沢登り下田・川内

蒲生川持場沢〜室谷川名無沢〜金蔵沢〜砥沢〜笠堀ダム 後編

下田・川内

前編はこちら

2022年7月30日(土)
5:25 名無沢出合 – 名無沢奥壁 – 10:30 稜線 – 金蔵沢 – 15:30 砥沢出合

2022年7月31日(日)
5:25 砥沢出合 – 7:50 標高点284m付近 – 12:20 バックウォーター – 16:00 笠堀ダム

蒲生川持場沢から入渓し、会越国境稜線を越えて室谷川へ。支流の名無沢を詰めて奥壁を登り稜線へ至る。

まだ10:30だというのに既に灼熱の暑さ。藪の中で少しだけ休憩して早速金蔵きんぞう沢の下降に取り掛かった。急斜面の藪を掴みながら下降してゆく。稜線を挟んだ東面と西面の環境の違いに驚く。東面はスラブなのに、西面はとても緑豊かだ。

しばらくすると沢型に合流。ヌメる沢を慎重に下降すると次第に水量が増えてヌメが減ってゆく。早速滝が現れたので懸垂下降。その後も急峻な地形が続き再び懸垂下降をさせられる。
その後に2段4m滝と10m滝をまとめて懸垂下降したが、これはなかなか立派な滝だった。

Nくんが1番手で降りようとして、ロープを投げたところ滝上に張り出した枝にロープが引っかかった。「降りながら解きます。」と言ってそのまま降りていったら、なんたることか、ロープがキュッと締まり取れなくなってしまった。やっぱり横着は良くない。たまたま張り出した枝の根元に手が届きそうだったので、木には申し訳ないが鋸で枝を切り落としてロープを無事に回収することができた。
単独でガッツリ沢へ入るNくんでもこんなミスするんだ〜となんだか人間らしさを感じてちょっと身近に感じた。笑

ロープ投げたら木に引っかかった
降りてみたらなかなか見事な滝だった

下流へ向かうと渓相が穏やかになってくる。前方に空が見えて「また滝か?!」と恐る恐る近づいてみたら単なる急峻なゴーロだったことが何度かあった。その度にホッと安堵した。

滝行最高!
巨岩のゴルジュ

巨岩が目立つようになり、その中をのんびり下降していると再びゴルジュや滝が現れる。トイ状4m滝を懸垂下降。

一瞬飛び込もうと思ったが、浅そうなので懸垂下降した

その後にも4m滝。見下ろせばもう1つ続いているようだ。上からまとめて懸垂下降するとロープがスタックする未来が見える。左岸をトラバースして、1つ目の滝を越えたところから懸垂下降。2つの滝を上手く巻くことができた。2つめの10m滝を見たKさんが、「倒木かかってるから上手くクライムダウンできたかもなー。」と言っていた。倒木降りるの絶対怖いだろ!と思った。

丈夫そうな灌木を束ねて支点に
右側のルンゼ上から懸垂下降

そのすぐ下は釜となっており飛び込み泳ぐ!壁が赤茶色になっているが、これはどうやら鉄分のよう。

泳ぐとヘルメットがずれて、まるで沢登り初心者みたいになるNくん。笑

今度こそ渓相は穏やかになってきたようだ。カモシカのトレース。魚影が濃くなってきた。険しい渓から生き物の住まう場所へ降りてきた。そのうち周囲は美しいブナの森に囲まれる。

15:30砥沢出合到着。出合に降りている尾根の末端が素晴らしい台地状になっており幕営地とした。台地には焚き火跡と使わなかった薪がそのまま残されていた。過去にポムチムとM氏や、サワグルイの2人もここを使っている。私たちも使わせていただこう。

ここを使った仲間たちのことを思い浮かべる

対岸の岩壁を見るとポッカリ穴が空いていた。おそらく昔の砥石採石場だろう。今いる台地も、以前は集落の人の泊まり場として使われていたのかもしれない。
大抵こういう場所には釣り師のゴミが残されているが、この場所にはそういった類のものが全くなく、とても綺麗な状態だった。

