2021年9月4日(土)から9月11日(土)にかけて、8日間(プラス予備日3日間)で巻機山から平ヶ岳を越えて会津駒ヶ岳まで横断する山旅をKさんと計画した。
秋雨前線の活発な中での決行。悪天の隙をついて順調に進んでいたが、水長沢から平ヶ岳を目指す段階で、アクシデントに阻まれた。日数は余っていたのでその後もどうにか平ヶ岳を目指せないかと行動したが、いよいよ無理だと悟り、登頂を断念。長い下山をこなし、結局6泊7日での奥利根脱出行となった。成功は1つもなく撤退して終わった山行だったが、7日間の山旅は色々な出来事があり、濃く山に浸ることの出来た日々だった。
2021年9月3日(金) 曇り
21:45 桜坂駐車場 – 翌1:43 偽巻機山 – 2:00 巻機山避難小屋 (合計時間 : 4h15m)
2021年9月4日(土) 雨
8:00 巻機山避難小屋 – 8:30 巻機山 – 10:05 上トトンボ沢 – 15:50 CO1,040m (合計時間 : 7h50m)
2021年9月5日(日) 曇りのち雨
5:15 CO1,040m – 5:50 奈良沢 – 8:20 奥利根湖 (パックラフト) – 13:20 水長沢 – 15:30 CO965m (合計時間 : 10h15m) ※21:00頃増水。高台避難
2021年9月6日(月) 雨時々曇り
8:00 CO965m – 9:40 大雨で停滞 12:30 – 15:40 水長沢山南尾根 – 17:10 CO1,135m (合計時間 : 9h10m)
2021年9月7日(火) 曇り
5:55 CO1,135m – 12:15 CO1,660m – 水長沢山南西尾根 – 16:30 CO1,360m (合計時間 : 10h35m)
2021年9月8日(水) 雨
停滞
2021年9月9日(木) 雨のち曇り
6:35 CO1,360m – 9:25 水長沢出合 – 奥利根湖 – 13:45 矢木沢ダム (合計時間 : 7h10m)
メンバー : 2人(Waka : フェルト、Kさん : ラバー)
装備 : 30mロープ、フローティングロープ25m、パックラフト
※食糧はカレーメシやアルファ米、ナッツなど
1日目 : 井戸尾根から巻機山
本来は土曜日の朝に出発、ヌクビ沢から登る予定だったが、天気予報がよろしくない。前日金曜日の夜、雨が降っていないタイミングに井戸尾根から巻機山避難小屋まで登ってしまうことにした。
21時過ぎに桜坂駐車場へ着くと、曇り空。これはチャンスとヘッドランプを装着して登山開始。重さ16kgほどのザックを背負い、高度を稼ぐ。次第に寝不足で頭が痛くなってくるが、夜風が心地良い。
2:00巻機山避難小屋到着。とても綺麗な小屋だった。
Kさんが米子沢の源頭部から水を汲んできてくれた。夜中の行動時間は4時間ほど。駐車場で仮眠しても、きっと興奮して眠れなかった。小屋は快適、歩いている間は雨も降らなかったしで、夜のうちに登っておいて良かった。

2日目 : 上トトンボ沢下降
土曜日の午前中は雨予報だったので、8:00頃起床して様子伺いつつ出発することに。7:00頃にウトウト目を開けると、意外と外が明るい。起き出したKさんが外の様子を見に行くと、曇り空だった。相談して、8:00出発。
巻機山の稜線が目前に映る。山肌はちょこっと茶色になっていて秋が少し。目を落とすとイワショウブがあちこちに咲いていた。白い花を咲かせていたり赤い実をつけていたりと紅白の彩りが可愛らしい。夏の終わり、秋の始まりを告げている。
8:30巻機山到着。そのうちに谷川岳から急速に雲が迫ってきて霧雨になった。南側から強い風が吹き付ける。Kさんの眼鏡が片側だけ曇っていた。雨合羽のフードを被るが剥き出しのほっぺが冷たい。身体はすぐにビショ濡れになるがネオプレン装備のおかげか身体の寒さは感じなかった。
牛が岳に寄り道した後、いよいよ上トトンボ沢の下降に取り掛かる。登山道を外れると次第に笹藪の勢いが増してゆく。コンパスと地図で方向を確認しながら下降。滝の多いブサノ裏沢に入らないように気をつけながら。10:05無事に上トトンボ沢合流。

