2023年7月16日(日) 晴れ(夕立一度あり)
八木沢 (5:45) – 鹿飛橋 (6:35) – 足尾沢出合 (10:00) – 大滝 (15:35) – 幕営地 (18:05) / 行動12h20m
2023年7月17日(月) 晴れ
幕営地 (6:00) – 二俣 (10:00) – 足尾橋 (11:35) – 稜線 (14:45) – 外ノ川下降 – 外ノ川橋 (16:45) / 行動10h45m
距離20.7km 累積標高+1,880m
メンバー : 5人(Waka , Kさん , M氏 , ポム , Nくん)
今シーズンついに沢はじめ!さてどこへ行こうとドキドキ場所を考えていたら、Kさんや周りのみんなが「清津川の足尾沢へ行きたい」と言い出した。
足尾沢は私も数年前より知っていて、いつか行きたいと思っていた場所だ。ただ、数少ない山行記録を読むにめっちゃ難しそう…。沢はじめで行って大丈夫かな?と考えていたが、一週間も悩んでいると、なんかイケる気持ちになってきて、「行くぞ!」となった。
当日はポム、Kさん、M氏、Nくんが集まり強豪の4人に見守られながらの遡行となった。
1日目
朝、4:30に「道の駅みつまた」へ集合。八木沢集落の「トレッキング湯沢1駐車場」に車2台、下山口となる外ノ川橋近くの林道脇のスペースに車2台をデポして、5:45登山開始。
駐車場からしばらく「清津川遊歩道」として整備されており気持ちの良い森林歩きが続く。ブナの巨木が並ぶ原生林は心を穏やかにしてくれる。
フィトンチッド広場と呼ばれるブナ広場を抜けると右に栄太郎峠への分岐が出てくる。これより先、鹿飛橋方面は令和元年より通行禁止となっているようだ。
6:35鹿飛橋着。手すりが撤去された鉄橋は高度感がありなかなか怖かった。
登山道は次第に藪に覆われてゆき不明瞭に。もじゃもじゃなくせに片側はすっぱり切れ落ちているので油断ならない。ここ最近は登山道しか歩いていなくて、藪漕ぎを全然してない私はおっかなびっくり。みんなは「これは藪漕ぎじゃないよ」とかいうけど、私にとっては激藪だ。笑
灼熱のトラバースを延々続けていく。身体中から滝のような汗が噴出し、ペースが上がらなくなってきた。2週間ほど前からやけに発汗量が増えた。塩分タブレットを食べつつ進んでゆくが、やっぱり体調が悪い。
心配したポムが、スプレーボトルに入った謎の白い液体を私に吹き付けてくれた。スーッとした良い香りと強い清涼感を感じた。おかげさまでちょっと回復。
白い液体、良かった。今度私も作ってみようかな。
道は相変わらず不明瞭で、途中全く分からないところや、もはや道がなくて沢登りの高巻きですか?みたいな箇所もちらほら。
歩き始めて4時間後にようやく足尾沢の出合に到着した。私のペースが遅くて時間を要したことは明白で申し訳なく感じた。N君がしんがりで、皆から遅れ気味の私の後ろをずっと歩いてくれてありがたかった。
清津川本流の断崖絶壁も、足尾沢両側の壁も素晴らしい柱状節理で形成されており、圧巻の光景だ。
今辿ってきた廃道は自然に還ってゆく一方で、足尾沢へのアプローチは年を重ねるごとに困難になってゆくのだろう。完全に人が立ち入れなくなる日は近いのかもしれない。
いよいよ足尾沢の遡行開始。8ヶ月ぶりに履いたラバーソール。もはやどこがヌメってどこがヌメらないのかすら判断出来なくて、のっけからへっぴり腰の牛歩に…。
程なくして、第1の滝に阻まれる。登れない7m滝だったので左岸より巻き。私はポムの登ったあとを登ってゆく。ようやく傾斜の緩んだところまで登ったら、Kさんが上で待っていて「皆もう先行ったよー、なかなか来ないから心配したよ。」だって。皆んな早い!ってか私が遅すぎて申し訳ない。
