日 時 2021年2月20日(土) 〜 21日(日)
山 域 頸城
目 的 雪山登山
行 程
2021年2月20日(土)
6:00 笹倉温泉 – 9:20 CO770m – 11:40 アマナ平 – 12:25 高松山北東尾根取り付き – 14:40 CO1,345m(幕営)
2021年2月21日(日)
5:00 CO1,345m – 6:25 CO1,550m – 8:30 高松山 – 9:35 CO1,345m 10:20 – 10:40 高松山北東尾根取り付き – 11:10 アマナ平 11:50 – 13:20 CO770m – 14:25 笹倉温泉
テントに荷物をデポして軽身で山頂ピストン
人 数 3人
天 気 両日ともに晴れ。西風強く、森林限界上は強風(予報数値は風速17〜22m/s)。森林限界下でも時折突風あり。
雪 の 状 態
20日は下部よりラッセル(膝〜腰)。日中はベトベト雪。(朝一はモナカだった模様。)CO780m付近より傾斜の緩い箇所はスネラッセル。森林限界上はやや湿り気味のパウダー。
風によりシュカブラが若干。雪は柔らかい。(幕営点CO1,345mの北向の尾根)
10:00頃より東側の急斜面で全層雪崩頻発。
21日、CO1,345m付近雪面には軽いシュカブラ。森林限界上は朝一はパウダー。
山頂まで柔らかく状態の良い雪。日中森林限界下は重めの雪。標高下がるほどにザラメ雪に。
ワカン・スノーシューで踏み抜き多数(膝〜腿)。
急斜面クラックあり。ツリーホールあり。
10:00頃より、東側の急斜面で全層雪崩、点発生表層雪崩頻発。(見えない場所でも轟音のみ聞こえる時があったので、違う方角の斜面でも雪崩が何度も発生していたと思う。)
雪崩を目撃したのはCO1,000m〜under辺り。
厳冬期ももうそろそろ終わる2月中旬。
山仲間のM氏とカッキーと私の3人で第二回女子会を開催した。
前回は私の提案で南アルプス深南部の不動岳へ登ってきた。
今回はM氏のリクエストで頸城へ。
本来は昼闇山〜高松山の周回縦走を計画していたが、当日の強風予報。そして数日前のドカ雪によるラッセルを懸念して、よりピークハントできる可能性の高い高松山ピストンに計画変更。
もし行ければ昼闇山まで。ということにした。(強風予報は、天気とくらす、windy、ヤマテンとかをアテにした。)
結果的には、高松山のみの往復となったが私たちとしては早起きをしてラッセルや爆風の中進み、前回の女子会よりも格段に頑張った、充実の2日間となった。
夜明け前に笹倉温泉に到着。
準備を済ませて、6:00出発。除雪終了点の雪壁を乗り越える。
M氏はスノーシュー、私とカッキーはワカンを装着してスタート。
私たちより一足早く出発したスキーヤー2名のトレースが伸びている。
M氏先頭。ワカン以上に浮力のあるスノーシュー。
M氏のラッセルパワーも手伝って、順調に進んでいく。
程なくして火打山川にかかる橋を渡り、本格的な登りに入る。
急斜面の直登を試みるが、腰くらいの高さもある新雪に阻まれ、思うように進まない。
やむなく、道なりに進む。
取り付きの急登が最も大変だった。
先行するスキーヤーのトレースは、スネくらいの場所でも、私たちは膝。時には腰まで沈む。
冬山登山ではストックを一度も持って行ったことがないらしいカッキーは、今日もノーストック。
重い荷物を背負いながらも深雪を足だけで登っている。驚異的な体幹だ。
雪にもがきながら登っていると、後方から来た3名のスキーヤーに追い抜かされた。
泊まりで高松山に登ると話すと、「ワカンでここを歩くとはすごいね〜」「来る山域間違えているよ。笑」と言われた。
頸城周辺は山スキーのメッカである。ネットの記録を調べる限り、2月に歩きで高松山に入っている記録は見当たらない。
