日 時 2021年4月20日(火)
山 域 下田・川内
目 的 残雪期登山
人 数 単独
天 気 晴れ
行 程
2021年4月20日(火)
4:50 粟ヶ岳県民休養地(加茂水源地園地) – 5:30 展望台 – 6:55 小俣登山道渡渉点 – 9:20 馬の背 – 9:50 粟ヶ岳 10:25 – 11:45 權ノ神岳 – 13:05 橋立 – 14:35 粟ヶ岳県民休養地 (合計時間 : 9h45m)
地図データ
距離 : 15.5km 累計高度(+) : 1,712m 累計高度(-) : 1,712m
雪 の 状 態
下部登山道積雪無し (時折残雪あり)。CO900m付近から雪が続くようになる。月曜日の降雪が数センチ積もっていたが全てザラメ化していた。
下田・川内山塊には1,200m級の峰が3つ存在する。
矢筈岳(1,257.5m)、青里岳(1,215.5m)、そして粟ヶ岳(1,292.7m)。
山塊の中で最も標高が高く、どっしりと聳える粟ヶ岳は、まさに盟主ともいえる存在。
周辺の山々から何度となくその山容を眺めていたが、今回ついに登ることが出来た。
どうせ登るなら、いつも眺めていた粟ケ岳〜權ノ神岳の稜線を歩きたい。
粟ケ岳には山と高原地図が存在しないので、インターネットで記録を調べてその稜線をうまく歩けるルートを探した。
決めたのが小俣登山道〜新ヶ沢登山道の周回。
起点となる「粟ケ岳県民休養地」から小俣登山道へ行くには尾根を一つ越えなくてはならない。
労力のかかるルートだが、それでも見所である粟ケ岳の「馬の背」を絡めつつ、憧れの稜線歩きを経て美しく周回出来るルートに魅力を感じた。
距離が長いので、万が一時間切れとなった場合は中央登山道ルートから下山することとした。
時間にゆとりを持つ為に夜明け頃に出発。
まずは粟ケ岳中央登山道へ向かう。
新緑が始まっており、朝のすっきりとした空気の中、清々しい黄緑の木々に癒されながら登ってゆく。
やがて、尾根上に合流。
粟ケ岳の西面はだいぶ雪が溶けてしまっているが、守門岳の北面はまだまだ白くてスキーが楽しめそうに見える。
せっかく登った尾根だが、少し先にある分岐看板から下降に取り掛かる。
眩しい広葉樹の森から、再び針葉樹の鬱蒼とした森の中へ。
そのうちに道は林道らしくなり、ようやく小俣登山道のスタート地点に立つ。
しばらくは沢の右岸を歩いてゆく。
新潟の沢沿いの登山道はやはり悪いところが多い気がする。
泥で滑りやすく、慎重に歩いた。
下部は轟々と唸りを上げて水流が流れてゆく。
磨かれたゴルジュ、見上げると、草の生えたボロい側壁。
昨年の沢登りにも似たような景色があったことを思い出す。
無性に沢登りがやりたくなってきた。
程なくして、小俣川の渡渉点。
手ごろな岩が無くて、飛び石は不可能に見える。
仕方ないので靴を脱いで渡渉準備。
新潟の岳人はこの時期は「ピン長」で登山をするらしい。
渡渉も長靴のままバシャバシャと渡ってしまうので何の問題も無いそうな。
裸足で岩の上に立つと、早速じわじわと冷えてくる。
水の中を歩くのを非常に躊躇っていたが、意を決して横断。
一瞬で足は冷え、みるみる感覚がなくなってゆく。
もうこれ以上はキツいというところで対岸へ渡ることができた。
登山靴を履いたら、再び体温が戻ってきた。
うーん、長靴が羨ましいなぁ。しかし長靴は嵩張るから買ったところで置き場所に困るんだよな。
必死の渡渉を終えて、ようやくのんびりと尾根歩きが出来そうだ。
新緑の混じる尾根に白い模様が点在している。
正体はこの花。
この時期に咲く白い花はコブシかタムシバ。両者の違いは花の根元に一枚葉があるかどうかで見分けるそうだ。これらは葉が無いのでタムシバだろう。
CO600m辺りから新緑は姿を潜め、木々は再び冬の姿に。
標高900m付近から雪が繋がり始めた。
「馬の背」にも雪がついている。
雪は緩んで歩きやすいので、ツボ足のまま進んでゆく。
