日 時 2021年3月23日(火) 〜 24日(水)
山 域 下田川内
目 的 雪山登山
行 程
2021年3月23日(火)
5:40 除雪終了点 – 6:05 悪場峠 – 10:10 木六山 – 12:50 七郎平山 – 14:25 銀次郎山 – 15:20 CO970m (合計時間 : 9h40m)
2021年3月24日(水)
5:30 CO970m – 6:35 銀太郎山 – 8:40 五剣谷岳 – 9:25 CO1,095m(引き返し) – 10:50 銀太郎山 – 11:25 CO970m(テント撤収) 12:00 – 12:35 銀次郎山 – 13:35 七郎平山 – 15:15 木六山 – 17:00 悪場峠 – 17:20 除雪終了点 (合計時間 : 11h50m)
人 数 単独
天 気 23日(火)朝から風雪。時折晴れ間あり。午後より次第に回復する。24日(水)終日晴れ。
雪 の 状 態
初日、標高800m近辺までは登山道の上に新雪。それ以上では融解凍結層の上に新雪。
湿り雪で団子になりやすい。
2日目。ザラメ雪、積雪少ない箇所では全て溶けて登山道露出。
G P S ロ グ
距離 : 23.1km 累計高度(+) : 2,092m 累計高度(-) : 2,091m
1泊2日で、川内山塊の名峰、五剣谷岳(1,188m)へ登ってきた。
本来は2泊3日で青里岳、矢筈岳へと足を伸ばす予定だったが、予定よりも進めず結果的に五剣谷岳の往復のみとなった。
今回は私にとって初めての「単独雪山テント泊」だ。
内心ドキドキしたが、無事に行って帰ってこれて良かった。
5:40、悪場峠(あくばとうげ)少し手前の除雪終了点付近に駐車して登山開始。
街では雨だったが標高を上げたら雪に変わり、出発する頃には止んでくれた。
今日は悪天予報だが、明日は高気圧に覆われ好天になる見込みだ。
ワカンを履いて、夜の明けた道路を出発する。
ちょうど川内山塊の端っこ、木六山が見えた。
景色を見た途端になんだかウルっときてしまった。
ずっと行きたかった山域を、いよいよ歩くことが出来るなんて感動。
いよいよ水無平へと続く尾根へ取り付く。
銀太郎山までは登山道が伸びているらしいが、新雪のためどこにあるのかよく分からない。
新雪のすぐ下には落ち葉や枝、地面で結構歩きづらい。
降雪前は完全に雪は溶けていたのだろう。ワカンが邪魔なので早々に外す。
水無平へは、急斜面をトラバースするように登山道が続いているが、途中で見失ってしまった。
行ったり来たりして探したが、どうにも見つからない。結局、沢を下降して水無平へと降りた。
帰りは天気が良く登山道が完全に露出していたので、迷うことなくスムーズに進めた。
沢の向こうにちゃんとトラバース道が続いていたようだ。ただ、分かりにくい。。。
やはり自分の観察能力がまだ未熟である証拠だ。どうにも私は他の山仲間たちと比べるとこういうのを見つけるのが苦手だ。
水無平を歩いていると、次第に天気が悪化してきて雪模様に。
水無平から木六山へと上がる尾根の取り付きでも「藪のない登山道っぽいところ」の検討をつけながら歩いてゆくが、そのうちに藪に阻まれるようになった。
仕方ないので藪漕ぎで直登して、上へ上へと上がっていく。
水無平へ向かう時もそうだったが、登山道を探して行ったり来たりが多くて、ここに至るまでかなり時間がかかってしまった。
事前に登山道の場所を細かくチェックして下調べを完璧におくか、そうでなければ登山道を完全に無視して藪だろうがなんだろうが方角があっているのなら迷わず突き進めば良かった。
今回は、どうにも中途半端でうろうろ、優柔不断だった・・・。
稜線に到着すると、傾斜も緩くなり、道も分かりやすい。
10:10木六山到着。
ここまで4時間も費やしてしまった。