なるほど。頸城はスキーでないと大変な場所だとよーく分かった。
私も普段は山スキーヤーである。
全く沈まないスキーヤー達をうらやましく思いつつ、再びラッセルに励む。
尾根取り付きの急登はやはり、直登すると深い新雪に阻まれ、まるで蟻地獄のよう。
あまりにも進まないので、ここでもやはりスキーヤーのようにジグを切りながら登った。
傾斜が緩いと、雪の深さも多少落ち着くので進むようになった。
ようやく急登地帯を突破した。CO770m。時間を見ると9:20だった。
笹倉温泉からまだ1.7km程しか進んでいないのに既に3時間半もかかってしまった。
昼闇山、無理じゃないか?そんな可能性をメンバー全員が薄々感じ始める。
せめて高松山を見てから帰ろうと、休憩をはさみ再出発。
最初の急登を突破してからは比較的緩い斜度が続き、ラッセルも多少落ち着いた。
今日の私は調子悪く、お腹もキリキリ痛くてペースが上がらない。
うっかりロキソニンを忘れてしまったら、M氏が飲んでいいよとくれた。
1錠飲むと腹痛もごまかされ、少しは回復。
カッキーも調子悪いようだ。今回の山行はM氏が先行ラッセルをほぼ引き受けてくれて、かなり頼りっきりになってしまった。
おまけに荷物も持つよと言ってくれる始末。
私が担いでいたテントフライと本体を持つと言ってくれたが、引っ張り出すのが大変だったので、代わりに夜飯セットとガス缶やコッフェルを持ってもらった。(完全に個人装備を背負わせてしまった。)
11:40アマナ平到着。
11:59、パラパラっと音がしたので、ふと横を見ると、東向きの斜面でまさに全層雪崩が起こる瞬間。
斜面から雪がブロックのように剥がれ落ち、間も無くしてズドーンと大きな音が響いた。
雪煙に見えるやつも、煙型といって雪崩の一部だそうだが、今見ているやつもそうなのだろうか。
もうもうと湧き上がった雪煙は、私たちの元へ迫ってくる前に霧散してくれた。
全層雪崩の瞬間をここまで近くで見るのは初めてかもしれない。
こんなのに当たったら、全身粉砕骨折。即死だろう。
太陽は南側に燦々と輝いている。
気温高く、2月だというのにとても暑い。
この後も、東側斜面を中心に何度か全層雪崩及び点発生表層雪崩を目撃した。
焼山川と高松山頂上部から降りてくる沢の出合を渡り、高松山の北東尾根に取り付く。
川は完全に雪に埋没しておりだだっぴろい雪原が広がっている。
尾根に登り始めると、雪は多少良くなりやや湿り気味のパウダーに。
傾斜が出てきたので、再びラッセルを強いられる。
今日は南西風の強い予報だが、時折、北側のこの尾根にも突風のように渦を巻いた風が迫ってくる。
やがてCO1,345m付近。ここから森林限界を迎え、無木立斜面が続く。
最後の樹林帯を幕営候補として、さらに登ってみる。
当初は、樹林帯一択だったが、美しい稜線を見るとどうにもこの上で幕営したくなってしまう。
M氏が「風速17m/s予報なら窪地に張ればワンチャンいける・・・?」とか言い始めて、私も綺麗な雪稜を目の当たりにして、爆風予報にも関わらずこの先で張ろうぜという気持ちがむくむく湧いてくる。(夜は24m/sくらいの予報)
「カッキーはどう思う?」と聞いてみたら「私は、樹林帯で張った方がいいと思うな・・・。」と至極真っ当な回答が返ってきた。
私やM氏があーだこーだ騒ぐのと違って、カッキーの言葉には妙に説得力がある。
なるほどなるほど。カッキーがそう言うなら。と私とM氏も大人しく意見に従った。
結果的には樹林帯に張って大正解だった。(当たり前だ。)風速17m/s overの稜線での幕営はなかなかヤバイことになってただろう。
数メートル引き返し、樹林帯のシュカブラが比較的発達していない場所に幕営。
夜は各々持ち寄った食べ物でお待ちかねの女子会。
