2021年12月20日(月)
8:25 宮ヶ瀬バス停 – 10:35 ハタチガ沢 – 14:15 鍋嵐 – 16:15 唐沢公園橋 – 18:35 ワサビ沢出合
2021年12月21日(火)
6:25 ワサビ沢出合 – 9:35 丹沢山 10:10 – 12:30 蛭ヶ岳 13:35 – 15:15 臼ヶ岳 – 臼ヶ岳南尾根 – 17:15 ユーシンロッジ
2021年12月22日(水)
5:40 ユーシンロッジ – 6:40 大石山 7:20 – 9:20 同角ノ頭 – 同角尾根 – 15:40 中ノ沢出合 – 玄倉林道 – 16:40 玄倉バス停
距離 : 39.6km 累計高度(+) : 4,755m 累計高度(-) : 4,736m
メンバー : 2人(Waka、M氏)
天気 : 晴れ
装備:40mフローティングロープ
私は関東に住んでいながら丹沢のことを詳しく知らない。
丹沢のことをもっと良く知りたいな〜と思って丹沢マニアのM氏に相談したところ、「じゃあ丹沢縦走しようぜ!」ということになった。
当初は3泊4日で山中湖まで抜ける計画だったが、なんやかんやで行程遅延が発生し、2日目の昼に計画変更して丹沢湖下山となった。
山行を終えた後に今回の距離や標高差を見直すと、普通にガッツリ歩いていたので、別に諦めなくても山中湖まで抜けれたような気もした。笑
(何なら今回歩いた行程の方がハードかもしれない。)
まあ今回は今回で面白いルートを歩けたので良しとする。
丹沢横断はまた今度の機会にリトライしたい。笑
前日譚
東丹沢から西丹沢への横断。
これから何日かの稜線縦走だというのに出だし一発目はハタチガ沢での沢登りだ。
数日前にM氏から山行ルート案がGPXファイルで送られてきたのだが、なんという不覚、その時点では行程にしれっと沢登りが含まれているのに気づくことができなかった。(てっきり登山道が付いているものと思っていた。)
そこで、M氏と持ち物の確認をしていたら「最低限の沢装備かな!」なんて言葉が飛び出してきたもんだから「は?!」となった次第である。
ネットで「ハタチガ沢」を調べると、普通にガッツリ沢登りだった。
「12月の沢登りなんて寒い!」とか「濡れた装備で何日も稜線歩くの?!」とか突っ込みたいことがたくさんあったが、すでに山行は翌日に控えており、今から計画変更を要求するのもあまりよろしくない。
もはや不安しかなかったが、「もうどうにでもなれ!」と腹をくくった。
熟慮した結果、沢装備の他に、私は着替えとスニーカーを担いでいくことにした。
1日目: 宮ヶ瀬 〜 ハタチガ沢 〜 ワサビ沢出合
本厚木からバスに乗り、8:30頃に土山峠下車。
いよいよ登山開始だ。
空気はキリッと冷えており、吐く息が白い。
というか道路が凍結している。
M氏とサミーサミー言い合う。
本当にこれから沢登りすんの?!と私が尋ねる。
M氏も結構寒いようだ。「あんまり寒かったら尾根に逃げようか。」との言葉が出てきたので内心ホッとする。
M氏曰く”東丹沢の真髄は宮ヶ瀬にある”
宮ヶ瀬には「東丹沢らしさが詰まっている」らしい。
丹沢主稜を歩くなら、宮ヶ瀬地域は絶対に外せないとのことだった。
楽しみではあるが、これから待ち構えるハタチガ沢がちょっと怖い。濡れだけは全力回避したい。
堤川林道へ少し入ったところから、適当に尾根に取り付く。
最初は植林だったが、尾根へ上がると、いつの間にか照葉樹林になった。
丹沢というと登山者が行き交う賑やかなイメージだったが、ここは私たちの他に歩いている人はいない。静かな尾根歩きを楽しむ。

標高点597mの北西にあるコルに乗り上げ、反対側へ下降する。荒廃した林道へ一度降り立ち、さらに下降するといよいよハタチガ沢に降り立った。
苔むした岩のゴロゴロしたハタチガ沢はなんとも良い感じの雰囲気。
この感じなら水に浸からずとも遡行出来そうだ。
M氏が見て、と手招きしている。沢床に青緑色の綺麗な岩盤があった。
緑色凝灰岩だよ。と教えてくれた。
緑色凝灰岩といえば、私にとって馴染み深い会越の沢を構成している岩石である。遠く離れた地でも同じものを観察することが出来るなんて。

