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雪山登山南アルプス

年末年始 伝付峠を越えて悪沢岳へ

雪山登山

日 時 2020年12月26日(土)〜29日(火)

山 域 南アルプス

目 的 雪山ピークハント

行 程

12月26日(土)一日目
6:40広河原発電所ー9:10保利沢小屋ー12:55伝付峠ー展望台ー13:20伝付峠ー15:05二軒小屋

12月27日(日)二日目
2:30二軒小屋ー8:50マンノー沢頭ー10:00標高2,560m地点(テント等デポ)ー12:00千枚岳ー14:10悪沢岳ー14:55千枚岳ー17:00標高2,560m地点

12月28日(月)三日目
8:55標高2,560m地点ー9:30マンノー沢頭ー13:50二軒小屋

12月29日(日)
3:05二軒小屋ー6:20伝付峠ー展望台ー7:15伝付峠ー10:10保利沢小屋ー12:10広河原発電所

人 数 2人

天 気 初日:晴れ 2日目:晴れのち曇り 3日目:午前中降雪、午後晴れ 4日目:午前中晴れ

2020年12月 過去の天気図 気象庁

備 考 食事は全てカレーメシ

年末年始の長期休暇。
山仲間のKさんと南アルプスの悪沢岳へ登ってきた。

思い出の伝付峠

東俣林道が徒歩でも通行止めらしいので、伝付峠からのアプローチを計画した。

伝付峠は、私が初めて1人でテント泊縦走をした際に通過した道であり、その際に色々と苦い経験をした思い出の地である。

早川町役場の公式サイトを確認すると、以前登山道状況が×となっていたが久々に確認したところ△マークになっていた。
公式としても整備されたようで、歩けない訳ではなさそうだ。

過去にこんな記事を書いて、読んでくださる方々をビビらせてしまっていたようだが、今回改めて歩いたことで分かったことが一つ。
結局のところ私が未熟なだけでした。(恥ずかしすぎて自分のブログを読み返す気にもならない。)

今回、因縁(?)の伝付峠を克服出来たことも良かったと思う。

1日目:伝付峠越え

初日の夜明け前、車で訪れた私たちは登山口駐車場を目指す。
伝付峠入口バス停から広河原発電所にかけて林道が伸びているが、今は工事をしているため車での進入は不可。本来は歩かなければいけない区間だ。
しかし、いざ行ってみると様子が違う。普通に入れそうだ。
以前はあったはずのバリケードが見当たらない。
そのまま進み、結局広河原発電所近くまで車で入ることができた。
※下山時によく確認してみると、どうやら現場が年末年始休暇に入ったことが影響していたようだ。入口の立入禁止看板が一時的に全て取り払われていたようだ。
ここを歩かずに済み約1時間半の林道歩きを短縮することが出来た。

広河原発電所近くで車を停め、準備。
6:40出発。
伝付峠は赤テープ豊富で迷うことは無い。

私が以前間違えて登ったガレ沢(下山時撮影)

Kさんが、2年前の私がどこで間違えたのか気になっていたので教えてあげた。
やばくね?!と驚くKさん。(そりゃそうだ。)
普通に考えればありえないルートだが、道迷いとは思いも寄らない時に起こるものなのだ・・・。

以前、伝付峠を通行止めにしていた崩落地は整備されていた。
それでも怖い場所だ。
足場は悪く、油断するとカラカラと砂利が落ちていく。落石注意。

尾根を乗越し、沢沿いをひたすらトラバースしていく。

渡渉点には立派な橋
サーベルタイガー

暮れの伝付峠は積雪こそ無いものの、つららや小さな氷瀑が見られ、冬らしさを感じさせられる。

程なくして保利沢小屋へ。

このあと、保利沢小屋から堰堤付近まではやや道が分かりづらかった。
登山道と巡視路、2つの道が錯綜しているのだろう。

水量は少ない

水量は少なく、私が以前渡渉したポイントも問題なく渡れた。

無事に伝付峠の取り付きに到着。
ここからは葛折りの気持ちの良い森林ハイクが続く。

のんびりと小休止。

伝付峠の近くにある水場。水線自体は凍りついていたが、源頭部分はコンコンと水が湧き出していた。

12:55伝付峠到着。

何者かに噛み砕かれた標識

以前、ここで「展望台」の標識を見つけて、展望台まで歩いた記憶が蘇った。
しかし当時の標識が見当たらない。目前には一本の木の杭。
両サイドにバリバリと噛み砕かれたような痕跡・・・。
なんとなく嫌な予感。