左右を藪に覆われた源頭部はそれなりに傾斜が急。浮き石の多い沢床を慎重に降る。ザックが普段の沢登りより重い。ワンミスは怪我のもとだ。沢に入ってからは、吹き付けていた風がおさまり、行動しやすくなった。雨は止んでくれたが、空には今にも水滴が垂れてきそうな重たい霧が被ったまま。
赤ガレを降って二俣が合流すると滝が現れ始める。滝のクライムダウンはなるべく避けて、高巻いたりと、より安全に下りるルートを探しながら進んでゆく。小滝は連瀑を形成しており忙しい。
そのうちに上トトンボ沢最大の25m大滝が現れた。左岸側をブッシュを伝ってクライムダウン。そこらの岩には分厚いヌメが張り付き、フェルトでも滑るくらい。無事に下りて振り返る。上トトンボ沢は下降向きの沢として紹介されているが、大滝は美しく、上部の連瀑帯はなかなか急峻だ。奥利根で「遡行」される沢はこれ以上ということか。一体どれほどの美しさと険しさを兼ね備えているのだろう。
下部へ行くと「上トトンボ沢」の由来となった、2mを越えるトトンボ(イタドリ)の群生があった。Kさん思わずニッコリ。2度ほど、支流から立派な滝が出合う。ヌメりに気をつけながら下降してゆくと、15m滝の上部に出合った。
左岸側を空中懸垂で着地。15m滝は立派なもので、何度振り返っても直線上の遠くに滝を眺めることが出来た。
15:50、CO1,040m付近の右岸側に平らな河原を発見。あと30分ほど下れば、奈良沢本流に出合う。もう少し進もうか悩んだが、ここで幕営することとした。河原の横には水の流れた跡があり増水すれば危なそうだったが、天気予報では激しい雨は降らないと出ていたので大丈夫だろうと判断した。
タープを張ると、早速雨が降ってきた。今日一番の強い降りだ。辺りにあった既にびしょ濡れの薪を慌てて集めて、自分たちもタープの下に潜り込む。Kさんが焚き火の着火に奮闘してくれたが残念ながら火はつかなかった。夕食は、ガスでお湯を沸かして1人1つ、リゾッタを平らげる。
今回は行程が長いので、夜用の着替えを用意している。乾いた服でシュラフへ入ったら暖かくてとても心地良かった。
増水を気にしたが、沢の水は濁らず、雨もそれ以上強くなることはなく、落ち着いた夜を過ごすことが出来た。
3日目 : 奥利根湖横断
翌朝、5:15幕営地出発。歩き始めて30分ほどで本流の奈良沢と出合う。
基本的に河原歩きが続くが、道中、数カ所で美しいナメ床を歩いた。奈良沢のような大きな沢の下流部は、てっきりゴーロで埋まっていると思っていた。予期せず美しい渓相を見ることが出来て嬉しかった。
道中、釣り師のグループと遭遇。一バンテ沢〜五バンテ沢を抱える小沢出合で、持っているプラティパスに水を汲み、奥利根湖の湖岸へ到着。
パックラフトを膨らまし、8:20出航。

目指す水長沢出合までは片道12kmほど。Kさんとお話しながらのんびりと目指す。3羽の水鳥が水中に潜水して餌を探しているのを見かけた。(帰宅後調べたらカイツブリという鳥だった。)
釣り師のモーターボートを数隻見かけたが、どの方も、こちらが近づくのに気づくと大きく迂回して避けてくれた。
今日は曇り空。暑すぎず、舟を漕ぐにはちょうど良い気温だ。のんびりと周りの景色を楽しみながら進んでゆく。木陰ではアメンボの集団が水面でぴょんぴょん跳ねていた。小学生の頃は雨上がりに水溜まりに集まったアメンボを捕まえたりしてた。なんだか懐かしい気持ちになった。
13:00利根川本流の湖岸に到着。約4時間半で、奥利根湖を横断することが出来た。湖上から眺める景色は新鮮で、移りゆく景色を眺めながらの船旅はなかなか楽しかった。
今、私たちは、あの利根川本谷の出合にいる。Kさんと一緒に左岸から右岸へ、右岸から左岸へと利根川を渡った。これにて「利根川横断」達成だ!

