2021年6月9日(水) 晴れ
4:55 滝沢登山口 – 8:10 駒の小屋 8:30 – 8:55 会津駒ヶ岳 – 9:40 中門岳 10:00 – 10:40 会津駒ヶ岳 – 11:00 駒の小屋 11:20 – 13:35 滝沢登山口(合計時間8h40m)
距離 : 12.7km 累計高度(+) : 1,248m 累計高度(-) : 1,257m
メンバー 4人
私は今、尾瀬の温泉小屋でアルバイト中だ。
6月中に、バイトメンバー全員が同じ日に休むタイミングがあり、もし晴れたら皆で会津駒ヶ岳に登りたいねと話していた。
休みの日程は1ヶ月前から決まっていたが、なんと当日は奇跡的に好天予報。
バイトチームは全員で4人。私、ゆいさん、まほさん、もっさんである。3人とも雪山へ登るのは初めてらしい。(まほさんは、山に雪があるとビックリしてしまうそうだ。)自動的に雪山経験のある私が隊長を仰せつかることになった。
前日は檜枝岐村の民宿に宿泊。その前に会津田島まで移動して食材や日用品の買い出しをした。
もっさん、ゆいさんが、サングラスを持っていなかったので、ギリギリ、ヨークベニマルで買ってもらった。
当日、4時半過ぎに民宿を出て滝沢登山口へ。登山口には2台の車が停まっていた。
5時前に登山開始。私ともっさんは登山靴。ゆいさんとまほさんは長靴だ。


朝の森は、空気が冷えていて気持ちが良い。小鳥のさえずりを聴きながら高度を稼ぐ。葛折りの急登がひたすら続く。
時折のんびり休憩を挟みつつ順調に進む。

標高1,660m付近から残雪が現れた。



まだ辺りに人の気配はなく、静かな山歩きを楽しむ。
そのうちに樹林もまばらになりいよいよ上部の湿原に。


そしてついに会津駒ヶ岳が現れた。

写真や動画を撮ったり、皆楽しそうな様子。当然私もテンションが上がっている。

素晴らしい1日なのは確かだが、先程より頭上で福島県警のヘリが飛んでいるのが気掛かりだ。
後から分かったが、遭難が発生して救助要請があったようだ。私たちが駒から下山する時に駒の小屋で休憩していた警察と会話をした。救助要請者は無事、ヘリにてピックアップされたようだ。

その内に西側の展望も開け、燧ヶ岳や至仏山が見えた。視線をずらすと平ヶ岳、中ノ岳、荒沢岳、越後駒ヶ岳と続いている。

ゆいさんがあの山は何?と聞いてくるので、燧だと答える。方角が違うと、山の顔つきもまた変わる。皆、普段見慣れない燧の姿を感心したように眺めていた。
いよいよ駒の小屋までひと登り。最後の登りは遠目から眺めると急に見えたが、全員、問題無く登っていた。
まだ時刻は8時過ぎ。余裕があるので、駒の小屋でのんびり休憩。
8時半、いよいよ会津駒ヶ岳へ出発。

山頂直下は南面を直登。比較的急だったが、こちらも皆んな順調に歩いており問題なし。

ひと足早く、ガシガシ登っているもっさんとゆいさん。時折立ち止まり後ろを振り返っている。広がる展望につい目を奪われているのか。

上部で夏道に合流し、いよいよ会津駒ヶ岳の山頂へ。
山頂はすっかり雪が溶けていて、ここだけはすっかり夏の姿。昨年の夏に初めて登った会津駒ヶ岳。当時の記憶が懐かしく蘇ってきた。当時の記録を読むと、その時も私は「会津駒ヶ岳は素晴らしい山だった」と感じていたようだ。これで2年連続登頂になる。なんと嬉しいことか。

時間があるので、中門岳の方へ少し歩いてみようと提案すると、皆賛成してくれた。
少し歩くと、早速展望が広がった。
再び現れた燧ヶ岳や至仏山。越後駒ヶ岳や平ヶ岳も相変わらず美しい。そして東側には会津駒ヶ岳から繋がる山々。大戸沢岳、三岩岳と続き奥には会津朝日岳や丸山岳も見えた。




