2021年9月25日(土)
5:15 会津朝日岳赤倉沢登山口 – 6:45 前沢林道 – 9:40 楢戸沢入渓 – 12:30 CO640m二俣 – 14:45 CO830m二俣
2021年9月26日(日)
5:25 CO830m二俣 – 6:20 大高巻き 7:20 – 11:20 CO1,315m二俣 -会津朝日岳北壁スラブ – 13:25 稜線 – 13:40 会津朝日岳 – 16:45 赤倉沢登山口
メンバー : 2人(Waka、Kさん)2人ともラバー
装備 : 50mロープ , 40mフローティングロープ , カム・ナッツ・ハーケン類
※支点はカムが有効だった(紫〜赤を使用)
天気 : 1日目 曇り時々晴れ , 2日目 霧のち雨
※国土地理院地図、実際の地形と誤差があり。(特に楢戸沢上流部)
1日目 : 前沢から楢戸沢
初日、赤倉沢登山口に車を駐車して、約6kmの道路を歩いて引き返す。
前沢林道入口は両側を畑に囲まれている。事前にザックを道の隅にデポしておいたのだが、私たちが戻ると畑の持ち主と思われるおばちゃんが林道脇で作業をしていた。ザックを私有地内に置いてしまったかもしれない。すみませんと謝ったら、いえいえ、とペコリと返してくれた。そして「お気をつけて。」と声をかけてくれた。
とても丁寧で優しい雰囲気の方だった。ちょっと申し訳なくなった。もう少し林道に入ったところにデポしておけば良かった。
前沢林道を辿っていると、途中から道は藪の中に消えた。
前沢に降り沢を進む。藪っぽい沢筋に難所は無い。CO535m付近で左岸より合流している枝沢に入る。あとは三角点827.8m南のコルを目指して詰めてゆく。両岸ブナの森に囲まれており緑が眩しい。見上げる空には雲がかかっている。ちょろっと小滝が現れる。
コルが近くなると、沢筋は不明瞭になった。藪は薄いので、適当に登ってコルに乗り上げる。時刻は8:45。出発から約3時間半ほど。
今日は行程も長い。休憩もそこそこに西へ向けて楢戸沢への下降を始める。
沢は意外と急峻な場所があり、いくつか小滝をクライムダウンした。そのうち藪の中に現れた10m程の堰堤を3つほど右手より巻き降ると、いよいよ目下に楢戸沢の流れが見えた。
出合が滝だったので、右手より巻いて着地。枝沢を振り向くと、立派な滝だった。上部だけトイ状になっており面白い形だ。地形図を確認すると沢床へ下る前に林道があるようだが、終始藪ばかりで見逃してしまった。
目指すはCO830mの幕場。ここから約7km先だ。明日も長丁場になる見込みなので、今日は頑張って進まなくてはいけない。
1つ深呼吸をして、出発。最初は穏やかな河原だったが10分ほど歩くと岩盤が発達してゴルジュの様相に。南会津らしい白く輝く花崗岩。両岸にはブナの森が広がっている。うーん、素晴らしい渓相だ。
時折腰まで水に浸かったり、1度泳いだり・・・、水は冷たくてちょっと寒い。
11:50にCO595m付近の二俣に到着。そのうちにゴーロ基調になってゆく。いつもは退屈なゴーロだが行程の長い今回はスピードアップのチャンス。そのうちにグッと両岸が高くなり物々しい雰囲気に。目前に狭いゴルジュが現れた。ゴルジュ内にはいくつか滝がかかっているらしいので左岸から高巻く。高巻きは快適で、ブナの幹にはナタ目まで確認できた。
沢床に着地すると、沢はコンパクトな感じになり南会津の日帰り沢のような雰囲気に。1〜2m程の小滝が短い区間にいくつも現れる。美しく癒しの渓相。上流に険しい渓が待ち構えているなんて、まるで信じられない。
そのうちにいよいよ両岸がスラブ状になってきた。
一箇所、5m程の滝でロープを出した。Kさんが右側をトラバース気味に突破、ワンポイント岩がやや張り出している部分が怖くてヒヤヒヤしたようだ。続いて私にロープをよこしてくれた。トラバースが悪いので私は滝の水線右側をアッセンダーで直上したが、スタンスが無くて奮闘した。アッセンダー使わないでKさんにグイグイ引き揚げて貰えば良かった。笑
ポツポツと、4m超の滝も現れたが、登ったり巻いたりしながら突破。
14:45、CO830m二俣に到着。良いペースで無事目的の場所まで到着した。右岸の高台に幕営。本日の歩行距離17km。長く歩いてかなり疲れた。魂が抜けかけたが、なんとか持ち堪えた。Kさんも疲れたようだが私よりは全然ピンピンしている。流石だ。尾根歩きなら私の方が得意だが、沢歩きはKさんの方が強い。沢のように神経使う場所は普通に歩くより何倍も疲れてしまう。とりあえず1日目が問題無く終了してホッとした。
