検定・講習独り言

登山ガイドになるには? 資格、金額、試験内容について解説

検定・講習

登山ガイドWaka 大島わかな です。
私は現在日本山岳ガイド協会認定 登山ガイドステージⅠの資格があり、登山ガイド業務を行っています。
資格を取るに至った経緯や、勉強方法、実際の試験の感想などを共有します。
登山ガイドを目指している人や興味がある人の参考になれば幸いです。

登山ガイドに資格は必須?

登山ガイドに資格は必須ではないです。
ガイド資格も色々ありますが、どの認定制度も国家資格ではありません
無資格でもガイドを名乗り、活動をすることができます
実際に無資格でもガイド業を営み、お客様から信頼を得ている人もいます。
私が実技試験で一緒になった多くの受験生は、無資格ですが立派にガイド業をしており、ステップアップの為に資格取得を目指していました。

なぜ資格を取得した?

理由は「私が無名」だったからです。
前述の通り、無資格でも登山ガイドの活動をしようと思えばできますが、無資格よりは何かしらの資格があったほうが無名の自分には有利(ある程度の信頼を得れる)と考えたためです。
最も規模の大きな団体である公益社団法人日本山岳ガイド協会(以下ガイド協会)の認定する資格を取ることにしました。

資格の種類

ひと口に「登山ガイドの資格」といっても、ガイド協会の中でさえも職能別の資格が複数存在します。
正直、お客様からしたら山を案内してくれる「ガイドさん」であればよく、一般の人は”登山ガイド”と”山岳ガイド”の違いも分からないでしょう。
この言葉や定義はあくまでもガイド協会が独自に定めたもので、職能範囲を守るべきはガイド協会に所属している者に限られます。
職能範囲の詳細はガイド協会 資格の種類のページへ。

種類ステージ
自然ガイドステージⅠ、Ⅱ
登山ガイドステージⅠ、Ⅱ、Ⅲ
山岳ガイドステージⅠ、Ⅱ
国際山岳ガイド
フリークライミング
インストラクター
スキーガイドステージⅠ、Ⅱ

私がゆくゆくはガイドしたい山は「登山ガイドステージⅢ」が必要になります。
「Ⅲ」の受験資格を唯一得ることの出来る「登山ガイドステージⅡ」を受けることにしました。

金額は?

受験にかかった金額は合計約30万円ほどです。
これに、交通費や宿泊費が加算されるので、実際はさらに数万円かかっています。
(宿泊費は場所によりますが1泊2食付きで¥7,000〜¥9,000程度でした。)

内容金額
教本、過去問¥14,500
筆記試験(一次試験)¥25,000
実技検定試験(二次試験)¥165,000
義務講習¥30,000
ガイド協会入会金、年会費¥60,000
合計¥294,500

受験資格

登山ガイドステージⅡの受験資格は次の通りです。(職能別資格検定試験詳細規定より)

満20歳以上で健康で体力があり、通算120日以上の登山経験を有し、
そのうちに厳冬期での積雪期登山経験が20日間以上を有すること。

難しい条件ではないと思います。一般の登山者でも受験資格をクリアしている人は多いでしょう。
受験のために日数稼ぎで入山するようでは駄目だと思います。
私は受験時点で通算424日、厳冬期(12月末~2月)が47日でした。
すべての山行を記録しているので楽にカウントできました。記録を残すことは大事です。
どんな山をやっているのか”が何よりの名刺と考えているので、山行記録はすべて公開しています。

【一次試験】筆記試験と勉強方法

勉強方法はガイド協会が発行している教本を読みました。
ほとんどはこの教本内から出題されます。(山岳遭難救助マニュアルは試験範囲外)
学校の勉強と違い、山のことなので純粋に楽しく勉強に取り組めました。⇛山の勉強記録
筆記試験の受験料は¥25,000です。

タイトル価格
ガイドの基礎的知識教本 改訂版¥3,000
自然・登山ガイドの専門的知識教本¥3,000
山のファーストエイド教本¥3,000
雪の安全管理・雪崩対策技術教本¥3,000
筆記試験過去問題集¥1,000
山岳遭難救助技術マニュアル 認定ガイド編¥1,500
教本と過去問

【二次試験】実技検定試験と義務講習

周りの受験生は既にガイド経験のある人たちが多く、私のようにガイド未経験で受験している人は少数派でした。
話を聞くと、知り合いのガイドに指導してもらい、試験に備えている方もいました。
私は試験が初めてのガイディングだったので緊張しました。
疑問点は事前にガイド協会にメールを送ると、回答可能な範囲で親切に答えてくれます。