かなりどうでもいい話でも笑いが絶えない。謎のテンション。楽しいひと時を過ごした。
明日は高松山をピークハントして、11時頃にはテントを撤収して下山開始するのが理想だ。
明日の予定は、3時起床の4時半出発で決定した。
19時過ぎ、就寝。
時折突風がありテントがバサバサと激しく揺れる。
テント内は比較的気温が高く、安眠することができた。
翌朝、少し心配だったのでテントを開けて外を確認すると、降雪かは分からないがかなり雪が吹いてきたようだ。テントがそこそこ埋まっていた。
カッキーサイドはかなり吹き溜りがあったようで、夜中少し寒かったようだ。
朝食を済ませて、出発準備。
私は昨日のドーピングが切れて再び腹痛。カッキーも話した感じではけっこう調子悪そう。
で、リーダーwakaの判断で2人調子が悪いので今日のラッセルは100%M氏という事で決定。
そんな理不尽?な判断にもM氏は胸を張って「任せろー!」の一言。なんと頼もしいことか。
(冗談抜きで今回の山行はM氏が大活躍だった。)
5:00、予定より30分遅れだが、暗闇の中高松山へ向けて出発。
一足先に支度を終えたM氏が「先に道作ってるよ!」と先行していった。
マジで、なんと頼もしいことか。
私とカッキーも続いて出発する。
尾根上もなかなかのラッセル。
傾斜が急な部分ではさすがにスノーシューよりもワカンの方が有利なようで、時折先頭を交代してラッセルをした。
尾根が南北から東西に屈曲するポイント。
北側に向かって発達した小さな雪庇を乗り越えて、尾根の南側に乗り上げる。
降り立った瞬間に爆風が吹き付ける。
次第に空が明るみ、火打山の向こうから朝日が昇ってきたが、今回に限ってはのんびりと写真を撮影する余裕がなかった。
何処を歩いていてもひたすら継続的に強風が襲ってくる。
道中、発達したシュカブラの陰で体勢を立て直す。
今のところ、唯一風を防げるポイントだ。
早速逃げ込んだは良いものの油断していたら逆サイドの一ノ倉川から吹き上げてきた雪で一瞬で雪まみれになった。
この先、山頂までずっと休める場所は無さそうだ。雪の状態もまだ予測出来ないので、ここで私とカッキーは念のためワカンアイゼンに換装。
準備がモタついてしまい、だいぶ体温が奪われてしまった。もっと改善するべき事と反省。
スノーシューのM氏をずっと待たせてしまい申し訳無かった。
体勢を立て直して改めて出発。
いつの間にか太陽も昇り、冷えた身体は歩き出したら再び温まってきた。
尾根はまぁまぁリッジとなっており、もし突風が吹いたらちょっと怖いかな・・・。と思っていたが、幸い突然煽られるような事はなかった。
吹き荒れる爆風、時折身を固めてやり過ごし、少しづつ進んでいく。
相変わらずの爆風だが、高松山山頂の登りに差し掛かると、いくらか風がおさまってくれた。
雪質は思いのほか良く、M氏もスノーシューのまま登って行く。
高松山直下のやや発達した雪庇を乗り越えて、いよいよ山頂へ。
高松山へ登ると、今回初めての青海黒姫山が姿を現した。
昼闇山へ向かう稜線は、結構距離があるように見える。
3人で記念撮影をして、引き返すこととした。昼闇山はまたいつか。
登頂できた喜びを噛みしめたいところだが、まだ油断は出来ない。
第一目標は安全に幕営ポイントまで下ること。
下山はカッキー先行。
やけにスピードが速いなと思ったら、どうやらシリセードをしたようだ。
山頂直下の急斜面は尾根から少し方向を外せばアマナ平へと落ちる急峻な谷へ続いている。
え、ここってシリセードするような斜面?!と一瞬思ったが、カッキーの元へ向かってドロップイン。
雪質が良いので滑りは悪い。安全に到着できた。もしカリカリだったら絶対やりたくないけど。