Kさんに、「展望台が近いから行ってみようよ。」と声をかける。
北側に歩くと、再びバリバリに噛み砕かれた残骸が。
明かにこれは標識だろう。おかしいな。以前はちゃんと読めたはずなのに。
本当に展望台はあるのかと怪しむKさんを連れていき、いよいよ伝付峠の展望台へ。

伝付峠展望台より

目前には、目的の悪沢岳が。その隣には赤石岳が見えている。
Kさんと雪の少なさに驚いた。笑

Kさんが、良い感じの写真を何枚も撮ってくれる。
私は、センス無い上に、カメラの設定もロクにかえられないので、イマイチな写真しか撮れない。(Kさんをうまく撮れないので申し訳ない・・・。)

しばらく展望を楽しみ、いよいよ二軒小屋へ降る。

綺麗な分岐看板

分岐には綺麗な標識。と、よーく見ると噛み跡が。
これは誰が犯人?

約2年前。2018年10月6日の写真

過去ブログに、同じ看板の写真があった。
間違いなく噛み跡だ。この2年の間に被害にあったようだ。

伝付峠から二軒小屋までは途中、やや悪いトラバースがあるものの概ね歩き易い登山道が続く。

そして、こちらも被害・・・。
どうしても目についてしまう。
こんなに新しい看板なのに、見るも無残で可哀想だ。

15:05二軒小屋到着。
付近はリニア工事の影響で、小さな「集落」となっていた。

私たちが歩いていると、ブォーと車の音。
工事関係者の方達が今日も仕事をしていた。

誰もいない二軒の芝生広場に幕営。
カレーメシをたいらげて就寝。

2日目:二軒小屋から悪沢岳

2:30二軒小屋出発。
まだ暗い中、当初の予定である千枚小屋を目指す。

尾根の取り付きはなかなか悪い。

鉄パイプの梯子を登ると、目前の斜面に古びた木の橋。
え?本当にこれを渡るの?頼りない木で作られた橋は、外傾しており、ツルッといけば滑落しそうだ。ぼろいロープも太腿くらいに緩く垂れ下がっており、なんの気休めにもならない。
私が、うじうじしていると、Kさんが先に渡ってくれた。
続いて私も渡るが、やっぱ怖い!!

真っ暗で、ライトの明かりに照らされている範囲以外がまるで見えないのも一層緊張感を引き立てる。

その後も、浮石の多い急傾斜の尾根を葛折りでこなしていき、南から伸びる登山道と合流するあたりでやっと落ち着くことができた。

その後はひたすら足を進めていく。

日の光が無いと、なんとなく気持ちも明るくならない。
私もKさんも、黙々と歩みを進めていく。

やがて、富士山の隣から日の出。

崩落地の向こうに悪沢岳と赤石岳が見えた。

マンノー沢頭

積雪もさほどなく、ラッセルらしいラッセルもなく進んでいく。
しかし荷物は重いので、それほどペースは上がらない。
今日は調子の悪そうなKさん。

千枚岳と悪沢岳はまだ遠い。

今日は予報通り天気が良く、高曇りしているものの青空が広がっている。
当初の予定では今日は千枚小屋泊、悪天予報の明日は1日停滞。その翌日に悪沢岳へアタックして二軒小屋へ降るつもりだった。

しかし、思いの外積雪が少ない。
標高2,560m付近にてKさんが「テントとかデポして悪沢岳アタックしない?」と提案してきた。
私自身も本日中にピークハントする可能性を考えていたので、即賛成した。

そうと決まれば、早速荷物のデポに取り掛かる。
不要荷物は広げたテントの中に仕舞い、荷を軽くする。

準備を済ませて10時、出発。

笊ヶ岳
塩見岳、蝙蝠岳、間ノ岳

程なくして、森林限界を超える。北の展望には南アルプス北部の山々が見えた。

千枚岳への登りは、夏道を外れて東側の尾根を直登。

背後には富士山。

ハイマツの空中歩行。

12:00千枚岳到着。

休憩もそこそこに、悪沢岳へ向かう。
Kさんが高山病になってしまったようですこぶる調子が悪い。
あんまり厳しいようだったら途中で引き返そうと伝えた。

背後の富士山が美しい。

千枚岳から悪沢岳は意外と距離がある。

稜線に雪はほとんどなく、季節はまるで晩秋のようだ。
吹き溜りには膝程度の積雪。

13:25丸山到着。
Kさんの顔つきがまさにグロッキーそのもの。

先ほどまで晴れていた空は再び高曇りに。

14:10いよいよ悪沢岳到着。

Kさん、赤石岳をバックに
塩見岳をバックに

いつもならお楽しみの山座同定タイムが始まるが、今日は時間も無いのでそうそうに引き返すことにする。

帰り際、眺めた富士山が見事だった。(雪は無い。笑)

