2021年8月11日(水)
6:05 大蛇尾林道 – 8:05 吊橋 – 9:50 二俣 – 14:40 CO1,180m (合計時間 : 8h35m)
2021年8月12日(木)
7:00 CO1,180m – 7:50 大滝 – 12:05 瓢箪峠 – 白滝沢 – 14:30 林道 – 16:35 車デポ地点 (合計時間 : 9h35m)
メンバー : 3人(Waka:フェルト、Sさん:フェルト、M氏:ラバー+フェルトサンダル)
装備:30mロープ
天気 : 1日目:曇り時々晴れ。夜は雨 2日目:曇り

直近のアメダス:

M氏、Sさんからお誘いを受けて男鹿山塊の大蛇尾川へ。1泊2日で大蛇尾川西俣を詰めて塩那スカイライン(瓢箪峠)を越え、山を挟んだ向こう側の白滝沢を下降する計画だ。
大蛇尾川は過去にM氏が溺れてしまった沢でもある。出発前に改めて当時のブログを読み返したら、胸がギュッと締め付けられた。明日からその沢へ入ることに対して少なからず緊張を感じた。(参考: 山と渓の国 – 大蛇尾川 西俣 事故中退)
結果的に大蛇尾川の美渓をしっかり楽しむことが出来た。無事に遡行することが出来て良かった。
山行記録
前日のうちに下山予定地のワイルドフィールズおじかに車を1台デポ。
下山した際、ワイルドフィールズおじかのオーナーと思われる方に注意を受けた。
私たちが駐車したのはキャンプ利用者用の駐車場で、釣り師や他の用事の方は50m程手前の路肩の空きスペースに駐車するようにとの事だった。
利用される方は中止してください。
道の駅で仮眠し、翌朝出発地の大蛇尾林道へ向かう。極めて道の悪い林道を車で進めるだけ進み駐車。駐車地点には鴫内山(しぎうちやま)の登山口があった。
残り数kmの林道を徒歩で進む。ちょこちょこザレていて歩きづらいが橋やトラロープが取り付けられていたりと概ね歩きやすい。
8:05大蛇尾吊橋着。本流を見下ろすと、素晴らしく澄んだ青い清流。水温は低く、浸かるとちょっと寒い。
水温が低くて微生物が繁殖しづらい為、変色せず水本来の青い透明度が保たれているようだ。確かに黒部の水も冷たくて青いから、そうかもしれない。オロロやヤブ蚊はほぼ居なくて快適。
あちこちから冷たい湧き水が流れており、その都度水分補給をする。
二俣まではゴーロ多め。時折太腿辺りまで浸かり渡渉する。水圧が強い部分もあったが1人でなんとか渡れた。(体重の軽いM氏は少しフワフワしてた。)それでも全体的に水量が多く感じる。
大蛇尾川は山の保水力自体も強いらしい。今年の豪雨ばかりの天候を考えると、結構な水量を貯水している可能性もあり得る。
2時間ほどで二俣到着。いよいよ西俣に入る。
歩いていると目前に大規模な土砂崩れの跡。右岸から土砂が流れ込んで本流を埋め尽くしていた。伏流を辿ると、土砂崩れを挟んだ上流に湖が出来上がっていた。Sさんが「2年前は無かった」と言っていた。こんな短期間で沢が埋まってしまうなんて。それでも溜まっている水は澄んでいてとても綺麗。幻想的な場所だった。
そのうちに目前に最初の滝、ヤギ滝が現れた。轟々と水を落とす2段の滝は圧巻。2段目は左側に渡ってへつって登れそうだが、水量多くちょっと不安。失敗したら滝下に吹っ飛びそう。水を避けて左岸のルンゼから巻き。
巻き終えると、いよいよナメ床が目立つようになる。同時に沢床のヌメりも増えた。
進むと、釜を抱えた5m滝。どこまでも透き通った青色の釜は、時折顔を出す太陽の光に反射してキラキラと輝いている。
釜のすぐ右岸から支流が出合っている。土砂が押し寄せて、釜の端っこを埋めてしまっているようだ。これもまたSさんに教えてもらった。SさんとM氏が以前も歩いた場所だからこそ、今回沢の変化の過程を所々実感しながら歩けている。大蛇尾川は想像以上に変化が早いようだ。沢が埋まってしまうのはやっぱり切ない。そのうち、自然のパワーが再び土砂を押し流して復活してくれることを願った。
しばらく休憩した後に遡行再開。上部には釜を携えたナメ滝が段々と連なっている。素晴らしく美しい場所。そしてM氏が溺れた場所。
ずっと釜を見つめているM氏。私は、M氏が生きてて良かった、とひたすら思わずにいられない。
M氏の「沢で半端なことをやったら死ぬ」という言葉が印象深い。山の事故は、その通り、一番は招かざる状況を招かないよう気を付けるべきだと思う。
それでもいつか不本意にもそんな事態が訪れるかもしれない。運命的にどうしようもなく死んでしまうなら、私は受け入れるつもりだが、もし助かる見込みがあるなら自分の命も仲間の命も絶対に無駄にしたくない。(価値観がちょっと違って、死にたがりな仲間が現れたとしても、私は自分の気持ちを尊重すると思う。)
M氏が助かったのは、当時一緒に行動してた2人のお陰だ。M氏が助かったことが一番嬉しいが、一方でいざという時に仲間のピンチを救えるそのパーティーのあり方が、とてもすごいことだと思った。実際にそんな事態に陥ってしまったら私はどう行動できるか。私も、仲間の命を救える仲間でありたい。
しばらく美しいナメ床は続き、核心6m滝が現れる。M氏が残置ハーケン等利用しつつリードで突破。私とSさんもフィックスで無事に登りきった。上部はヌメる上にワンポイント左足のスタンスが心許なくて緊張した。M氏ナイスリード!
