしばし穏やかな渓相が続く。あまりにも気持ち良いのでこの調子で稜線まで詰め上がりたくなってしまう。

エメラルドグリーンの水
堰堤
堰堤上部は河原

大きな釜を抱えた3m滝を越えると、林道が交差する地点へと到達。
そのうちに空からガスが降りてきて、辺りは白いもやに包まれる。ゴーロ帯が続き、滝の気配が無くなる。しばし安寧の時。

3m滝も各々突破
林道交差点
ゴーロ帯

上流へ向かうほどに、大人ガエルがよく見られるようになった。カエルを頭に乗っけて嬉しそうなHSさん。先に第2の堰堤が立ちはだかる。クライマーならクラック沿いを登れそうだが、巻き。堰堤手前の人工物の坂道を右岸へ向けて登った。堰堤をよーく見ると、カエルが映り込んでいる。下の写真、お分かりいただけただろうか。

相棒を頭に乗せて
壁に2匹のカエルが張り付いていた。
カエルが2匹いる。

上流は生き物の気配が増える。カエルもいるが蛇もたくさんだ。HSさんとK山さんに教えてもらったのは「コウガイヒル」。山ビルと違って吸血しないヒルらしい。

赤ブチのカエルが多い
コウガイヒルは血を吸わない。なら触れる。
ヒバカリの赤ちゃん

第2の堰堤を越えるとようやく源流らしい雰囲気が出てきた。黒々としたミニゴルジュにかかる滝を2つ越えると、しばし平凡な様相。そして、いよいよ連瀑帯に入る。ここに至るまで、もう充分滝を登った気がする。後はのんびり稜線に詰め上がりたいところだが、そうはさせてくれない。

狭い地形
再び岩盤の雰囲気が変わった
滝を直上

いくつかは水線を直上していたが、そのうち目前に12m滝が現れる。右壁を登れそうだが、フリーで登るには高さがあり少し怖い。左岸から楽に巻けそうだったので、今回は巻いて突破。しばらく滝が現れるが快適に登る。そして再びでかい滝。2段25m滝。1段目右側をHSさんがリードで突破。2段目は右岸ルンゼより巻き気味に突破した。ルンゼ上部がヌメり気味でちょっと緊張。

12m滝
水線を登れる滝もある。
2段25m滝。右側をロープを出して登る。

2段25m滝の先には18m滝。私が先行していたが、パッと見登れそうだったので、そのまま登る。上部まで行って意外と悪いことに気づくが、降りるのもまた神経つかうのでそのまま水線左側をトラバース気味に突破。K山さんは水線より突破試みたが上部で苦戦。HSさんが左側壁から登って先回りしてお助けロープを用意してくれた。

登ることが出来たが、冷や冷やした。HSさんから「登れるか登れないか分からない時はロープを出したほうが良いよ。」と言われた。様子見のつもりが結局どんどん登って、怖いという気持ちになってしまった。自分の軽率な行動に反省。

その後は滝を水線突破でこなし、いよいよ源頭が近く。

18m滝
上部にはナメが広がる
後少しで源頭

堂倉谷を忠実に詰めると正木ヶ原に詰めあげるが、その手前で本流から外れて堂倉山の北西コルを目指す。終始藪漕ぎはなく、快適な詰めだった。

稜線に詰め上がった。

15:30、登山道合流。17:10大台ヶ原ビジターセンター無事下山。

堂倉谷は後半に進むにつれ、怒涛の滝ラッシュ。1泊2日で密度の濃い沢登りだった。

場所により目まぐるしく変わる渓相、地質も興味深い物があった。HSさんやK山さんは地質にも詳しくて、これはチャートだとか砂岩だとか教えてくれた。

今回遡行したライン(紫線)

今回遡行した場所を地質図で調べて見ると、様々な地質の部分を通過している。

上部の黒々としたゴルジュとか、南アルプス南部の沢と似ているので気になった。HSさんに尋ねてみると、同じように中央構造線が通っているからじゃない?と言っていた。地質図で調べると、確かに、両者とも同じ白亜紀の地質だった。
こんなに遠く離れた場所なのに、地質という点では繋がっている。それぞれの沢を単体で見るのではなく、日本列島全体で俯瞰して見ることの楽しさを感じた。

出だしの白くてスケールのでかい渓相も、なんとなく南会津の袖沢御神楽沢と似ていると感じた。調べてみたら、御神楽沢も堂倉沢と同じ、約1億年前のジュラ紀の地層だった。

地層って、今まではよく分からなかったのだが、今回興味をもつきっかけになった。HSさん、K山さんに感謝。新たな知見を得ることのできた2日間だった。

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