17:00、太陽が完全に沈む前標高2,560m地点まで無事下山。

雪を整地する体力も残っていなく、最短で幕営、夕食をとり就寝。

3日目:二軒小屋へ

3日目は午前中は低気圧接近に伴う悪天の予報。午後からは天候が回復するようだ。
前日の夜打ち合わせして、降雪なら二軒まで下山。降雨になった時点でその場で停滞することにした。
朝7時頃に起床。
外をちらりと覗くと降雪。
初見で「うわ〜・・・。」と思ったが、意外と寒くない。かといって雪がベチャベチャな訳でもなく。積雪も深くないようだ。
十分二軒まで下れそうだ。

テントをたたみ、9時前に出発。

ワカン装着。

雪の舞う中、ゆったりと高度を落としていく。

登りでは薄らと積雪していた箇所もそれなりに雪がつき歩きやすくなった。
まだ高山病が治らないKさんは辛そうだ。

13時を過ぎると、頭上にはすっかり青空が広がった。

尾根の取り付き近くもすっかり雪景色に。
暗闇の中登った時は怖くて、つい帰りが心配になってしまったが・・・、太陽の下歩いてみればなんてことはない登山道だった。(しかし浮石が多いのは事実だった。)

鉄パイプの梯子の先にあrる木の橋

外傾した木の橋はヤバそうな予感がしたので、雪のついた斜面を適当に降って巻く。振り返って確認すると、やはりヤバそう。使わずに済んで良かった。

14時、二軒小屋到着。
積雪の無い芝生上に幕営。

クリスマスツリー

晴れていたので、日が沈むまで装備を天日干し。

4日目:伝付峠を越えて下山

午前3時過ぎ、テントを撤収して二軒小屋出発。

伝付峠への登り。積雪は少なくツボ足で快適に進む。
時折、クマの足跡があった。
「登山道」は人間だけでなく、森の住人にとっても使いやすく便利な道なのだ。

6:20伝付峠到着。
荷物をデポし、展望台へ寄り道。

ちょうど空が赤く染まり始めた。

悪沢岳、赤石岳、聖岳、上河内岳。

展望台には堂々と並ぶ南アルプスの山。
向かって右から悪沢岳、赤石岳、聖岳、上河内岳。

南アルプスの山々と私。

やがて日が昇り、次第に山々が赤く染まっていく。
この瞬間、この時間がやっぱり私は大好きだ。

富士山とKさん。

富士山の横にも太陽が昇ってきた。

極寒の中、30分以上展望台でうろうろしていたが、いよいよ指先の感覚もなくなり、我慢するのが辛くなってくる。
赤く染まった山々を拝んだ後は、飛ぶように伝付峠へ引き返す。
荷物を背負い、いよいよ南アルプスの山々に別れを告げる。

7:15伝付峠出発。

穏やかな晴れ空の下、快適に歩く。
午後から再び天候は崩れる予報だ。冬の天気は変わりやすくて怖い。
Kさんの体調もだいぶ戻ってきたようで良かった。

峠を降り切っても、雪景色は続く。
フィックスロープを掘り起こし、慎重に降ってゆく。

沢沿いの橋にもたんまり積雪。
ここのセクションは今回の山行で最も悪かったかもしれない。
落ち葉の上に乗った積雪。踏みつけると固まり、足の裏にくっつく。
途端にフリクションが効かなくなり、ツルッといきそうだ。
慎重に慎重を重ね、無事に突破。

河原の飛び石も、地味に怖い。

トラバースも怖い。

雪付きの伝付峠はなかなか悪く、神経をすり減らされる。
最後の最後まで気を抜くことは出来ない。

崩落地(馬の背)は雪無し。ここは逆に雪があったほうが歩きやすかったかもしれない。岩が脆く、落石のリスクが極めて高い。私が完全に降りきってからKさんも降り始める。
登りよりも降りの方が怖い。無事に突破。

12:10、広河原発電所。
自分たちの車が見えてきた。見慣れたその姿にホッと一安心。
最後の最後まで本当に気の抜けない山歩きだった。

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