おそらく今日のトレースが1つあったのだ。、山頂直下を歩いている時に1人の登山者とすれ違った。頭から膝まではお洒落な山ボーイだったのだが、足元は長靴だったので新潟の岳人だろう。
9:50粟ケ岳山頂に到着。
山頂からは下田・川内の山々が大きく広がっていた。
気になっていた一本岳を眺める。
先月末、五剣谷岳へ登った時は、こちらの粟ケ岳〜一本岳〜白根山の周回とどちらを歩こうかギリギリまで迷っていた。
今なら一本岳の急斜面の登下降は出来そうな雰囲気だが、あの時はおそらく藪は全て埋まっていただろうし、降雨後で雪がカリカリだったと思う。
行っていたら苦労したかもしれない。行かなくて良かった・・・。
しかし、いつかは歩きたいルート。しっかりと確認しておく。
展望は素晴らしいが、やはり西面の雪はだいぶ溶けている。
残雪期らしい春霞の眺望。
下田の山々も見える。全体的に標高が似たり寄ったりで霞んでいると分かりづらいが、毛無山は比較的分かりやすいのではないか。中心より少し左、山頂部が黒い山だ。
中山尾根に詰めあがる「八匹沢スラブ」はひときわ目をひいた。
山仲間のKさんが夏に遡行した場所だ。こんなに目立つにも関わらず、ここ数年の遡行記録は皆無だったようだ。
(川内山塊 杉川 八匹沢 知られざる大スラブへ – 中澤慧 Youtube)
八匹沢スラブの左手前の側壁も目を惹かれるようなスラブ群。仙見川である。
四季を繰り返す中で、降雪・雪崩のたびに岩は削られ、長い年月を経てこのようなスラブが形成されるという。
今まさに、そこかしこに見られる「雪」が川内の険しくも美しい自然を造り出している正体なのだ。
改めて、自然のパワーというのはすごいと思った。
しばし景色を堪能し、粟ケ岳北峰へと向かう。
1人の登山者とすれ違った。
やがて權ノ神岳との分岐へ。
ここから先はノートレースで誰も歩いていないようだ。
時間もあったので予定通り進むことにした。
急登箇所は登山道が大方歩けたので、慎重に問題なく突破することができた。
この稜線も雪が悪いと難儀しそうな場所だ。
時折雪の上をキックステップでよじ登ってゆく。
山頂直下は落ち葉の上に新雪が数センチ積もっている状態。
やけに急登だし、3歩登っては2歩ずり下がる、というような捗らない登りだった。
遠目から望む權ノ神岳はなかなか目立った山容をしていたが、実際の山頂はなんだか分岐みたいなピークだった。
ようやく全てのピークを歩き終え、いよいよ下山に取り掛かる。
続く尾根道は、しばらく雪つきが良かった。時折登山道を歩きつつも雪をザクザクと踏みながら順調に降ってゆく。
そのうちに、呼吸が出来なくて下降が捗らなくなる。
息切れしている訳ではないが、深呼吸が出来なくなる時がある。息が普段の半分までしか吸えないというか。たまーにあるのだが、地味に面倒だ。
標高600mなのに酸素が薄いのか?行動食も食べているつもりだが、なんだろうこの現象は。
下山した後もしばらく続いていたが、翌日には治ってくれた。
13:05橋立到着。
距離も長く、次第に疲れが溜まってゆく。
森の中を、ただ黙々と、ついつい地面を見つめながら歩いてしまう。
ふと何か気配を感じて右側を向いたら、なんとそこには今日一番、輝く新緑が広がっていた。
つい疲れて地面を見つめて歩いてしまった。消化試合のように、ただ登山道を歩いているだけだったが、ふと横を向いたら素晴らしい景色が広がっていた。
そうだよなぁ。私としたことが、うっかり山の魅力をスルーしてしまうところだった。山に「ちゃんと周りを見て」と言われたような気がした。
山に引き止められて、しばし休憩を挟む。
ぼんやりと新緑を眺める。よく観察していると、新緑は様々な種類の草木が創り出していることに気づかされる。
何も、「ブナ」だけではないのだ。山には様々な生命が共存している。
目も覚めるような美しい緑の葉っぱたち。
様々な植物の写真を撮っていくうちに、その種類の多さに驚かされる。
やはり、山は素晴らしい場所だ。生命力の源。パワーをひしひしと感じた。
ゆっくりと高度を落とし、14:35粟ケ岳県民休養地に無事帰着。