一般的には2時間程度で歩ける場所だ。せめて3時間で到達したかった。
木六山では降雪。相変わらずの悪天。着込んでいたカッパは早速びしょ濡れになってしまった。
こんな天気だとついやる気を削がれてしまうが、明日は好天予報。明日のために今日は頑張らなくては。
薄く積もった新雪が歩きづらい。
湿雪はすぐに団子となり歩行を妨げる。登山道に堆積した落ち葉が滑りやすくて気が抜けない。
たまらずにアイゼンを装着したが、ひたすら捗らない歩行だった。
しばらく快適に進むが、七郎平山の直下で再びルーファイ迷いポイント。
尾根を辿っていくと、程なくして藪のボサい痩せ尾根に突き当たった。
巻道を探してみると、東側にある沢地形を横断すれば歩きやすそうだ。
しかし、沢筋にはいくつかのクラックが見え隠れしている。
上部の雪も地面から浮いているが、そのくせ新雪で状況がよく分からないのが気味が悪い。
クラック斜面には積極的に入りたくないなぁと思って、再び痩せ尾根の様子を見に行くが、こちらはこちらで痩せすぎて際どいし、やっぱり通過するのは大変そう。
痩せ尾根か?クラック斜面か?でまた悩み、結局はクラック斜面の横断をすることにした。時刻は12:30、北東向きの斜面をトラバースする。
一歩一歩慎重にかつ迅速に、進行方向の雪を確認しながら進んでゆく。
ヒヤヒヤしたが、無事にトラバース完了、痩せ尾根を巻いて尾根に復帰した。
ここだって、もし何度か歩きに来ていて、例えば春の雪のつき具合を知っていれば、「まだ安定してるから大丈夫だな」とか判断することが出来たかもしれない。
歩く直前で不安を感じ、安全性が正しくイメージ出来なかった自分は、経験不足だ。
そんな私はやっぱりどんな時期でも、無難に歩ける最も安全なルートを取るのが良いかもしれない。
時間がかかってしまうが、私にとってはそれが一番安心出来る。
とはいえ、ここでも時間がかかりすぎてしまった。スピードアップをしなければ・・・。
第二関門を無事に突破して、ようやく七郎平山へ。山頂がどこだか分からなかったが、今までの悪路(?)と比べると、とても穏やかで、久々の安寧の時を得た気分だ。ちょうど降雪が止み、日が差してきた。
時間は既に昼をまわっている。
この時点で当初の予定だった矢筈は諦めるしかない。
まだまだ五剣谷岳すら果てしなく遠く見える。
とりあえず今日は行けるところまで行こう。
銀次郎山は、七郎平山から見えた手前のピークに惑わされる。
やっとこさ山頂へ着いたと思ったら、まだ300m程先だった。
山頂直下はカリカリのもはや壁。ハードザラメ系の硬い雪で、試しに蹴り込んでみたがアイゼンが爪先しかささらない・・・。
内心、マジですか?な感じだった。
もし滑落でもしたら大底川へシュートしてしまう。
ウィペットを持って歩いていたが、ピッケルも取り出した。
(以前の会津朝日岳でストックが1本折れてしまったので代用としてことあるごとにウィペットを持ち歩いている。)
壁of壁なところは、ピッケルで懇切丁寧に足場を作りながら登った。
もし降りで詰んだらひとたまりもないので念のための保険だ。
(ちなみに帰る頃には好天・昇温で雪が緩み、注意しながら問題なく降りることが出来た。)
壁を突破した後もしばらく四足歩行でよじ登り、ようやく銀次郎山の山頂に到着した。
まだまだ、銀太郎山も越えなければいけない。五剣谷岳は遥か遠く、青里や矢筈はもっと遠い。
時刻は14:25、そろそろ行動終了の時が迫ってきた。
銀次郎直下は雪庇を避けての片斜面を進む。カリカリのハードザラメの上に、新雪が乗っていて、さらに新雪は湿り気味ですぐに団子化する。気をつけて歩いていても、アイゼンの歯が噛まずにズリっと滑る。ストレスな歩きだった。
ようやく斜度が緩み、しばらく快適に進む。
テント場を探しながら歩いていると、CO970m地点、風の影響もなく雪庇やクラックの危険性もない好適地が現れた。