同じ岩石ではあるが会越と丹沢とではまるで渓相が異なる。
会越は渓が豪雪に削られ、滑らかに侵食されたゴルジュが目立つ。大して丹沢にそのようなゴルジュは存在しない。豪雪ではないからこのような侵食はされないのか。
もし丹沢が豪雪地帯にあったらどうなるだろう?とM氏に聞いてみたら、丹沢は地質が脆いから山自体が無くなっちゃうかも!と返ってきた。
素材が同じでも、環境要因により雰囲気はまるで違うものになる。
なんだか、育った環境で性格が形成されてゆく人間の子どもと似ているなぁと思った。
11:00アカチガ沢出合。ミニゴルジュ状になっており、水線通しに歩くには濡れ必須のご様子。
詰んだ?と思ったが、左岸よりアカチガ沢出合にかかる滝を横断して、そのまま斜面のトラバースに成功。
ゴルジュの中を歩けないのは残念だが仕方がない。
眼下に見下ろすゴルジュは見事。右岸に構成された緑色凝灰岩の柱状節理が目を引いた。

そのうちにハタチガ沢の核心、4mCS滝が登場。
「核心」と呼ばれると、チャレンジしてみたくなる気もする。
M氏が、「右側登れるかも・・・。」とか言って早速オブザベを始めている。笑
濡れは全力回避って言ってたのどうした。
いやいや冷静になろう。ミスったらずぶ濡れなのは明らかでしょうに・・・!

ここは悔しいけど、巻こうと提案する。
M氏も無事に賛成してくれた。笑
左岸の急斜面を直登していく。浮石多数で割と気を使った。
各自別々のラインで登り、上部で合流。
核心滝とお別れしたM氏がなんだか名残惜しそうだった。
4mCS滝を見送り、さてそろそろ沢床に復帰しようかと思ったら、行手に連瀑帯っぽいものが見えたのでまとめて巻いてしまうことにする。
ちょいと時間も押してますし・・・。怪しげな滝は事前回避しますよ。
M氏と山を歩くと、あちこちに色々な発見があってすごく楽しい。
しかし、それは裏を返せば、寄り道し過ぎて時間がかかってしまうということなのだ。笑
その後左岸の斜面トラバースを続けて滝の落ち口に無事着地。
その後も小滝がちらほら現れるが問題なく超えてゆく。
これは濡れずに済みそうですな〜なんて言ってたら浮石に足を乗っけて片足ボチャン!
一瞬濡れてしまった。油断は良くない・・・。
M氏の「ギャァ」という悲鳴が聞こえてきた。落ち葉に隠れた水たまりに落ちたようだ。
「絶対に濡れない」ってのはけっこう難しい・・・。

そのうちに水も枯れてきて、いよいよ終わりも近づいてきた。
左右からカラカラと自然落石が頻発し、ここの地質の脆さが分かる。
詰めのガレ斜面をひと登りすると14:15鍋嵐の東にあるコルに到着。

少し歩くと、標高点817mの鍋嵐に到着。

休憩もそこそこに下降を開始する。順調に進み唐沢川へ降り立つ。

唐沢川の渡渉はどうなるかと思っていたが、ラッキーなことに堰堤部分をジャンプで越えることが出来た。
あとは堂平方面へむけてひたすら県道70号線を歩く。
途中でいよいよ日が暮れた。
17:30、3km歩いたところで塩水林道に入る。
ぼんやり明るいので、引き続きヘッドライトを使わずに歩いていたが、不意に真横のガードレール外の茂みで「グルル・・・」と唸り声が聞こえた。
私は即座に引き返し10m程距離を置いたのだが、M氏はその場でボーッと茂みを眺めている・・・!
そのあと獣が飛び出してくることはなく何も起きなかった。
M氏が持っている笛をピッピー!と鳴らしてみたら、今度は前方から「ギャァァーーー!!!!!」と何者かの断末魔のような叫び声が聞こえてきた。
怖い・・・怖すぎる!!
え、何、誰か遭難者がいるのかな?とM氏に聞いたら、猿じゃない?とのこと。
あぁ猿か、でも猿と鉢合わせるの絶対嫌だ。
暗闇で歩くのは良くないかも。
獣への存在アピールのためにもヘッドライトをつけることにする。
「熊鈴持ってくればよかったー」と後悔していたら、なんとM氏が持っていたので、私のウエストポーチに吊り下げる。
歩くたびにけたたましく音を鳴らす熊鈴は非常に安心感があった。
見通しが良かったり人通りが多かったりで明らかに獣の居なそうな場所で音が聞こえると正直不愉快な気持ちになってしまうのだが、こういう場所では確かに有効だと思う。
歩いていると、M氏がたまに不意打ちで「ピー!」と笛を鳴らすことがあった。
獣除けなのは分かるが、その音に一番ビクッとなっていたのはきっと私だったと思う。笑
18:35、ワサビ沢出合到着。
私もM氏もたくさん歩いてもうクタクタだ。
心配していた水濡れは無事に回避。片足突っ込んで一時的に濡れてしまったものの今ではすっかり乾いてくれた。
おそらく今回の行程での核心ともいえる初日を無事にこなせて良かった。
あとは登山道を歩くだけ。この時はまだそう思っていた。
私たちは油断していた。「稜線縦走」が一筋縄ではいかないことをこの後思い知らされることになる。

その2↓
【PR】
M氏のYouTubeチャンネルです。↓