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雪山登山尾瀬・南会津

燧ヶ岳 残雪期 東北最高峰へ

尾瀬・南会津

2021年5月28日(金)

4:40 尾瀬温泉小屋 – 5:00 見晴 – 見晴新道 – 7:30 燧ヶ岳(柴安嵓) 8:10 – 8:30 爼嵓 – 長英新道 – 10:45 尾瀬沼ビジターセンター 11:45 – 14:15 見晴 14:30 – 15:00 尾瀬温泉小屋(合計時間 : 10h20m)

距離 : 20.8km 累計高度(+) : 1335m 累計高度(-) : 1,345m

燧ヶ岳は、至仏山と立ち並ぶ姿が印象的だ。燧ヶ岳は福島県の檜枝岐村、至仏山は群馬県のみなかみ町と片品村の境界に位置する山である。

しかし檜枝岐村の人にしてみれば、燧ヶ岳はどちらかというと会津駒ヶ岳と対になるイメージの方が強いようだ。燧ヶ岳を「檜枝岐の父」、会津駒ヶ岳を「檜枝岐の母」と呼んでいる。

私は今、尾瀬の山小屋でアルバイトをしている。今回、お休みをいただいたので、そんな檜枝岐の父、まだ行ったことのない燧ヶ岳へ登ってみることにした。

せっかく尾瀬ヶ原に滞在しているのだから、普段だとなかなか歩かないコース取りを考えてみた。

見晴新道から長英新道へ、燧ヶ岳を西から東へ横断するルート。

まだ残雪期の燧ヶ岳。核心は柴安嵓から俎嵓へ向かう際の急斜面だろう。

アイゼンやピッケルがあれば安心だが残念ながら両方とも持っていない。もし状態が悪ければ周回は諦めて見晴新道のピストンのみにすることにした。

結果的に無事に周回を達成することが出来た。雪の状態が良くてラッキーだった。

朝4:40、温泉小屋出発。

足元のサンリンソウやタテヤマリンドウはまだ花を閉じている。夜が明けたばかりの尾瀬ヶ原を1人歩く。小鳥のさえずりを聞きながら見晴へ。

昨晩作ってもらった朝弁当を全て平らげてからスタートしたが、まだ寝起きなので、ペースがあがらない。

右を向くと、至仏山が朝焼けに染まり、幻想的な色合いを帯びていた。

朝焼けに染まる至仏山

見晴分岐、尾瀬沼分岐を過ぎ、いよいよ見晴新道に入る。

登山道には雪溶け水が小川のように流れている。泥まみれ回避不能な悪路だと聞いている。

出発前に長靴を勧められたが、今回は通常の雪山ハイキング用の登山靴にスパッツ、カッパ(ズボン)を着用してきた。歩く距離が長いので、慣れない長靴だと疲れそうだったからだ。

なるべく靴を汚さないように右に左にと泥を避けながら進む。下手するとスネまで泥に沈むらしく覚悟していたのだが、終始そこまで沈むことはなかった。今日は歩きやすいコンディションだったのかもしれない。