どちらにせよ、初見では「え?!」となったので、トップで飛び込むカッキー、さすがヤバイ系である。
強風に気をつけながら、順調に降る。
雪庇ドロップで、面ツルバーンにシュプールを刻んでゆく。
9:35、幕営地到着。
テントの中を片付けて、最後にマットをひっぱりだすが、あれ、マットが床と壁に挟まっていて取り出せない。
と思ったら、M氏がテント上に吹き溜まった雪の上に立っていて、知らずに踏ん付けていた。
いよいよテントを畳み、ポールを抜き取ると、今度はカッキーが置いたポールが流れてしまった。
慌ててM氏が取りにいってくれて、幸いにも下で引っかかって停止したポールを無事に回収してきてくれた。
ポールを持ってきたM氏が「なんかポール曲がってない??」と一言。
どうやら雪の重みで曲がってしまった模様。
ちょっと焦ったが、逆方向に強く曲げたら、どうにか元どおりに戻ってくれた。
色々とハプニングが続いたがとりあえずテントが無事で良かった・・・。
今回、穴を深く掘ったのに、結局雪が壁とテントの隙間に吹き込んできてテントが圧迫されてしまった。降雪がもっと多ければ、さらに押し潰されていただろう。
そうしたら、テントポールはさらに歪んでいたかもしれない。
対策としては、もう少し前後左右の空間を広めに掘っておけば良かったかも。
せっかく積み上げたブロックもサイズが小さかったのか、全て隙間に落ちてしまっていた。(ブロックのせいでさらにテントが圧迫した模様。)
まだ雪山経験は浅い。色々と試行錯誤して今後に活かしていきたい。
10:20改めて出発。
すっかり日が昇り温まった雪面は降る程にグサグサになってゆく。
今日もCO1,000m以下では頻発する全層雪崩や表層雪崩が見られた。
アマナ平で雪だるまを作り小休止。
雪だるまが重すぎて、頭を体に乗っけるのに難儀した。
3人がかりで頑張ってようやく持ち上げた。
道中、何人もの山スキーヤーとすれ違った。
高松山の尾根に汚いトレースを残してしまい、ちょっと景観を損ねる形になってしまうので若干申し訳なく感じた。
風が強いからリセットされていれば良いが。
下山もまた踏み抜き地獄でなかなか疲れる。
それでも登りよりはいくらか早い。
取り付き付近の急登は、シリセードでショートカット。
クラックは尻で飛んだり、ジャンプしたり。
場所によりツリーホールもあり、踏まないように気をつけたつもりだが、結局お腹くらいまでハマった事もあった。
笹倉温泉が見えてきて、14:25無事に下山。
二回目の女子会が無事に終了した。
前回の不動岳山行がかなりのんびりだったので、今回も引き続きのんびり山行になるかと思いきや、なかなかのガッツリ登山となった。
ラッセルは深く、尾根では爆風に晒され、立派に雪山登山だった。
ここ最近は天気に恵まれ快晴無風の雪山歩きばかりだった。ある意味今回の山行は今シーズンの雪山の中でも結構大変な部類に入るかもしれない。
色々とあったが、3人で協力して、無事に登頂・下山出来たことがとても嬉しい。
まだ未熟だが、これから色々と経験を重ねて徐々にステップアップしていきたい。
【メンバー】
M氏(ラッセル)・・・生き物や植物、地理など自然が大好き。私の1つ歳下。昨年の夏に室谷川で出会ってからちょこちょこ一緒に山へ登るようになった。youtube「源流徘徊たなか」編集担当。
どんな状況下でも1秒で爆睡。凄腕の「寝師」。
カッキー(ボッカ)・・・昨年の冬に飯豊山で出会った。私の2つ歳上。相方のNさんと共に色々山へ登っているようだが、大体、どこの山に登ったか覚えていないので、聞いても良く分からない。おそらく女子会メンバーの中で最も修羅を経験しているであろう人物。
私(リーダー)・・・このメンバーの中では一番普通。登山計画書作成担当。
女子会登山1回目の記事はこちら↓
M氏と二人旅↓