日 時 2021年1月20日(水)
山 域 乗鞍 (岐阜 平湯)
目 的 山スキー
行 程
1月20日(水)
6:30 久手川橋待避所 – 8:30 夫婦松 – 11:00 大崩山 (おおくえやま) – 11:45 猫岳 – 13:10 夫婦松 – 14:15 久手川橋待避所
人 数 単独
天 気 晴れ
雪 の 状 態
森林限界上はウィンドパック、風下や樹林帯は素晴らしいパウダー(下部、場所によりグサグサ雪)
私が生まれて初めてスキーをやったのは、2017年11月25日。
デビューしたのは、まさにここ平湯だ。
当時、立山へ行こうかと考えていたが、11月末にして総積雪量が5mと一気に増えた為に断念してこちらへ訪れた。(ちょうどその日も豪雪で24時間で110cmの積雪だった。)
その時は山スキーをやっている山仲間のMKさんにブーツと板を借りて、初めて履いた。
乗鞍スカイラインをシールをつけてひたすらハイクアップ。
夫婦松まで登り、引き返した。
帰りはトレース上を辿って緩斜面を滑走、初めてボーゲンをやった。
当時、MKさんは私と一緒に猫岳を目指したかったようだが、根雪がまるでなく、笹藪だらけだったので断念したようだ。
その時から「猫岳」の存在は知っていて、いつかは山頂までとずっと考えていた。
今回、奇跡的な好天に恵まれ、ついにそのチャンスを掴むことが出来た。
そして今回は初の単独山スキー。内心ドキドキだったが無事に行って帰ってこれて良かった。
朝、夜明け前に久手川橋待避所へ駐車。
私が出発する頃に、待避所へ一台の車が。
単独の山スキーのお兄さんだった。
目的地を聞かれたので「猫岳です。」と答えた。お兄さんはどうやら猫岳のお隣の「大崩山(おおくえやま)」へ向かうようだ。
短く会話をして6:30登山開始。
林道を少し進み、地形図上では尾根の末端部分に到着する。
尾根の取り付きはえらく急だ。
え?ここを登るの?
とりあえず隅っこから雪の斜面に取り付くも、思いの外雪付きが悪く踏んだ箇所の雪が崩れた部分から笹が出現した。傾斜は急。こんなの私の技術ではキックターンが出来ない。
地形図をもう一度確認し、やや北に進んだ地形の緩い箇所を目指す。
先ほど苦戦したのがバカらしいほどの緩斜面。簡単に尾根に乗り上げることが出来た。
尾根には薄らといつかのトレースが残されていた。
朝一の雪面は硬い。しっかり踏み込み1歩1歩慎重に進んでゆく。
標高差50m程の急斜面を越えると、緩やかな尾根がひたすら続いていく。
やがていつかのトレースは消えてしまった。
スネくらいの軽いラッセルをしながら高度を稼いでゆく。
そのうちに、後ろから今朝のお兄さんが追いついてきた。
明らかに私より体力がありそうなので、先に行ってもらおうと思っていた。
追いついた段階で、先に行ってもらった。
私はお兄さんのトレースを追っていくが、意外と追いつきそうになってしまう。
そういえば、普通に私が遅いからという理由で譲ってしまったが、それで良かったのだろうか?
ここは雪山だ。
今回のラッセルはさほど苦ではないから気にしなくても良いかもしれないが・・・。
ラッセルはラッセルだ。協力するという考え方もあるのではないか?