次第に、朝弁当の巨大おにぎりがエネルギーに変わってきたのか、サクサクと歩けるようになってきた。やはり白米のパワーは偉大である。

標高1,580m付近で残雪が現れるが、すぐに消える。その後ちょこちょこと断続的に雪が現れた。

足元には数日前のトレース。非常に薄く消えかかっている。この道から登る人は意外と少ないのだろうか。

道が不明瞭な部分があり、赤テープを見失わないように注意を払った。

1〜2度ルートを外れたが軌道修正。

残雪に隠れた階段に注意

標高1,900mを超えるといよいよ雪が続くようになった。

朝一番、6時台の上、樹林帯で日陰なので雪は硬め。

シラビソの森

時にはやや急斜面をキックステップを効かせて登る。

それでも本来ドロドロであろう登山道がすっかり雪に覆われているお陰で歩きやすい。

標高2,000mを超えるとクマザサが現れた。

振り返ると木々の間に尾瀬ヶ原の展望。いよいよ高いところまで登ってきた。

上部トラバース道は不明瞭。積雪あり木々の背が低い。雪の重みでしなった木が、奥の道や赤テープを隠している。

ガッツリ雪の残った沢筋を渡ると、いよいよ柴安嵓は目前だ。

不明瞭なトラバース
雪渓をひと登り

直下の尾根に取り付く。部分的に残雪を踏んだが、7時台ですでに稜線の雪は緩んでいて歩きやすい。

そのうちに雪も消え、ハイマツと岩の尾根を詰めてゆく。

森林限界を過ぎてから風が強く寒かったのでジャケットを1枚羽織った。

7:30いよいよ柴安嵓の山頂へ。

目前には至仏山と、尾瀬ヶ原。

上越国境の山々は残念ながら雲に隠れてしまっていたが、時折平ヶ岳が姿を現した。

至仏山と尾瀬ヶ原と記念撮影
平ヶ岳、上越国境。越後三山は雲隠れ
見えているのはスズヶ峰?奥は朝日〜巻機の稜線だろうか
上州武尊山
赤城山の向こうに富士山
会津駒ヶ岳は雲の中

檜枝岐の母である会津駒ヶ岳はすっかりガスの中。風が吹いていて少し寒かったが30分ほど粘って展望を楽しんだ。

さていよいよ俎嵓へ向かう。ここからが核心だ。

とりあえず登山道らしき場所を歩く
核心部

見下ろすと、確かに壁だった。ラッキーなことに南側に灌木が出ていたのでどうにか下降できそうだ。灌木をつかんで3〜4mほどの壁をクライムダウン。足元にあるクラックの縁に、落っこちないよう注意しながら着地。

クラックより下は多少斜度が落ち着いてくれて、慎重に歩いて降りることが出来た。

クラック上部が急だった

時刻は8:30だが、すでに雪も緩んでいて降りやすい。適当な場所でシリセードに切り替え、一気に滑り降りる。核心部無事突破。

結果的にどうにかなったが、やっぱりピッケル・アイゼンはあったほうがベターな場所だった。たまたま手頃な灌木が出ていて助かったが、もし無ければ、私の実力では降りられなかっただろう。

無事に突破

装備さえあれば、問題なく行けるであろう場所だ。装備不足で怖い思いをしたり、直前で撤退とかなった場合はやはり悔しすぎる。

今回、小屋へ働きに行くにあたりピッケルとアイゼンは自宅に置いてきてしまった。これが普段の山行だったら、私は絶対持っていくと思う。今回は我ながら、らしくない行為だ。まぁ結果オーライだった。

ひと登りして俎嵓へ。相変わらず会津駒ヶ岳の展望は望めなかった。

柴安嵓と奥に至仏山
尾瀬沼と男体山

燧ヶ岳の展望はなんだか「地球」の表面を空から見下ろしているような気持ちになってくる。標高2,356m、俎嵓は2,346mだが、もっと高い場所にいるような錯覚。

燧ヶ岳は東北最高峰だ。東北の山々は全体的に標高が低いからだろうか。

この展望はおそらく燧ヶ岳特有のものだろう。その雄大なスケールを楽しむ。

小休止して長英新道へ。

柴安嵓と俎嵓

融雪が進んでいるのか、踏み抜きがとにかく多い。ひたすら薄いスノーブリッジを歩いている気分。

無雪期は見晴新道より歩きやすいらしいが、今日に限っては、長英新道の方が悪路だと感じた。

それでも、単独男性や、5人パーティーとすれ違ったので、やはり人気コースなのだろう。

下部まで降りると、ひたすらゆるやかな針葉樹の森が続く。

すっかり日が昇り明るい森の中

10:30に尾瀬沼の分岐に降り立った。

燧ヶ岳を眺める

せっかくなので尾瀬沼ビジターセンターへ寄り道。

展示を小一時間かけて眺めてた後、外のテラスで、これまた昨晩作ってもらった昼弁当を平らげ、帰路に着く。

尾瀬沼付近は針葉樹林帯が広がっている。ビジターセンターで覚えた「オオシラビソ」「コメツガ」「トウヒ」の木を眺めながら歩く。

オオシラビソ。枝を隠すように葉が重なっている
オオシラビソの裏。葉に顕著な2本の白線。枝には細かい毛。
コメツガ。葉が密集しておらず枝が見える
コメツガ。葉裏に2本の白線
トウヒ。葉が重なって枝を隠している。
トウヒの裏。特徴的なコブっぽい枝。

白砂峠を越えて、段小屋坂まで歩くと辺りはいつの間にやら広葉樹林に。明るいブナの森を歩く。同じ尾瀬なのに、植生がガラッと変わるので驚きだ。

見晴でものんびりコーヒーをすすり、14:00温泉小屋無事帰着。

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