採石場跡

KさんやNくんが薪集めやタープ設営をやってくれるというので、私は砥沢上流へ釣りへ行くことにした。

トコトコ歩いていると、魚影がピュッと飛び出してくる。砥沢は水量が少なく沢床がくっきり見えるほど水が無色透明で、普通に歩いていると一瞬でイワナたちに見つかって警戒されてしまう。今日の釣りは私には難しそう・・・。
いつも竿を投げる小滝の落ち口ではヒットせず。それでも岩陰に潜むイワナは何度も見たので、魚がいないことはない。今日は作戦を変えてお休み中のイワナを狙ってみることにした。腰をかがめて慎重に沢に近づくも、水深が浅くてクリアな沢水ではやっぱりバレて、竿を投げる前に逃げられる。ほふく前進で、小石一つ音を鳴らさないように慎重に進み、水面から見えづらい位置からイワナが居そうな場所に竿を投げる。ようやくヒット!ややミニサイズではあるがせっかくなのでいただくことにした。先ほどから眺めるイワナもミニが多く、どうやらここの場所は小ぶりなイワナがたくさん暮らしているのかもしれない。ちょっと申し訳ないと思いつつも、夕飯に少しだけいただきたいので頑張ることにした。
今竿を投げた淵は、きっとこの1回で警戒されてしまったことだと思う。案の定釣れなくなったのでさらに上流を目指す。引き続き慎重にやるが、ほふく前進が疲れてきて、意欲消失。程々のところで引き返した。

知らぬ間にNくんに撮られていた

今晩はNくんが白米の水を入れてくれた。昨日は私が水を入れたがやや硬めのご飯になってしまった。今日の白米はちょうど良い硬さでとても旨い!Nくんにコツを聞くも目分量だから分からないとのこと。笑
Nくんは自宅で炊飯する時も全部目分量らしい。すご〜目分量の達人だ!

釣り上げたイワナちゃんも塩焼きにしていただいた。身がふっくら柔らかくてとても美味しかった。改めて山の恵みに感謝です。

楽しい夜!

翌日、5:25出発。2日間使わなかったウェットスーツをついに着る。美麗なプチゴルジュや淵を交えながらもしばらくゴーロ歩きが続く。1時間程歩くと、よりハッキリしたゴルジュが現れるようになる。美しい幅広2条1m滝を過ぎると、いよいよ本気の砥沢とーぞーが始まる。

本日のABU〜🐝
幅広2条1m滝

素晴らしいゴルジュを前に全員歓声が止まらない。

ゴルジュが始まった!
じゃぶじゃぶ水に浸かります

支流の滝も見事で、50m以上はありそうな大滝が4つ並んでいるのは圧巻だった。

支流の大滝が見事!
飛び込み大会も開催中!
スタックした倒木。増水したらここまで届くということだろうか

太陽が顔を出すと、深いゴルジュに明るい光が差し込む。キラキラと反射する水面がとても綺麗だ。

素晴らしい渓!

一時、森が近く穏やかな区間があったものの、再び側壁は高くなってゆく。そして再びゴルジュ!!

砥沢は、まだまだ私たちを楽しませてくれる
素晴らしい渓相だ!