時刻は15:20、ここを幕営地とすることにした。
以前、女子会を開催した「高松山」ではブロックを積んだはいいが、小さなブロックは全て風に飛ばされてしまった。
転がったブロックはテントと雪壁の間にどんどん溜り、逆にテントを圧迫、テントポールが歪曲してしまうという事態に陥った。
強風時、中途半端に小さいブロックでは意味が無く、むしろ逆効果であると学んだので、今回は経験を生かして真面目にブロックを積んでみることにした。
私の所有するダンロップテントの幅+αの面積の雪を切り出し、周りに積み上げると、もう疲れて放心状態。まだ積みが足りないなと、もう一度元気を出して、2段目を切り出す。ブロックはなるべく大きくしたかったのだが、ある大きさを越えると、途端に持てなくなる。私の背筋力が悲鳴を上げるギリギリのサイズを大量生産した。
1時間かけて、やっとこさ完成。その場でしゃがむと、弱風は無風になった。
夜はそれほど風は無く、音もしなかったので、ブロックはあっても無くてもどっちでも良いような感じだった。
よって頑張って積み上げたブロック壁がどれほどの効果を発揮していたのかは分からなかった。
(超爆風を完全に遮断していた可能性もゼロではない。)
翌朝5:30に出発。
雪庇・クラックが怖いので、夜が明けてからの出発とした。それでもこの時点でだいぶ明るかったので、もう少し早く出発しても良かったかもしれない。
日の出に備えて、粟ケ岳が染まってゆく。
その姿を見た途端、昨日の木六山を見た時と同じようにウルっと来てしまった。
川内の山を歩けている今がとっても嬉しい。
やがて、太陽が顔を出した。
照らされる山々を眺めながら、銀太郎山へ向かう。
銀太郎山も雪庇が発達しており、ただの片斜面と化していた。
適当な場所を山頂として先へ進む。
初見で雷鳥?!と思った、鳥の足跡。
雷鳥生息地の最北限は頸城らしいので、川内に雷鳥はいない。(というか、もし暮らしてたら夏は暑すぎるか。)
鳴き声が時折聞こえてきたし、ヤマドリだろうか。
尾根通しは藪がうるさく細尾根の急登に見えたので、西側から巻くようにして五剣谷岳の山頂を目指す。
疎林の斜面が広がっており、ここだけなら山スキーで滑りたいと思った。
疎林帯からは飯豊連峰や二王子岳、粟ケ岳などの展望が現れ、何度も振り返りながら登ってゆく。
ここら辺の雪はスネ程のプチラッセル。
ちょっとくらい沈んでも良いから、こうやって何も考えずに歩ける雪の方がよっぽど楽しい。
昨日や今朝の雪はひたすらストレスを感じていた。
五剣谷岳の並ぶ稜線に詰め上げると、南側の展望、西側の展望が広がる。
その絶景に、思わず「わぁっ」と歓声をあげた。
写真をパシャパシャ撮りたい気持ちを抑えて、まずは五剣谷岳の山頂を目指す。
藪を漕ぐと、8:40いよいよ五剣谷岳の山頂に到着した。
素晴らしい大展望。
続く稜線に青里岳、矢筈岳が見える。青里の向こうには守門岳、巻機山、越後駒ヶ岳、中ノ岳。矢筈の向かって右側には燧ヶ岳。
目前の山が割岩山、右奥に矢筈岳、中心部に駒形山、左には魚止山。
矢筈岳の奥には冬に何度か足を運んだ南会津が。
三岩岳のなだらかな斜面や会津朝日岳の楢戸沢源頭部の険しい山容は遠目からでも分かりやすい。
向かって右から燧ヶ岳、高倉山、会津駒ヶ岳、三岩岳。三岩岳の右前に会津朝日岳。会津駒ヶ岳の前に丸山岳が見える。
顕著なピークは御神楽岳、その右側に日尊の倉山、貉ヶ森山、雲河曽根山と続いている。
御神楽岳と日尊の倉の間には博士山が見える。
飯豊の手前に日本平山、右端に鍋倉山。
日本平山の左手前が中杉山、その右の黒いピークが奈羅無登山(ならんと山)。
粟ケ岳、權ノ神岳、越後白山。奥に弥彦山と角田山が見える。權ノ神岳の手前に灰ヶ岳さらに右側に毛石山が見える。
360度の素晴らしい大大大展望を目に焼き付ける。