1つ上の滝も一緒に巻き終えて、沢に復帰するところで3mの崖をクライムダウン。掴める灌木が無い。あれ?どうやって降れば良いんだっけ。すぐ下流に滝の落ち口があってワンミスが命取り。めっちゃ怖いんですけど。
みんなが見守る中、無限の時間をかけてようやく降り立った。もう出発から申し訳なさと悲しさしか感じていない。
引き続き沢を遡行すると、またすぐに5mの釜を抱えた滝が現れた。パッと見た感じ、弱点が見当たらない。M氏が左岸から突破を試みるも渋そうだ。
M氏が断念したため、N君が右岸側壁を登って高巻きを試みる。こっちも泥付きで悪そう…。
みんなが静かに見守る中、無事に突破!フィックスロープを張って、後続も登る。
登っていくと、中間支点のスリングの間に何故かロープが通ってしまっていて、そこでまたすったもんだ。結び目通過の方法は大して難しくなく、当然出来る自覚があったのだが、いざやってみると???知恵の輪状態。パニクっていると全く頭が働かなくなるものなのか。またここで時間を要してしまった。入渓早々もはや泣きそうです。
沢復帰の時、ぐずぐず泥斜面で危うく滑落しそうになった。もう嫌や…。
次の滝は登れる滝で、私は念の為お助けロープを出してもらう。流心に足を突っ込み突破。
程なくして霧が充満するようになる。沢はゴルジュ地形を呈し悪相に。目前には勢いよく水を噴き出す6mの滝。
M氏が右壁にロープを伸ばしてゆく。日の差さないゴルジュは留まっているだけで寒い。全員固唾を飲んで見守る。無事に上まで。ナイスー!
私はマイクロトラクションを利用して完全ごぼうで身体を持ち上げる。上でM氏が待っていた。見れば支点は超巨大な雪塊だった。人間がぶら下がってもビクともしないなんて、改めて雪って重くて丈夫なんだなぁと感じた。
落ち口のすぐ後ろには雪渓がポッカリ口を開いていた。
下を潜ると、程なくして雪渓を抜けた。前方にまた1つ雪渓があるが今度は先が見えない。
先に行ったNくんが戻って来ないので、2番手で私が様子を見にいく。時間にすると1〜2分だが、歩くと長く感じる。出口があって霧の向こうにN君の姿が見えた。無事に抜けられたので笛を吹いて後続に合図する。
次の雪渓はかなり短いが今にも崩壊しそうな危うい状況なので、右岸の斜面を高巻く。N君だけ下を潜っていく。N君が無事通過した後に、バコーン!と大きな音を立てて雪渓の一部分が崩壊した…。
斜面トラバースは傾斜が立っていてビビり気味。M氏が後ろから見守ってくれた。ありがとう〜。
しばらく1mほどの小滝が続いて快適。さっきまでのような渋い滝が現れないかヒヤヒヤしていたのでホッと一安心。
ふと後ろを振り向くと、正面に見える側壁のスラブ岩壁に1頭のカモシカが歩いていた。人が歩こうものなら滑落必須の絶壁である…。カモシカの身体能力に脱帽する。
小滝ではあるものの、大きな釜を抱えている滝が多く大半はヘツリでこなすが、中には泳がざるをえない所もあり、水に飛び込むと一気に身体が冷えた。
谷の奥に鎮座するどでかい滝が見えてくる。癒しパートは束の間だった…。
正面に現れたのは2段20mの滝。周辺は断崖絶壁に囲まれてまるで要塞のようだ。谷底にポツンと佇む私たちはなんてちっぽけな存在なんだろう。
弱点が無いので、先ほど眺めた柱状節理ドームまで戻り、右岸の支流から高巻きを試みる。登りになるとまた私の体力が削られてゆく。スリップ命取りの急斜面トラバースにまだ身体が慣れていなくて怖さを感じる。精神的にも体力的にも疲れてきて、気を抜かないように自分に言い聞かせて進む。ちなみに私以外は皆サクサク、歩きやすいねーなんて言って進んでいる。笑
途中で、ポツポツと雨が降り出し、やがて本降りになった。木陰でしばし雨宿りし、雨脚が弱まったら再びトラバース再開。思ったより短い時間で雨は止んでくれて助かった。まだ私たちはだいぶ下流にいる。足尾沢の集水域は広いのでこの雨が2時間以上続けば沢の増水の危険もあっただろう。