区分項目試験料日数合否
実技無積雪期ルートガイディング 自然解説技術
¥40,0001泊2日合格
実技安全管理技術 基礎¥40,0001泊2日合格
実技積雪期ルートガイディング 自然解説技術¥40,0001泊2日合格
実技(免除講習)雪の安全管理技術(JAN)¥45,0002泊3日不合格
講習危急時対応技術講習会¥30,0001泊2日合格

なお免除講習で無事に推薦を受けた場合は、科目毎に10,000円の審査料が必要です。

【実技】無積雪期ルートガイディング 自然解説技術

合格
検定場所:丹沢

検定内容

① 無積雪期でのルートガイディング技術と歩行技術

② 自然観察と解説

③ 読図

あらかじめ山域は決められていますが、細かいルートは遠方から集まる受験者が不利にならないように伏せられています。
持ち物に「ガイド資料」とあり、何を用意するのか疑問に思いましたが、自分なりにルートを決めて自由に資料を作っていいそうです。(ガイド協会に質問しました。)
また、その山域の歴史や地質、植生、近辺の集落についてなど、もっと広範囲に当てた内容でまとめている受験生もいました。試験後に余った資料を貰っていくつか読みましたが、みんな良い資料を作っていました。
実際にお客さんが受け取って喜びそうな資料、自分が貰って嬉しい資料を作れば良いかと思います。

作成したガイド資料の一部

上記は一例です。鵜呑みにせずぜひオリジナリティのある資料作りを!
担当試験官は杉本晴美ガイドでした。歩きつつも色々アドバイスいただきました。いかにお客様のことを考えて行動出来るかが大切です。教えていただいた内容が素晴らしく、私もこんな登山ガイドになりたいと思いました。
ガイド役を交代しながら歩きましたが、皆の解説を聞きながら歩けて、検定ではあるものの結構楽しかったです。

前述しましたが、遠方から来る人が不利にならないように配慮されています。とにかく出来る範囲でしっかり試験に備えて頑張ってください。当然基本的な読図能力は必要です!

【実技】安全管理技術

合格
検定場所:丹沢

検定内容

① 搬送技術

② ロープ技術(結び、固定)

③ 降ろし技術

④ 緊急露営技術

⑤ セルフレスキューとロープ操作、固定ロープの方法、ショートロープ技術(講習)

ロープワークやツェルト設営などの実技試験です。扱ったことのない人にとっては複雑に感じるかもしれませんが、練習すれば誰でも出来ます。
基本的なロープの結び方は本や動画を見たり、ツェルトは公園などで張ってみましょう。
私も数年前に独学でロープワークを学び、今は沢登りやクライミングに取り組み日常的にロープワークをこなせるようになりました。
誰かに教えて貰うことが必要な場合もありますが、その人が本当に最先端で効率の良いロープワークを教えてくれるかは分かりません。自分で情報収集して学ぶ姿勢も必要だと思います。
ツェルト設営は、山中でのタープ泊ツェルト泊の経験があったため問題ありませんでした。
持ち物に書いてありませんが、ペグ使用OKなので難易度は下がります。
ツェルトは実際に山中で何度か使った方が良いです。試験当日も自信を持って行動できると思います。

担当試験官は菅野由起子ガイドでした。ロープワークや装備についてちょこっと質問させていただき、かなり的確にアドバイスいただけました。またまたこんな登山ガイドになりたいと思いました!

ツェルト泊
厳冬期のツェルトビバーク
タープ泊

【実技】積雪期ルートガイディング 自然解説技術

合格
検定場所:志賀高原

悪天での試験で正直辛かったです。無雪期と比べて道が無いので、ルートファインディング能力が必要になってきます。基本的にやることは無雪期ルートガイディングと同様ですが読図などもワンランク難しく感じました。吹雪の中で、お客さんへの自然解説行為もタイミングが図りづらく難しかったです。合格できホッとしました。

検定内容

① 積雪期でのルートガイディング技術と歩行技術)

② 雪上での用具の使い方、指導能力

③ キックステップ技術

④ 氷上歩行とアイゼン等器具の使用技術

⑤ 自然観察と解説および読図

作成したガイド資料 場所だけではなく、自己紹介や連絡先を入れることもポイント

【実技】雪の安全管理技術

不合格
検定場所:谷川連峰

講習内容

① 雪崩対策

② 積雪観察

③ 積雪期の安全なガイディング

④ 雪山の安全管理全般

日本雪崩ネットワークの講習会、日本山岳ガイド協会認定・登山ガイド養成講座「雪の安全管理」を受けました。
受験時の記録はこちら。(主催の日本雪崩ネットワークに許可を得てブログに書いています)
不合格で悔しいのですが、正直実技試験の中で一番充実度が高く満足しています。
出川あずささんが直々に講師を務めてくださるので貴重な機会だと思います。
周りの受験者も結構落ちており、合格率は低いです。
わたしは①雪崩対策のビーコンサーチが規定時間以内にできませんでした。
命に関わることでもあり、普段の登山の中でも重要なので習熟して再受験予定です。