いよいよ笠堀湖が近づき、足元もゴーロ歩きになった。全員が全員、砥沢の渓谷美に満足し、もう終わりも間近かと思っていた。

足元の石ころが細かくなってきた。いよいよ終わりも近いか

しかし、まだ砥沢のハイライトは終わっていなかった。目前に再び深いゴルジュが現れる。

知らない世界に迷い込んだ気分

ここからスーパーゴルジュが始まる。次第に側壁が近づきゴルジュが険悪な様相に。目前にトイ状滝が現れた。勢いのある水流の上をツッパリで抜けて、ホワイトウォーターを避けて釜へジャンプ!その先に2m滝が続いている。先行したKさんから「あそこに向かって飛び込んで!」と指示があったので、再びホワイトウォーターを避けて釜へジャンプ!
というか今日はやけにKさんがホワイトウォーターに厳しい。さっきも私がナメ滝でウォータースライダーやろうと思ったら「だめっ!」と禁止されてしまった。ここだったら大丈夫そうなのに〜と内心思ったし、今のところもイケるんじゃない?と思ったが、多分、本人は黒部の北又谷で溺れたことがあるから、かなり慎重になっているのだと思う。聞いてみたら、やっぱりそうだった。そー言われると、私の方が無知なので言う事は素直に聞くしかないかなぁと思ってしまう。

極狭ゴルジュ現る
洞窟のようなゴルジュ!

もう流石に、終わりだろう。もうダムは近い。そう思ったが、まさかのまさか、ゴルジュはまだ続いている。目前に現れたのは柱状節理のゴルジュだった。素晴らしい景観に思わず立ちすくむ。まるで異世界にワープした気分だ。沢登りをやっていて良かった。そう思った瞬間だった。

柱状節理の世界!
ものすごい側壁だ
泳ぐ!

ロンレ沢出合を過ぎて、いよいよ笠堀湖へ。ついにゴルジュは終わり、目前にはダムのバックウォーターが広がる。

ダムへ入水していく

これからダムを泳いで、対岸にある湖岸道を目指さなければいけない。しばし休憩を挟み、覚悟を決めてダム湖へ入水。最初は泥沼で、ズブズブと膝丈くらいまで沈んでゆく。Nくんが私の前方で悲鳴をあげている。Kさんは一足早く泥沼から脱出し泳いでいる。羨ましい・・・。自分の周囲でプスプスとよく分からないガスが湧いてきて気味が悪い。

ようやく泥沼から足が離れてゆく。生暖かくて温水プールのような水温から、次第に適温に。ようやくダム湖へ出た。泳ぎは体力を消耗するので右岸をへつったり水中ウォーキングしながら進んでゆく。
いよいよ湖岸道のある陸地が対岸に見えてきた。最後は笠堀川の出合を50mほど泳いで横断してゆく。風に煽られながらも懸命に平泳ぎを続ける。ダム湖では沢を泳ぐよりスムーズに泳げない。是が非でも口の中に水を入れたくないから、泳ぐ姿勢が無意識に悪くなっているのだと思う。

右岸を水中ウォーキング
笠堀川出合を横断

ようやく、湖岸道のある笠堀湖の右岸に上陸した時は心底ホッとした。サラサラの草原が心地良い。

汚水から上陸

湖岸道まで上がろうかという話もあったが、今の所歩きやすいので、適当に右岸を歩いてゆく。沢の出合は再びダムに入水して横断。歩いている時はいなかったアブたちがここぞという時に攻撃してくる。泳いでいる途中なので厄介なアイツらを払い除けることが出来ない。苦痛の時間だった。

沢の出合はショートカットの為泳ぐ。

渡り終えたあと、私とNくんは再び右岸に上がりトラバースしていたが、Kさんはいまだに水中ウォーキングしている。Nくんが「もう歩けるのに未だにダム泳いでいる人がいる。怖いわ〜。」とドン引きの視線をKさんに向けている。私も同感である。
しかし、意外と陸地がガレガレの箇所があり歩きづらい。思い切って私も入水すると、あれ、意外と水中ウォーキングが捗るぞ。笑

まだ汚水に浸かっているよwと思っていたが・・・
その数分後には全員・・・

そのうちにNくんも真似しだして、全員で水中ウォーキングを始める。右岸の傾斜が急になったり緩くなったり。緩くなったタイミングで私が「そろそろ湖岸道覗いてみる?」と話したら、ちょっと見てみるか、となって、右岸を這い上がる。すぐに湖岸道は見つかったが、進み始めると藪に覆われる。歩きづらいことこの上なくて「ダム湖歩いた方がマシじゃない?」と話したら全員賛成。
湖岸道歩きは諦め再びダム湖へ。Nくんが「早く水に浸かりたいわ〜。」と言ったのが笑えた。さっきまでは、怖いわ〜。とか言ってたのに。人とは順応する生き物である。笑