沢復帰はN君先行「降りれるよ〜!」と声がかかるが、2番目のポムの「結構怖い!懸垂した方が良いかも!」という声が聞こえてきた。N君は頭のネジぶっ飛んでる系なので、ここはポムの言うことを信じた方が良さそうだ。
3番目のM氏以降は約10mの懸垂下降。灌木帯からやがて崖になり、うまくクライムダウンするには20m滝の落ち口へトラバースして着地しなければいけなかったので、懸垂下降してよかった〜!と思った。笑
しばらく河原が続き久々の癒しパート。前方に雪渓の残骸が詰まっている。雪の密林を縫うように進んでゆく。手で触ると雪がグラっと動くので意外と油断禁物だ。
河原からゴーロ帯へ、巨岩を手足を使い登ってゆく。
そして、いよいよ目前に足尾沢の番人2段40m大滝が現れた。正面に天高く突き上げる大滝は迫力満点。
滝の直登は厳しいので巻道を探す。右岸のガレ斜面が唯一の弱点に思えた。
時刻は15:35、先人の記録だと大滝の巻きに2時間半かかっている。大滝を巻いたら幕営しよう、ということでいざ本日最後の核心へ突入。
最初は快適なガレだが次第に斜度が増してくる。尾根まで到達したら痩せ尾根をさらに高度を上げてゆく。岩が非常に脆く直径30cm以上の岩が簡単に動く。
高度をだいぶ上げたところでトラバースを始める。すると藪の向こうに滝が見えたのでまた高度を上げて引き続き高巻きしてゆく。私は疲れ切っていてまたペースが上がらない…。N君やポムが面倒見てくれて感謝…。他の皆は先行してルーファイしてて、変わりばんこに私の面倒見に来てくれて、本当申し訳ない。
そのうちルンゼに突き当たり着地。
ルンゼを横断した先は一枚岩の岩壁で、ここからどうやって進めば良い?と感じたが、なんとルンゼを少し下りたところから歩けそうなバンドが伸びていてうまくトラバースすることに成功した。私はついていくのに精一杯で一切ルーファイしてないが、仲間たちのルーファイ能力は非常に長けており、みんな流石だなぁと思った。何も出来なくてすまん…。
そしてついに眼下に河原が見えた!!!灌木を掴んで降り立つ。18:05、今日の行程が無事に終わったことにすごい安堵感があった。
右岸のやや高台になっている場所に幕営。男性陣が「焚き木集めてるから釣りしてきて良いよー。」と言ってくれた。今日1日魚影を見なかったので釣れない気がしたが、せっかくなのでM氏と釣りへ繰り出すことに。
上流で何度か竿を振ったが成果はなかったので、早々に退散。
ひと雨降ったため、Kさんが焚き火の着火に難儀していたが、無事に火は安定した。米を炊き、ポムの持ってきたウィンナーをみんなで頂いて、就寝。
2日目
朝、目を開けると周りが明るい。寝るときにKさんが「3時起床!」と皆に言ったっけ。それにしてはやけに周りが明るくない?でも起きている者は一人も居ない。
二度寝しよっかなー。と思ったが、絶賛寝坊中な気がして起き上がった。時間を確認したら4:30だった。ですよねー。笑
昨日の晩ひと雨降ったが、細々ながら焚き火は着火してくれた。煙がタープの下に潜り込み、皆んなが起き始める。皆によく眠れたか尋ねたら、やっぱり下地の岩が痛くて眠れなかった模様。私も痛くてほとんど眠れなかった。Kさんは半袖にシュラフカバーのみで寒かったらしい。唯一M氏だけは快眠だったらしい。流石、どこでも秒で寝れる寝師である。
ボソボソ朝ご飯を食べて、6:00遡行再開。
昨日、釣りの時に確認していたが、早速越えられない4m滝が現れる。右岸から巻き。
しばらくゴルジュが続く上に滝があったので、まとめて巻いてしまう。その後は釜を持った小滝がちらほら出てくるのでみんなでヘツリ大会。
そのうち、トイ状3m滝が現れる。先行したN君は水線突破!他の皆んなは左岸から巻き。この巻きは少し大変で、崖のような岩がツルツルでスタンス皆無。灌木を利用して先に登ったKさんにロープを垂らしてもらい、渾身のゴボウ登りで突破。