憧れの五剣谷岳。素晴らしい山だ。来ることができて本当に良かった。
時刻は9時前。しばし悩み、タイムリミットをお昼と定めて青里岳まで足を伸ばしてみることにした。
五剣谷岳から500m程進むと、これまた360度の展望に囲まれた素晴らしい場所が現れた。
今度歩くときは是非ともこの場所で幕営したい。
しばらく進むが、やはり青里岳は遠い。
時刻は9時半になろうとしている。このままでは私の定めた時間までに山頂へ到着出来ない気がしてきた。
立ち止まり、どうしようか悩んでいたら、なんと後ろから1人の単独男性がやってきた。
ヤマップもやっているZXさんだった。
話を聞くと、日帰りで青里岳を目指すそうだ。めちゃくちゃ速い。
まさか人に会うと思わなかったのでそれもびっくり。
手短にお話をして、青里岳へと向かうその後ろ姿を見送った。
私のテントが綺麗にブロック積んであるねと言われたのが嬉しかった。
しばし悩み、私は青里岳は諦めることにした。
昨日1日でだいぶ気疲れしてしまったし、五剣谷岳に登頂出来ただけで充分お腹一杯だ。
トレースを辿り元来た道を引き返す。
ルーファイをしなくて良い分、行きよりもサクサクと帰ることができた。
雪はすっかり緩み、ザラメ雪。
1日だけお世話になった幕営地を撤収。12:00荷物をまとめて引き返す。
地形図を見る限り、往路もなかなかのアップダウンが想像できる。
行きで10時間近くかかってしまったので、帰りはヘッデン下山を覚悟した方が良さそうだ・・・。
太陽のパワーとはすごいものだ。
前日はあれほど歩きづらかった新雪はすっかり溶けて、そこかしこで登山道が露出していた。
雪が良くなったお陰で思っていたよりも調子良く進む。
登りでは怖かった「壁」も降りやすくなった。(それでも後ろ向きで慎重に降りた。)
やたら距離が長く感じてふくらはぎが痛くなった。
それでも雪のコンディション次第でここまで歩きやすさが変わるなんて改めて驚きだ。
同じ場所なのにまるで違う場所のようだ。
七郎平山付近。昨日はスネくらいはあった雪もすっかりザラメ化して3cmくらいの厚みになっていた。凄まじい融解スピードだ。
トラバース道の登山道も相変わらずあちこち露出している。
昨日歩きづらかった場所は、改めて確認したら登山道より少し上のただの斜面を歩いていたようだ。
草とか掴んで慎重に歩いてちょっと大変だったのだが、なんともアホらしい。
少し下を歩ければ楽だったのに、全然気づけなかった・・・。(泣)
15:15木六山到着。ここもまたすっかり雪が溶けていた。
昨日とまるで違う景色に驚いた。
悪場峠へと至るトラバース道で後ろを振り返る。ちょうどこの場所で登山道が見つけられなくて、沢地形を降った。奥に沢を横断してトラバース道は続いていたが、気づくことができなかった。
昨日は見つけられなかったカタクリの花がチラチラと可愛らしく咲いていた。
快適に進んで17:20無事に駐車地点へ帰着。
初の単独雪山テント泊、青里や矢筈には届かなかったものの、憧れの五剣谷岳へ行くことができて良かった。
今回はやっぱり初日にかなり時間がかかってしまったのが悔やまれる。
まだまだ自分の技術や判断力の未熟さを痛感した。
そしてどんな雪質でもスムーズに歩けるようにレベルアップしていきたい。
それにしても五剣谷岳から眺めた景色は素晴らしかった。
私が川内山塊の存在を知ったのはつい昨年の5月の話だ。
あの頃はまるで分からなかった山の名前も、今ではすっかり分かるようになってきた。
私が川内山塊の魅力を知ることが出来たのは、いつも一緒に歩いてくれる山仲間達のおかげだ。
ついに歩くことの出来た川内山塊はまだまだ奥深く、一層興味がわいてしまった。
春夏秋冬、複雑な川内を自由に歩き回るのは容易なことではないが、少しずつ歩けるようになっていきたい。