久々に山中で人と会った為、どういう対応をするべきなのか感覚が少し鈍くなっていた。
とりあえず適当なタイミングで回り道をして再び先行する。「私ペース遅いので、もしあれでしたら適当に追い越してください。」と声をかけた。
しばらくは、私が先行して進んでゆく。
空は快晴。日が昇り、太陽に照らされた雪面がキラキラと輝く。
そのうちに、私が尾根上の地形がボコボコした箇所をキックターンしながら登っていると、お兄さんは、別ルートからうまい具合に弱点を見つけて私を追い越して行った。
お兄さんのトレースに合流し、後ろから追っていく。
そのうちに私が休憩したりなんなりで次第にお兄さんの姿が見えなくなっていった。
うーむ、なるほど。
お兄さんのルート取りは非常に参考になる。
私は、常に「最短」を考えてしまい、地形がボコボコした斜面に突っ込んだり、藪に引っかかったりしてしまう。
お兄さんのトレースを追っていると、山スキーはいかに「起伏のない歩きやすい地形を選ぶか」が大事なのかと思い知らされた。
お兄さんのトレースを歩きながら私も高度を稼いでゆく。
8:30夫婦松に到着。
2017年にここへきた時は既に昼過ぎだった。
MKさんに、「猫岳へ登るならせめて10時前にはここへ着きたい」みたいな事を言われた記憶がある。スキーの扱いが慣れない私はそんな早い時間にたどり着くなんてアリエナイ!!と耳を疑った。
そんな夫婦松に、今回しっかりと8時台に到着出来たことがまた嬉しかった。
先行していたお兄さんが休憩していたので、挨拶を交わす。
私が休憩している間にお兄さんが再び先行していった。
夫婦松からは、しばらく歩きやすい緩斜面が続く。
地形がボコボコしている箇所、木々の間隔が狭い箇所があるが、お兄さんのトレースはうまい具合に弱点をついて効率良く登ってゆく。
標高点2,228m地点にて乗鞍スカイラインの道路と合流。
ちょうど、道路を進んでいくお兄さんの後ろ姿が見えた。
地形図を確認すると、道路は大崩山よりやや北東方面へ進んでいる。
ここは、道路をショートカットして尾根伝いに進んだ方が良くないか?
ここで私はお兄さんのトレースを外れて道路をショートカットする。
そのうちに1つ上の道路と合流した。
そこにはお兄さんの姿もトレースも無かった。
ここまで登れば、いよいよ山頂も近い。
猫岳のみ登るなら、ここから南東へ伸びる乗鞍スカイラインを進んで、大崩山と猫岳のコルへ詰めあげるルートもアリだと思ったが、今回は大崩山経由の尾根通しのルートを取った。
今まで(私としては)傾斜のある沢地形をハイクアップした経験が無いので当ルートを登った場合のイメージがまるで沸かず不安があった。
思いもよらず難儀して、結果的にピークを踏めないのは嫌だ。
大崩山も登ってみたいし・・・。
と、色々と考えがあったので、今回のルートに落ち着いた。
道路を外れて、再び尾根に乗る。まず目指すピークは大崩山だ。
取り付き付近はなかなか地形の起伏がある。
吹き溜まって盛り上がった雪などを巻いて高度を稼ぐ。
次第に傾斜も地形の起伏も落ち着き、登りやすくなった。
やがて木々が少なくなり、開けた尾根を進んでいく。
大崩山まであと僅かのところで、北側から伸びているトレースと合流した。
あれ?これはお兄さんのものではないか。
てっきり私が道路をショートカットした地点で追い抜かしたものかと思っていたが、そもそもその時点で全く違うルートで進んでいたようだ。
お兄さんはおそらく、北東の道路を進み、そのまま沢地形を詰めたのだろう。
私は尾根を進み、見事にボコボコに苦戦した。
途中から私は我が道を進んだが、やはりお兄さんには敵わなかったようだ。ルーファイが上手いと思った。
11:00大崩山到着。