何個目かの沢の出合を横断している時、なんとKさんの足が攣ってしまった。「痛い!」と苦痛の表情。足が痛くて動かせないようで、2〜3回私が頑張って陸に向けて押して、どうにか横断することができた。それにしても、水中での足攣りは結構命に関わるような・・・。ライフジャケット着てて本当に良かったと思った。

いよいよダムの壁が近づいてきたので湖岸道に這い上がる。沢の出合がスラブになっており、そこから。

出合から這い上がる
笠堀スラブ

スラブの上部にある踏み跡に合流し歩いていたが、そのうちぱったりと途絶え見失う。みんなであちこち探すが深い藪ばかり。疲れ切って絶望した頃にようやく踏み跡を見つけて、快適に辿ってゆく。16:00笠堀ダムへ無事下山。

お疲れ様!

3日間の長く充実した山旅が終わった。最初から最後まで、変化に富んだ景色を眺められて大満足だ。
今回Nくんとは初めて山行を共にした。普段越後の険しい渓へ入っているから、今回のルートはNくん的には物足りないかも?と心配していたがそれは杞憂だった。こんな場所見たことない!と満足してくれて本当に良かった。また一緒に行きましょう!
Nくん、Kさん、ありがとう!!

砥沢に関する文献
藤島玄 (1976) 『越後の山旅 上巻』, 「光明山」, p.338-341, 富士波出版社.
笠原藤七 (1987) 『川内山とその周辺』, 「続川内地名考」, p27.
高桑信一 (1997) 『一期一会の渓 魚止滝を越え頂稜へ』, 「春の渓に歴史の残光を探して」, p.146-155, つり人社.
高桑信一 (2015) 『古道巡礼 山人が越えた径』, 「越後下田の砥石道」, p.92-117, 山と溪谷社.
三条市 (2009) 『しただの山』, 「光明山」, p.7-10
服部文祥 (2017)『獲物山』, 「テンカラ釣行記 ~新潟県下田川内2015.6~」, p.114-119, 笠倉出版社

地形図では「砥沢川」となっているが、私は「砥沢(トーゾー)」とした。以下の書籍を参考にしている。

笠原藤七 (1987) 『川内山とその周辺』, 「続川内地名考」, p27.
遡行図

【オススメ】
下田山塊山岳地図・・・「道の駅 漢学の里しただ」にて200円で販売中。(レジで頼めば出してくれる。)国土地理院地図には表記のない地点名も色々と載っている。ちなみにこちらでも「砥沢川」ではなく「砥沢」とされている。
しただの山・・・400円。ハイキングコース多めだが、八十里越えの山々など、やはり地理院地図に表記のない山名も載っている。

【後日談】
下山後、Kさんが肘が赤く腫れて痛いと言っていた。痛みは1週間続き、いよいよ治らないので「もしかして骨にヒビが入っている?」と思って整形外科を受診したところ、どうやら炎症が起きていたらしい。患部は熱を持っており、「これはまずいですよ!」と言われ、針で穴を開けて水抜きしてもらったようだ。中からは黄色い水が出てきた。医者にはしばらく入浴、沢登りを禁止され、抗生物質を処方してもらったようだ。
・・・ん?その話聞き覚えがある。症状がまるで蜂窩織炎ではないか?しかし、Kさんはそんなに不衛生なことしたっけ?でもよく思い返せば不衛生なことをしていた。アブに刺されて傷口ができた肘を、何時間もダムの水に浸けていたのが原因だろう。
とりあえず、大事に至る前に気づけて良かった。蜂窩織炎、やはり恐ろしいものである。
悪化するとこうなります↓

タイトルとURLをコピーしました