コンプレッションテストの様子
ただし、「30 cmの四角柱に人生を掛けないように」

【講習】危急時対応技術講習会

検定場所:比良山系

室内でファーストエイド講習の他、リスクマネジメントや法的責任等の座学講習でした。ファーストエイドは三角巾を実際に使用して色々教えていただき楽しかったです。
他の座学講習は手持ち資料の読み合わせ的な感じで結構眠くなりました。
配布された資料は内容が良質で未だに破棄せず保管しています。

屋外では傷病者手当や救助要請の演習を行いました。限りなく雪に近い雨天での実施で、濡れた地面に転がり寒いし辛かったです。モコモコのダウンを着て見守っている講師陣が羨ましく思いました・・・。

資格取得とその後

雪の安全管理技術が不合格だったため、「登山ガイドステージⅡ」は取得できませんでした。
「登山ガイドステージⅠ」の条件は満たしていたため取得しました。
雪の安全管理技術を再受験し、「ステージⅡ」を取得予定です。

入会手続き、年会費について

合格したら必ず正会員団体にも属さなければならず、そうしないとガイド証を発行してもらえません(ガイド資格を掲げての業務ができません)。
正会員団体も色々あり、年会費が安いところだったり、年会費が高いけど研修制度が充実しているところなどあります。
当初は妙高山学ガイド組合も検討していましたが、最終的には私の地元でもある静岡のNPO法人静岡山岳自然ガイド協会に入会しました。
私が山を始めたばかりの頃に地図読みを教えてくださった三上浩文ガイドが所属しているのがキッカケです。
以下の出費が発生します。

内容内訳金額
日本山岳ガイド協会 (親団体)新規入会金¥20,000
年会費¥10,000
静岡山岳自然ガイド協会 (所属団体)新規入会金¥10,000
年会費¥10,000
研修費¥10,000
合計初年度¥60,000
次年度以降¥30,000

入会後にやったこと

初めにガイド用の損害賠償保険の加入手続きを行いました。
案内は来ないのでこちらからガイド協会に問い合わせて加入しました。
今後もおそらくそういったものは来ないので必要性を感じたものは積極的にこちらから質問する必要がありそうです。(なお問い合わせのメールをするといつも親切に返信してくださります。)

ガイド試験に合格してからは、親団体とのやり取りは無くなりました。所属団体のメーリングリストに登録して定期的に何かしらの案内メールが転送されて来るのみです。

他には所属団体の研修に参加しました。(記録)
有意義だったので日程が合えばまた参加したいです。他の登山ガイドの皆さんとも親睦を深めることが出来ました。

基本的にガイド協会に入会したからといって、仕事の斡旋がある訳ではなくあくまでも営業をするのは自分自身です。登山ガイド資格を取れば仕事が入ってくる訳ではありません。

今回、受験を共にした仲間とは連絡先を交換しました。LINE、Twitter、Facebook、Instagramのアカウントなどで繋がりました。SNSはみんなの活動がすぐに分かるのでとても便利です。
私も頑張らなければなぁという気持ちにさせられます。

最後に

ガイド試験の受験者は30〜40代が多かったように見受けられます。
その中で私は20代で比較的若い部類に入るようです。そのためか、講師や一部の先輩ガイドの方々からこのような事を言われました。

「自分の山をやりなさい」

ガイド自身の経験値が高くなければ質の良いサービスは生まれない。
私はまだ若い。これからもっとレベルアップ・知識を深めていく時間は十分にある。
「決して仕事の山だけでなく、プライベートで100%の力を発揮した登山を続けていってください」
と真剣な眼差しで言われました。
アルパインクライマーの増本亮さんが岳人の記事でこう言っていました。

たいして自分の登山もしていないのにガイドになりたいと考えている者もいる。
ガイドである前に山ヤであってほしい。
とにかく自分の山登りをしてからお客さんを連れて行くことを考えてほしいと思います。

『岳人』No.805 (2014年7月号)「6人のクライマー 30の質問」

私が尊敬する山岳ガイド・登山ガイドも、みなさん「自分の山」をやっています。
私も登山ガイドである前に山屋であり続けたいと思います

“わたしの山”の記録はこちらです!↓

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