お兄さんも居た。もう降ってしまうかな?と思っていたけど、まだ板にシールが張り付いているのを見てちょっと安心。
声をかけて、一緒に展望を楽しむ。
尾根を進んだら、ボコボコしてて歩きにくかったと伝えると、沢の方が歩きやすいと思う。と言われた。ルート取り、色々と参考になりました。と伝えた。
お互いに写真を取り合い、お兄さんは、大崩山から一足先に下山。
私は引き続き猫岳を目指す。
続く稜線には野ウサギの自由な足跡のみ。
風は弱く、快晴の中の稜線漫歩。
大崩山から猫岳の間はほぼ平坦。
アップダウンもある。滑降対象としては価値が無いかもしれないが、素晴らしい景色の中「歩く」だけで非常に心が満たされた。
私はやはり「山歩き」が好きなのだ。
猫岳の登りに差し掛かると、西風が吹き付けてくるようになる。
山頂付近に雪庇が少し発達していたので、北側から巻くように進む。
雪面がカチコチだったらクトーかアイゼンを装着しようかと思ったが、ちょこちょこ雪の中から飛び出しているハイマツの上に逃げつつ登ったら問題無かった。
11:45猫岳山頂到着。
槍穂高をはじめ、笠ヶ岳や常念・蝶の展望が広がる。
西を向けば白山も。
目前にはいつか山スキーで登ってみたい四ツ岳。そして乗鞍岳が見えた。
大崩山では弱風だったのに、こちらではなかなかの強風。
手早く準備を済ませ、滑降準備。
北西方向を見下ろすと、本来進む予定だった乗鞍スカイラインと、猫岳と大崩山のコルに詰めあげる沢地形が見えた。
沢地形は思いの外木々が生えており、意外と安全に滑り込めそうだ。
まだ山スキーでの「周回」は敷居が高いと思っていたが、大崩山に戻るより、こちらへ降った方が時間も早そうだ。
少しやってみようか。
いよいよ滑降開始。
上部のシュカブラ発達地帯、ハイマツ地帯を慎重にこなすと、硬いウィンドパックに覆われたバーン。沢地形に入ると、今シーズン一番のパウダーが待っていた。
上部少しだけ、起伏があり滑りづらかったが下部にいくほど起伏がなくなり滑りやすくなった。
初心者なので、木にぶつからないように1ターン1ターンゆっくりと降る。
すぐに乗鞍スカイラインへ合流。
トレースの無いスカイラインは、傾斜が緩いので手漕ぎしながら進む。
やがて登りのトレースに合流し、トレース付近を滑りながら高度を落とす。
木々が密だったり、地形の起伏があるので、なかなかスイスイとは滑ることが出来なかった。
高度を落としていく程に、日射により溶かされたグサグサ雪に。
突然、滑りが悪くなったと思ったら、雪が下駄のように板にくっついていた。
うっかりブラシを忘れてしまったので、コンパスでゴリゴリと氷を剥がす。
水分もタオルで拭き取り、改めて滑降。
そうしたら、また下駄になる。
下駄雪を取り除くのにいちいち手間と時間がかかる。
夫婦松へ降るまでに計3回は下駄になってしまった。
原因はなんだろうか?
てっきり動物のオシッコでも踏んでしまったのかと思っていたが、もしかしたら出発前にワックスを塗らなかったからかもしれない。
今まで、ワックスを塗らなくて困ったことが無かったので、手入れを疎かにしていた自分がいた。
今回は非常に後悔した。反省。
今後はしっかりワックスを塗ろうと思った。
夫婦松からしばらく高度を下げると、疎林になり、素晴らしいパウダー斜面。
既にいくつかのシュプールが刻まれていた。
本日山頂で会ったのはお兄さん1人だったので、下部でパウダー滑降のみ楽しむ人もいるのだろう。
時間があったので、ルートとは異なる斜面にも滑り込んでみた。
一瞬で滑った斜面も登り返すのは少し大変。
尾根取り付き付近の急斜面は場所によりカリカリだったので、そこは気をつけて。
パウダーを楽しみ降る。
14:15駐車地点無事帰着。
素晴らしい笠ヶ岳に見送られて平湯を後にした。
【参考書籍】