懸垂下降でゴルジュ内に着地する。見ると、N君がロープを繋げて先の釜でぷかぷか浮かびながらこちらを見ていた。「N君たら皆が来たのに、何遊んでるんだろ〜。」と他のメンバーが疑問に思っていたら、どうやら反転水流で戻ってこれなくなったらしい。ロープを引っ張り引き戻して一件落着。
ここからはゴルジュの幅が狭まり水流が強くなる。泳ぎパートの開幕だ。M氏がN君のライフジャケットを借り突破を試みる。後続はロープで引っ張ってもらい、続く激流小滝もM氏が華麗に突破してくれた。
ゴルジュは終わりを迎え、ポツポツ滝はあるものの渓相は穏やかになってゆく。私は体調が少し回復したようで、全体的に昨日よりは早く歩けるようになった。
現れた10m滝は左岸より巻き。
その後は巨岩帯、釜付きの小滝、河原がちらほら現れる。ロープが必要な悪場がないので、順調に進んでゆく。
11:35、足尾沢橋到着。ここから脱渓も可能だが、林道を延々と8kmほど歩かなければいけない。そして全員が、「ここにはもう来たくない。」と考えていた。最初で最後なので足尾沢をしっかり上まで詰め上げようということで方針は決定。
しばらく河原が続き、快適に距離を稼ぐ。沢足袋を履いてきたポムは足の裏が痛いようで、膨れっ面。足裏が痛くなるの、気持ちはよーく分かる。ただのゴーロも歩く場所を考えないとめちゃ痛い。
そのうちに5mの滝が数回現れる。水量が少なく全体にヌメり気味だが、皆慣れたもので続々登ってゆく。私はビビり気味w
ヌメるナメ滝を交えながらも、ポツポツと美しいナメ床が現れる。水量は少なくなりいよいよ源頭が近付いてきた。
水流が途切れた。周囲の笹が次第に濃くなってきたが、沢型がはっきりしているおかげで良い感じに回避しながら進む。
最後はいよいよ沢型がなくなった。M氏とポムが先行して藪漕ぎ隊長を務めてくれた。
そしてついに天国の詰めへ!
ポッカリと、そこには小さな原あった。
きっと訪れる動物はごくわずかであろう静かな空間。ひとときの間、その景観と足尾沢を無事に遡行できたことを噛み締めて、外ノ沢の下降に取り掛かる。
藪を漕いだらすぐに沢型が出てきた。なかなかの急斜面で小滝がポツポツ出てくる。慎重にクライムダウンしながらも高度を下げてゆく。
途中の7m滝は懸垂下降した。最初N君が「なんとかクライムダウンできそう!」と落ち口から見下ろして言っていたが耳を傾けなくて良かった…。
懸垂下降ののち、7m滝を見上げて思った。この滝クライムダウンするのは怖すぎるわ。笑
その後も一発8m滝が現れたが右岸より巻き下る。外ノ沢本流と合流すると渓相は穏やかになった。
ゴーロ歩きを続けていると目前に橋が見えた。いよいよゴールである。
16:45外ノ川橋着。
いやーほんとホッとした!深淵の谷から無事に生きて帰ってくることができました…。ただただ心強い山仲間たちに感謝である。
車道を1km程歩き、車の駐車地点へ。
17:15無事下山!
・・・・
清津川足尾沢は雪渓、高巻き、登攀、泳ぎ、ナメ、沢登りの魅力や大変さを全て詰め込んだような険しく美しい谷でした。そして改めて苗場山を取り巻く周辺山域の山深さに驚かされました。
この辺りは自宅から車で40分。また色々な場所へ足を運んでみたいと思います。
完全燃焼の沢はじめになりました!みんな、ありがとう〜!
ポムチム POM-CHIM DIARYでも足尾沢の記録が書かれてます!↓
遡行図
立ち寄り
越後とんかつ人参亭
( 11:30〜20:30 )定休日不明
〒949-6101 新潟県南魚沼郡湯沢町湯沢497ー4 (Google Map)
山屋の下山飯としてよく利用されるらしい人参亭に行ってきました!とんかつって言ったらもう「美味しい」しかないですよね。白ごはんの大盛りが爆盛りで男性陣が大変そうでした。笑