その後は軽快に進んでゆくが、全体的に岩が脆い。手をかければ容易く剥がれてしまう所も。随所で落石に気を遣った。
そして土砂崩れによって創り出された第2の堰き止め湖を越える。上もゴーロや流木が散見されるが全体を通して綺麗な渓相。支流出合にかかる滝が素晴らしく、つい目を惹かれた。
その先にある10mの幅広滝が実に端正な形をしており感動する。滝屋のSさんもとても嬉しそうだった。しばらく眺めてから右岸より高巻き。
トイ状滝は左壁より。落ち口にあがると、上流に向かってナメが続いていた。皆、思わず笑顔がほころぶ。1歩1歩、踏み締めて、足裏の感触を楽しんだ。
14:40、CO1,180m付近、右岸にて幕営。
M氏と一緒に釣りに出かけるが、釣果ゼロ。道中魚影も小さいのを1度しか見かけなかった。元々期待は薄かったが・・・。
付近に薪は沢山あった。釣り師の捨てたと思われるネットたちもついでに燃やして、夜は盛大な焚き火宴会。Sさんが最近ハマっている豚の角煮や、卵豆腐をご馳走になる。M氏の考案した、たらこマッシュポテトがなかなか美味だった。今度マネしよう。
日が落ちて暗くなっても、楽しく会話が盛り上がった。そのうちに雨が降り出し就寝。
虫が居ないのは良かったが、夜中寒くて何度か目が覚めた。しばらく雨は止まずひたすら音が耳に入ってくる。沢の音は好きだが、雨の音はちょっと不安な気持ちになる。
結局寝床が浸水することもなく、翌朝も特に沢水は濁っていなかったのでホッとした。
翌朝7:00出発。朝一ナメ床を楽しみながら遡行してゆくと西俣のハイライト30m大滝。
見上げる滝は、落とす水の勢いが盛んで圧倒される。
Sさん、M氏とルーファイして大滝の左岸ルンゼを巻くことにした。左岸へ流木を利用して渡渉。へつり登って大滝1段目のテラスへ。ここからの眺めも圧巻。水量がものすごい。こんなの、何したってたやすく吹っ飛ばされてしまいそうだ。
水流へ突っ込み、ルンゼへ向けて横断する。見た目通り水圧は激しい。見えないが意外とスタンスはあり、足元を慎重に探りながら無事横断完了。
ルンゼは土が弱く落石要注意。適当に高度を稼いだところから、滝の落ち口方向へトラバース。一箇所外傾したトラバースは少し怖かった。上部に生える木を頼りに移動したが「もしこの木が根こそぎすっぽ抜けたら・・・」とちょっとドキドキ。
落ち口からは美しいナメが続いているが、ヌメり健在、水流は早い。傾斜もある。うっかりミスが命取りになる場所。数mは木を掴みながら移動し、安全そうな場所でようやく沢床に降りた。
核心の大滝、無事高巻き成功。Sさん、M氏とハイタッチ。皆で力を合わせて突破した大滝。ちょっとだけ冒険気分も味わえた。楽しかった。
この後は怒涛のナメラッシュ。Sさん、めちゃくちゃニコニコしていた。
途中の釜を携えた小滝付近はかなり美しく、思わず歓声をあげた。個々の突出した美しさというより、釜、滝、水の色、周りの植生、全ての絶妙なバランスが創り出した空間。例えるなら日本庭園のような芸術性を感じた場所だった。
そのうちに沢幅が狭まり、いよいよ源流の様相。ナメはまだ続くが、表面に付着する苔が目立つようになった。苔が育つのは水が綺麗な証拠だとか。枝沢から流れる水をみんなでグビグビ飲んだ。
上部の大崩落地を過ぎると、いよいよ詰めも近い。しばらくは快適なガレルンゼだったが次第に藪に阻まれる。
ひたすら藪を漕いでゆくと、ポッカリと藪が消えた。男鹿の稜線を渡る塩那スカイラインに合流。
ここは、塩原温泉と那須高原をつなぐはずだった未完成道路だ。高度成長期に観光目的として施工されたものの途中で中断されてしまい、その痕跡だけが残されている。(wikipedia-栃木県道266号中塩原板室那須線)
下降を始める前に、M氏の要望で地形図上の池を確認しに行く。意外と池に向かって踏み跡がありあっさりと見つけることが出来た。
池に近づく程に足元が泥っぽくなり先行していたM氏が2度程ズボッとハマり片足が泥まみれになった。Sさんが後ろで沼に浮かぶ流木を遠目に「鳥!鳥がいっぱいいる!」「まさか鳥の憩いの場になってる?」とメルヘンな勘違いにはしゃいでいたのが笑えた。
近づいてみると池というよりもはや沼って感じ。周辺は臭い匂いが充満しており、草が生えている部分を片足でつつくとタプンタプン揺れた。誤って飛び込めばそのまま浮かんで来れなさそうだ。

いよいよ白滝沢の下降に取り掛かる。塩那スカイラインにお別れ。
しばらく藪を漕いで沢型に合流。白滝沢は1箇所小滝を下った以外は特筆すべき場所もなく平凡な様相。沢の中に何十年前かのもわからない廃車が転がっていたのには驚いた。

ひたすら長い林道を黙々と歩く。
今回の山は林道に始まり林道に終に終わる。16:35無事下山。
1泊2日、大蛇尾の美渓を存分に堪能出来た2日間だった。
久々の2人との遡行だったが、やっぱり楽しかった。2人の生き生きした様子を見ていて、私もモチベーションがあがった。やっぱり、行きたい山や沢にはどんどん行かなければ。もっと山を楽しみたくなった。
↓Sさんのブログ「山と渓の国」











































