2022年7月13日(水)
10:45 鳩待峠 – 11:50 山ノ鼻 12:20 – 14:15 龍宮小屋
2022年7月14日(木)
3:00 龍宮小屋 – 4:40 山ノ鼻 5:00 – 9:10 至仏山 9:30 – 13:00 鳩待峠
ガイド登山(メンバー : 2名)
天気 : 1日目 曇り時々雨 , 2日目 曇りのち霧
7月の中旬、花盛りの時期を狙って尾瀬ヶ原・至仏山へ。両日共に天気予報がイマイチだったが、直前に多少良くなってくれた。「山は行ってみなければ分からない」咲き乱れるお花と、もしかしたらの晴れ空に期待して行ってみることにした。
11:00前に鳩待峠へ到着すると、どんより曇り空が広がっていた。雨が降っていなくて一安心。予報では午後から降り始める。軽く準備運動をして出発。
軽快に歩いてゆくが、早速右に左にお花が出始める。
シーズンは終わってしまったがツクバネソウ、エンレイソウがあり、他にヤグルマソウ、オククルマムグラ、ヤマオダマキ、ケナツノタムラソウなどがあった。
個人的に初めましてだったのがヒロハテンナンショウとオオレイジンソウ。ヒロハテンナンショウは同じサトイモ科のマムシグサと少し似ているが、マムシグサは茎も葉っぱも特徴的なので消去法的に見分ければ違いは一目瞭然だろう。
オオレイジンソウはトリカブトの近縁植物らしい。最初はオゼトリカブト?とか勝手に名前をつけて盛り上がっていたが最終的にオオレイジンソウだと判明した。笑
花期が7月上旬〜中旬のみで短く、今回出会えたのは幸いだったかもしれない。
尾瀬ヶ原へ向かう歩荷さんと抜きつ抜かれつでゆっくり歩き、12時前に山ノ鼻へ到着。昼食がてら休憩していたらいよいよ雨が降り出した。カッパを着込み本日の宿泊予定地「龍宮小屋」へと向かう。
晴れた土日は渋滞する尾瀬ヶ原の木道だが、雨の平日は空いていて歩きやすい。あちこちに咲いている旬の花を見つけては立ち止まり、じっくり眺めて楽しむ。

アヤメやカキツバタ。雨に濡れてまるで濡れ鼠のワタスゲ、これはこれで可愛くてほっこり胸が暖かくなる。トキソウやサワラン、ネジバナ、キンコウカがちらほら咲いており湿原に彩りを与えている。
水面に覗いている白い花はヒツジグサ。以前見かけた時は2つしか見つけられなかったが今回は小さいながらもたくさん開花しており目を楽しませてくれた。

あちこちの草に赤や青のトンボが沢山止まっている。標高の高い尾瀬ヶ原でも6月にはヌカカが出没し、場所によっては虫刺されに悩まされることがある。トンボは害を加える虫を食べてくれるので救世主だ。
ナガバノモウセンゴケは北海道の数カ所に自生する以外では尾瀬ヶ原にしか無い貴重な植物である。見渡す限りのナガバノモウセンゴケの群落に安心するとともに胸が躍る。
食虫植物であり個性的な様相をしているのが面白くてじっくり観察していたら、なんと隙間に黒く蠢くものが。「クロサンショウウオ」だった。人目を気にせずウロチョロ動いている様が可愛らしい。ふと檜枝岐村の名物がサンショウウオであることを思い出す。檜枝岐ではサンショウウオの干物が販売している。目の前のこの子も、食べられるということか・・・。
歩いていたらまたもや初めましてのお花が。まるでナスの花だ。私も分からなくて、調べてみたらオオマルバノホロシという花だった。そしてなんと尾瀬ナスという異名があることが分かった。