タープの下で細々と焚き火。翌朝目覚ましを3:15にかけて就寝。
2日目 : 北壁スラブから会津朝日岳へ
翌朝、3:15起床。夜は2〜3度目覚めたが、おおむね快眠。シュラフ+シュラフカバーは秋の沢でも暖かくてやっぱり最強だ。Kさんはすでに起きて焚き火の着火に取り組んでいた。
朝食を食べ、のんびりと身支度を整えていると、いつの間にか辺りがガスに包まれていた。この霧の中遡行するのはちょっと大変そう。
早めに起きたので4:30頃には準備が整った。明るくなるまで焚き火で暖まりながら待機。
今日は核心の2日目。私は緊張感でいっぱいだ。時間のあるうちに深呼吸をして精神統一。
5:30、辺りが明るくなってきたころに出発。
朝一の水は非常に冷たい。なるべく浸からないように進んでゆく。身体はまだ覚醒しておらず動きが鈍いので、より気持ちを引き締めて歩く。
滝はいつ現れるかと恐れながらも、しばらくは快適に歩けた。両岸のスラブがみるみる高くなってゆく。いよいよ楢戸沢の最深部に入り込んでいく。
相変わらず霧がかかって展望はよろしくない。濃霧が渓全体を一段と厳かに仕立て上げる。
そして目前に連瀑帯が現れた。これ登らなあかん?と思ったが、左岸より巻けそうだったので、高巻くことに。
右脇のルンゼを慎重にクライム。先に登ったKさんがお助け紐を出してくれた。あーだこーだ手間取る時間はもったいない。速攻紐をつかんで、最短ゴボウ登りで灌木地帯へ。藪の中には良い感じのバンドが伸びており、辿ったら枝沢に突き当たり、水線右側辺りをクライムダウンして無事沢床に復帰。
6:20、CO970m付近二俣でいよいよゴルジュの入口が現れた。内部の滝はおそらく登れないのでここからまとめて高巻く。枝沢を利用して右岸の灌木地帯まで高度を上げる。
ここら辺でチェーンスパイクを装着した。私は初めて使ったのだが、泥・草にバチ効きでとてつもない安心感があった。
トラバースしているとルンゼに突き当たったので、さらに高度をあげる。ルンゼ上部は狭いトイ状になっていたのでザックと尻のフリクションを駆使しつつ水流をズリズリと一段降りてテラスに着地。さらにトラバース続行。
その先で古い懸垂支点を発見したが、私たちはもう少し先、CO1,020m付近にて50mロープ+40mフローティングを連結して懸垂下降。念のため繋げたが結局25m程で済んだので良かった。7:20再び沢床へ降り立つ。
早速目前には滝が待ち構えており、腰まで浸かって取り付く。久々の水は冷たかった。
その後はしばらく小滝が続く。花崗岩ナメの滝。場所によりヌメる。ちょいちょいKさんにお助けロープを垂らしてもらいながらスピーディーを意識して遡行してゆく。
相変わらず天気はイマイチで、ガスが立ち込めている。
7:50、CO1,070m二俣に至る。
そのうちに、禍々しいオーラを放つ5m滝が見えた。普段の私なら、「巻き!」と言ってしまいたくなるような滝だが、既に両岸は深い岩壁に囲まれており高巻きも優しくはなさそう。とりあえず滝を見に行った結果Kさんが空身でリードすることになった。
てっきり右側のバンドを直上するしかないと思っていたが、なんとCSの中に抜け穴があった。そのうち滝上にひょっこりKさんが現れた。ザック2つ荷上げをした後に私もCS内へ。あっさり登れて良かった。
その後も小滝が続く。トイ状ナメヌメ滝が多い。
やがて目前に極狭ゴルジュが現れる。突き当たりには8mくらいの滝。下段はいけそうだが、上段は難しそう。右壁をよじ登り、割とあっさり抜けることが出来た。
続いてまた悪そうな5mCS滝。こんな形状の滝、今まで登ったことないぞ。本当に登れるの?しかし両岸に逃げ場はない。
リードはKさん。プロテクションが取れないので実質フリーソロだ。見ていてとても冷や冷やした。緊張の1ピッチ、ナイスリード!無事突破。滝上で嬉しそうにガッツポーズしている。
荷上げした後に私もフォローで登る。下部はつっぱりムーブでこなす。ヌメるので慎重に。フォローではあるが、私なりにスムーズに登れたのは嬉しかった。
核心のような悪さだったがこれで終わりでないのが楢戸沢である。まだまだ悪場は続くはずだ。山頂へ着くまで油断できない。
その後も6m程のCS滝。こちらもKさんが直上していく。もはや形だけのビレイなど意味はないのでせめてもとKさんの勇姿をパシャパシャ写真に収める。そしたらCS下で支点取りそうな雰囲気だったので、慌ててビレイ開始。赤カムを決めた後、落ち口に抜けるのが大変そうだった。見ているこっちも冷や冷や。しばし滝に挟まってもがいていたがそのうちに突破!ナイスリード!!