当初の計画では水長沢出合で幕営する予定だったが、時間があるので水長沢へ入渓することにした。しばらくはゴーロ帯がメインなので、幕営適地もきっとあるはず。

水流を眺めながら進む。荷物が重いので要所要所で緊張する。そこかしこの支流に立派な滝がかかり、目を楽しませてくれた。3m滝は右側から直登。そのすぐ後にも2mの滝がかかっていた。
時刻は15時過ぎ。適当な場所で幕営を、と思っていたが思いの外進んでしまった。ゴーロが少なくなってきて全体的に幕営適地が見つけづらくなってきた。
赤ガレの崩落地を越えると、再びゴーロ帯。ここら辺で幕営地を探さなければ。ちょうど右岸の河原に真っ平なスペースがあり、幕営するに良さそうだ。数十m先の左岸、ちょっとした高台にも寝泊り出来そうな場所があったが、巨岩と藪ばかりで整地が大変そうだ。翌日は、雨予報で1日停滞の可能性もあるので、右岸の快適な方で幕営することとした。
快適幕営地は沢が近いが、土曜日に確認した天気予報では夜の6時間降水量は4mm、翌日も1〜2mm程度だったので増水は大丈夫だろうということで決定した。
乾いた薪はすぐに大量に集まった。夜の雨を警戒してタープの下で細々と焚き火をする。いつもはビーバーのダムの如く大量の薪を収集し、豪快な焚き火を好むKさんがチマチマと省エネモードになっているのが新鮮で可笑しかった。(笑)
今日は2人でラーメンを食べる。スーパーで売っていた鍋用の棒ラーメンだがこれがなかなか美味しかった。
そのうちに予想通り雨が降り始めたが、薪は停滞時も考えてタープの下にごっそり集めたので心配ない。
雨脚は次第に強まってきた。ファイントラックのゴージュタープ、ついにシーム加工の施された部分からポタポタと雨漏りが始まった。ネオプレンの服を地面に敷いたりするが、全ては防ぎきれずあちこちに小さな水たまりが出来てしまった。
19時前に就寝。雨はやや強いが、短時間で落ち着いてくれるはず。それでもこのまま寝落ちするのは少し引っかかる。もしこの雨で増水するなら早くて2時間ほどだろうか。念のため21時にアラームをかけた。いや、でももう少し早めて20時半にアラームセット。
目を閉じていると、そのうちにタープを叩く雨の音は落ち着いていったので、ホッと安心。
20:50、結局20時半に起きれなくて、何度目かのアラームでようやく目を覚ました。一度はおさまったと思っていた雨の音はまた強くなっていた。
タープの隙間から沢をヘッドライトで照らすと、一目瞭然で増水していた。カフェオレ色に濁った沢水に夕方眺めた時の穏やかさは無い。ごうごうと白波を立てて勢いよく水が流れている。まだ危機感はさほどなく初めての出来事に焦りよりも困惑の方が大きかった。
眠っているKさんを起こして、「もしかして心配しすぎかもしれないけど。」と現状を伝えた。Kさんも、ライトで沢を照らした。「増水してるね。」と答えるが、なんだか寝ぼけ気味で、それだけ言うと再びスヤァと寝そうになっている。
目の前で起こっている事態がにわかには信じがたい。Kさんも再び寝ようとしてるし、正直私の心配しすぎなんじゃ?と感じている。
それでも、とりあえずはタープ内に散らばった荷物をザックにまとめておくことにした。
チラッともう一度沢を確認すると、明らかに先ほどよりも水量が増していた。増水のスピードが早すぎないか?
ようやく、危機意識が目を覚ました。
寝ぼけていたKさんが私の動きに目を覚まして、もう一度沢を覗いている。
そして、Kさんもついに動き始めた。
ザックに荷物をまとめる。慌ててはいるが濡れたくない装備は丁寧に片付ける。沢装備へ着替え、沢靴を履いたらちょっとは精神的余裕が生まれた。
ちょこちょこ沢の様子を観察すると次第に水位が上昇している。すでに寝床の浸水がはじまっている。焦るけど、落ち着いて、冷静にならなければ。

Kさんが幕営地後ろの岩壁をよじ登って、10m程上の樹林帯からロープをフィックスして降りてきてくれた。
私にアッセンダーで先に登るように言ってきた。
荷物は後で荷揚げすることにして、まずは身体をアッセンダーで持ち上げる。こんな崖みたいなとこ、Kさんよく登ったな。流石だわ。私はとにかくゴボウスタイルで身体を持ち上げた。
フィックス地点まで登り、荷物引き上げに取り掛かる。マイクロトラクションは常に持ち歩いているが、やっぱり優秀。非力な女子にはありがたいギアだ。
Kさんが下でくくりつけてくれたザックを引き上げる。途中で木に引っかかってしまい、どかすのにやや時間を要した。
続いて、Kさんの荷物を引き上げ、最後にKさんが無事に登ってきた。
Kさんが下で待っているあいだ、足元に水が迫ってきてかなり焦ったそうだ。タープもKさんがちゃんと回収してきてくれた。焚き火は水に流されたが、装備も人命も全て無事で本当に良かった。
増水にもちゃんと気づけて良かった。以前薬師沢小屋でバイトしていた時に、毎日黒部川を眺めていた経験が役に立った。
樹林帯には、幸いなことに人が座れる幅の平らなバンドが伸びていた。フィックスをセットし、セルフビレイをとった。タープとグランドシートを頭からすっぽり被って座り込む。全身びしょ濡れでとても寒い。背中に当たる岩が冷たかったが、隙間にザックを入れたらちょっとはマシになった。Kさんと肩を寄せると少しは暖かくなった。Kさんがブルブル震えているのが肩から伝わってくる。そのうちにウトウトする時間もあって、合計3回は短いけど夢を見ることが出来た。なんだこれ、冬山より寒いじゃないか。辛くて、とても長い夜だった。時折、沢の音に混じってゴロンゴロンと岩の流れる音が聞こえてくる。あの濁流に巻き込まれなくて良かった。