14:15龍宮小屋到着。受付を済ませて乾燥室へ立ち寄った後に2階の個室へと向かう。15:00からお風呂に入りまったり。山の中での入浴とは、なんて贅沢なことでしょう。
17:30から夕食の時間。サラダチキンやイワシ、ひじきの煮物など全体的に優しい食事。私にはピッタリのメニューで全て美味しくペロリといただいた。
翌朝は2:30起床、3:00出発。前日の夜に打ち合わせして朝早く出発することにした。今日は昼前から天気が崩れる予報なので早めに出発してのんびりお花を楽しもうという作戦だ。
早朝、歩き始めたら暗い湿原も次第に明るくなってくる。重く曇っていた空も少しだけ晴れてきて見上げると瞬く星がいくつか見えた。湿原の向こうにきらりと光る2つの目は鹿だろうか。ヘッドライトを当てて眺めていたら「ピャッ!」と鳴いて逃げていった。ひたすら鳴き続けるカッコウの声に耳を傾けながら進んでゆく。前方に聳える至仏山は、山頂付近にガスがかかっている。2人で「登っている間にガスが晴れると良いですね。」なんて話し合う。
山ノ鼻で小休止を挟み5:00いよいよ至仏山へ向けて登り始める。
前日の雨のせいか登山道の階段一段一段に水溜まりが出来ている。極力水に足を突っ込まないように、足を滑らせないように、慎重に登ってゆく。程なくして樹林帯を抜けて振り返ると展望が広がった。燧ヶ岳は雲に覆われ見えないものの霧の隙間には広大な尾瀬ヶ原の展望。しばらく楽しんでいたがその景色はみるみるうちにガスに閉ざされてしまった。

展望は無くなってしまったが、代わりにそこかしこに花が現れ始め、私たちを楽しませてくれる。ベニサラサドウダン、ウラジロヨウラク、イワシモツケ、コメツツジなどの落葉低木には小さくて可憐なお花が。足元にはハクサンチドリやヨツバシオガマをはじめ、至仏山ならではのオゼソウやホソバヒナウスユキソウ、ミネウスユキソウがそこかしこに姿を見せ始めた。イブキジャコウソウの群落は実に見事で、美麗な紫のカーペットが広がっていた。雪渓が最近まで残っていたと思われる場所には春の妖精とも呼ばれるショウジョウバカマが。かと思えば別の場所では既にチングルマの綿毛が揺らめき、同じ山であれ時期の異なる花々を一度に眺めることができた。
他にもネバリノギラン、ユキワリソウ、ヒメシャクナゲ、イワイチョウ、ウサギギク、シブツアサツキ、カトウハコベ、ムラサキタカネアオヤギソウ、クルマユリ、タカネナデシコ、ジョウシュウアズマギク、シラネニンジン、ミヤマウイキョウ、ギボウシ、ホソバコゴメグサなど。辺り一面お花畑。色とりどりのお花たちが緑の山肌に点在し、仲良く群生している様は見ていて楽しい。

9:10至仏山到着。雨は降っていないもののガスに覆われており展望はゼロ。それでも意外と多くの登山者で賑わっていた。しばらく休憩し、鳩待峠に向けて歩き始める。

そのうち、後ろから檜枝岐村の中学校の生徒たちがやってきた。1年に1度学校登山をしていて、会津駒ヶ岳、燧ヶ岳と登って、今年は至仏山に登る年らしい。若者はみんな元気で足取りも軽やかだ。檜枝岐村のTシャツだったり、私が以前アルバイトしていた尾瀬温泉小屋のTシャツを着ている生徒も居たりしてなんだか微笑ましかった。笑
彼らに私たちを追い越してもらってから、再び歩みを進める。相変わらずウスユキソウが咲き乱れ、他にもホソバツメクサやタカネバラ、タカネシオガマ、ジョウエツキバナノコマノツメ、マイサギソウ、ハクサンコザクラ、ハクサンシャクナゲが姿を見せてくれるようになる。至仏山の登りでは綿毛となっていたチングルマもこちらではまだまだ生きの良い白い花を見せてくれた。シナノキンバイやハクサンイチゲ、オゼソウの群落が素晴らしかった。
ワタスゲやタテヤマリンドウの咲くオヤマ沢田代を過ぎると、いよいよ鳩待峠へ本格的なくだりとなる。樹林帯の中でもタケシマランやマイヅルソウ、ユキザサの群生が目を楽しませてくれる。
13:00鳩待峠無事帰着。