谷底に流れるのは袖沢御神楽沢。会津駒ヶ岳へと続く渓だ。沢床にはまだ雪が詰まっており、白く美しい岩肌が陽の光を浴びるのはまだしばらく先のようだ。

何度か足を運んだ檜枝岐村、南会津の山々。やはりこの山域の山々が大好きだ。1つ1つの山行が印象深く、心に刻まれている。


そのうちに、未丈ヶ岳やうっすらと毛猛山も見えた。

未丈ヶ岳の手前には真っ白で巨大な岩肌が見える。見間違える事はない、白石沢スラブだ。遠くから眺めても圧倒的な存在感。素晴らしい展望。



のんびりと稜線を歩いていくと、やがてコルに到着。そこには中門岳の山頂標識があった。ここら一帯をまとめて「中門岳」と呼ぶそうだ。


なんとなく山頂へ登った気分になれなくて、向こうのピークまで行こうよ!と皆を誘うも、疲れてきたのか「待ってるから行ってらっしゃーい」て感じでザックを置いて休憩しようとしている。
こりゃ、私1人でも行くぞと思っていたら、なんと一人、まほさんだけは乗り気だった。せっかくだから私は行ってみようかな。とニコニコ笑顔で言ってくれた。
本当は一番疲れているはずなのに、何と心の優しい子なのだろう。2人も、まほさんの予想外のリアクションに感化されたのか、結局全員で向こうのピークへ行くことになった。結局、皆優しいのである。
ピークへ登ると、再び会津朝日岳や丸山岳が姿を現した。


ようやく私も満足だ。ここまで一緒に歩いてくれた皆に感謝。
時刻も10時になり、いよいよ往路を辿る。


再び会津駒ヶ岳へ戻ると、人が増え賑やかになっていた。挨拶を交わしながら引き続き駒の小屋へ向かう。

山頂直下の南面ではお楽しみのシリセード。雪山初めてならぜひこの楽しさを知って貰いたいと思った次第である。
私がトップで滑降。それなりの傾斜で楽しく滑る事が出来た。

下で待っていたら、もっさんも滑り降りてきた。テンションが上がっているのか、今まで聞いたことのないような奇声を上げている。
私がかかとでブレーキかけろと何度も言ってるのに、まるで聞いてない。私の真横を通り過ぎて、ようやく止まってくれた。ご満悦の表情。とっても楽しそうだ。
残る2人は、長靴で滑り?ながら降りてきた。これまたテクニカルなことをやっていた。
その後も、もっさんはシリセードの楽しさに味をしめたようで、事あるごとに滑っている。ようやくスピード制御も学んでくれだようだ。歩きつつもちょっと下り坂になると一瞬でも楽しそうに滑っている様子が見えた。


駒の小屋で再び休憩。

のんびりしていると、一人の若い男性に「この先、アイゼンは必要ですか?」声を掛けられた。
完全に聞く相手を間違えているのが、内心可笑しかった。案の定、皆はキョトンとした表情で固っていた。一呼吸置いてから妙にハモって全員一致で「要りません。」とひとこと絞り出した。
結局、我々は信用するに値しないと判断されたのか、その男性はアイゼンを装着して出発していった。
3人は今回雪山が初めてでアイゼンをそもそも持っていない。今回は私が隊長の責務として、皆の雪歩きの様子を逐一監視していたが、全員調子良く歩いていたので、結果的に撤退することもなく順調に山歩きを楽しむ事が出来た。
皆には、一応私の思うアイゼンの使いどころを説明した。雪が怖いと思ったり滑落したくない場所で履く事と、雪でズリズリ足を取られて面倒な時とかに履いても効率的に歩けるようになるよと伝えた。どうやらゆいさんは、今日まさに雪歩きで踏ん張ってばかりで、疲れを感じたらしい。なるほど、と納得してくれた。
いよいよ会津駒ヶ岳に別れを告げる。
帰路でも、もっさんはスキあらばシリセードをやる。相当気に入ったようだ。


日中の昇温で雪は緩み、高度を下げていくと、雪溶け水が登山道を小川のように流れていた。まほさん、ゆいさんの長靴は絶大な効力を発揮した。

滝沢登山道は、なかなか急である。後ろを歩いていたまほさんが、こんな急なところを登ってきたんだね。と、ビックリしていた。
順調に高度を落とし、13:35滝沢登山口無事帰着。
温泉小屋のバイトメンバーとの山歩きは、とても楽しい。こんなに好奇心が旺盛な人達は意外と少ない。あの花の名前は何?あの山は何?と、いちいち聞いてくれる人は私にとって貴重な存在だ。
休憩時間に湿原散歩へ行く時もそうだ。尾瀬ヶ原は平らで、とっても歩きやすい。それでも、のんびりゆっくり歩いて、1つ1つの花をじっくり観察して、興味深げに話してくれる。山歩きの喜びや感動を仲間と共有出来ることは、私にとって非常に幸せな事だ。
私は雪山が好きで、皆は雪山が初めてで、経験した山の数は違うのかもしれないが、何より私が求めているのはそんな価値観の合う仲間との楽しい山歩きである。
もし出来ることなら、これからも一緒に山へ行きたいなと思った。
素晴らしい1日だった。
【稜線から見えた山々について】
いくつかは歩いた事があり、そのどれもが印象深く、素晴らしい思い出です。
会津朝日岳
三岩岳
袖沢 御神楽沢