荷上げ後に私も登る。水流に手を突っ込んでのカムを回収がちと苦労した。Kさんリードでこの作業こなすのはかなり大変だったろうに、流石です。Kさんの苦戦した落ち口はゴボウで最短突破。
その後に現れたCSの小滝が私としては悪かった。Kさんが左壁からハングを超えて突破、お助けロープを垂らしてくれる。「ガバだしワカでも登れるよ〜。ハング7級くらいかな!」なーんて言っていたのだが、その7級は登れなかった。ガバなど無かった。
仕方ないので、右壁のヌメを直上。こっちの方がよほど楽だった。(フォローの場合は。)
マントルやハングは毎度苦手項目だ。どうにかして克服しなければ・・・。
倒木利用して登る滝も多いが、倒木が例外なくヌメる。それでも倒木に頼るしかなく、しがみついてどうにかよじ登っていく。
ガスが晴れたり湧いたり、時折姿を現すゴルジュに思わず叫んでしまう。私の知らない南会津の一面。こんなに荒々しい場所もあったのか。
その後も相変わらず緊張する小滝は続く。大体ヌメってはいるが、極悪レベルでは無いのでちょっと磨けばラバーでもフリクションが効いてくれる。
11:20、CO1,315m付近の二俣に到着。右に入れば北壁があるはず。もし晴れていればその姿を拝めるらしいが、残念ながらガスっていて分からない。
GPSを確認するが、楢戸沢に入ってから、ちょこちょこ現在地が一致しない。今いる場所も訳分からないことになっている。国土地理院地図が間違えているのだろう。(最初の大高巻きの時も現在地がズレていてギョッとした。 )
いよいよ本流を離れて北壁へ向かう沢に入る。こちらは水流無し。
狭い沢筋はぐんぐん高度を上げる。一箇所、Kさんにお助けロープ出してもらったような。
そのうちに両岸が低くなっていき、灌木が減り草付きが目立つように。北壁スラブにじわじわ入り込んでゆく。
スラブ直前の涸滝はなかなか悪そうだったので右側の尾根筋をよじ登る。こちらも傾斜があるので緊張した。ラバーのフリクションを効かせる。
登り詰めると、いよいよ目前にスラブが広がった。圧巻の光景。Kさんとワーワーはしゃぐ。
ガスっているのはちょっと残念だけど。
時折ガスが晴れて、北壁スラブと楢戸沢の側壁が見えると感動が倍増した。晴れてる隙に写真を撮りまくる。
喜んでいるのも束の間、また辺りはガスに閉ざされる。晴れたりガスったりの繰り返し。傾斜の緩いところを選びつつ上へ。
左側のポコに狙いを定めて一旦詰め上げる。ポコの右側に沿ってそこそこ深い岩溝通っていた。
上部で傾斜が強くなったので念のため1ピッチロープを出し、ラストはルンゼを少し詰めていよいよ稜線へ。
9月下旬、会津朝日の稜線はちょこちょこと秋模様になっていた。
稜線の向こう、雲の上に見える毛猛連山と猿倉山(べいくら山)に目を奪われた。猿倉のトンガリは一際目立つ。以前山仲間のSさんが言ってたけど、確かにヴィンソン・マシフに似てる。
雲は多いものの、南会津の大好きな山々があちこち見える。私もKさんもテンションが上がる。
山頂までは少し稜線を歩くだけだが、景色に見惚れて一向に足が進まない。
そのうち右手に詰めあげた北壁がドドンと見えて大興奮。
そしていよいよ13:40会津朝日岳へ到着。私たちにとっては2度目の登頂。
景色を満喫して、いよいよ下山に取り掛かる。
以前歩いたのは2月。山スキーで訪れた。スキーで30秒程で滑り降りた場所をテクテクと歩いてゆく。あの時はあっという間だった場所も、歩くと結構長い。
そのうちにポツポツ雨が降り出した。沢やスラブで降られなくて本当良かった・・・。
巨大なブナやクロベの木々に挨拶をしながら降ってゆく。
16:45赤倉沢登山口無事帰着。
去年から憧れていたルートで会津朝日岳へ。最初から最後まで、素晴らしい渓だった。
下流部は南会津らしい真っ白な花崗岩と両岸に広がるブナの森。高度を上げていくと、険しさを増し深いV字状ゴルジュに。ラストは北壁スラブを登り、会津朝日岳の山頂へ。
目まぐるしく変わる渓相。いろいろな南会津の顔を見ることが出来た。
2日間で30km、両日共に10時間超えの長丁場だったがちゃんとこなせて良かった。
滝の登攀も今まで登ったどの沢よりも難しかったが、ちゃんと登れて良かった。
私にとって大きくステップアップ出来た山行だった。
一緒に歩いてくれたKさんに感謝です!
【温泉・食事】
深沢温泉 むら湯 9:00〜19:30(20:00入浴終了)
大人600円
比較的遅くまで営業しており、温泉と食堂があるのでとてもありがたい。
2月の会津朝日岳の記録(山スキー)↓