2022年7月2日(土)
5月末にトマさんがツイッターで行った発信、
今シーズンの山スキー・ボードシーンは、なんとなく盛り上がっていたように見えた。初滑降系なんて少し前まで御大オンリーみたいな時期あったけど、若い人でやる人が増えた?ように思う。急斜面、距離、登攀、フリースタイル色んな人がいて面白い。課題と成果を報告するような山滑りmtg.やりたい。
— Tomahawk (@TomahawkSki) May 26, 2022
という言葉からはじまり、今回実現した報告会。
幹事はトマさん(@TomahawkSki)の他にかなこさん(@kynpy)、hatchさん(@wakhattori)が務めてくださり、総勢30名ほどが集まる報告会となった。私もトマさんがお誘いくださり、僭越ながら報告会に参加させていただいた。
参加者の皆様は面識こそないもののネット上で認知している方々で、当日は非常に濃ゆいメンバーが集結した。個性的な面々が集う中でちょっと緊張したが、あの人に会えるのか〜と楽しみでもあり。素晴らしいプレゼン発表と、歓談も含め大変刺激の得た1日となった。
当日17:00より乾杯&報告会からスタートし、早速お待ちかねのプレゼンタイムが始まった。
会津周辺の山、ショートスキーとパックラフト:中澤慧
まず初めは私の山仲間でもあるKさん(@532shg)の発表から。Kさんが今年2022年4月2日〜3日に行った春の会越横断(初の試み?)の記録と絡めてショートスキーの有用性についてを発表。
↓ヤマレコの記録 春の会越横断
私もまたこの記録に感化されてショートスキーを買った。
南会津の中で、会津駒ヶ岳周辺は山スキーでも有名なエリアだ。稜線が広いので残雪期でもシールでハイクアップでき、継続して快適な滑降が楽しめるが、そこからやや北上した毛猛山、村杉半島、会津朝日岳のエリアはグッと山容が急峻になる。
標高が低いのでゴールデンウィークにもなると稜線の雪はほとんど落ちてしまい藪尾根となる。しかし沢筋にはまだ滑れそうな残雪が詰まっている。藪尾根に阻まれ誰にも見向きされない未滑降の斜面や、未知の場所が沢山残されているはずだ。そんな山域へ入り込む際にショートスキーの機動力は生かされる。
現在、知りうる限りでショートスキーを使って山スキーをする人は非常に少ないが、今後、スタイルの1つとして少しでも広まってくれればなぁと私も思います。

山スキー1年目報告:急斜面とクライミングの関係性:てる
日本を代表するスーパークライマー大木輝一さん(teru.teru.bo_zu)が、今シーズンより山スキーに目覚める。山スキー1年目で、唐松不帰Dルンゼ、白馬鑓中央ルンゼ、白馬2号雪渓、小蓮華直登ルンゼ、杓子AB間ルンゼ、奥大日東面、奥穂直登ルンゼを次々と滑降。
なぜ山スキーを始めたのか?という話からはじまり、そのモチベーションの根源、斜度に対する恐怖についてなどの話をしてくださった。トマさんがてるさんに質問を投げかけるインタビュー形式の進行だったが、まるでロクスノのインタビュー記事のような深みのある素晴らしいお話を聞くことが出来た。
↓てるさんのクライミングの記録

てるさんは、今までフリークライミングばかりで山へ登るのは本当に初めてらしい。山スキーがきっかけで初めて行った涸沢カール、白馬の稜線から眺める朝焼けなどの景色に大変感激したようで、その素晴らしさを目をキラキラさせながら語ってくださった。
体力や技術ももちろんだが、山へ対する素直な気持ち、純粋な好奇心もまた創造的な登山を行なってゆくのに必要な要素だと思う。私からみて、今現在その全てを兼ね備えているてるさん、今後の活躍が楽しみです。陰ながら応援しています!

山のリスク管理、山行前後の効率化、地獄の流儀:がんちゃん
地獄軍団のメンバーであり、大人気ブログ「がんちゃんの雪山讃歌」のブログ主であるがんちゃん(Sanchan33)の発表。地獄軍団は山スキー界で知らない人はいない?程の有名集団であるがその実態を知るものは少ない。「地獄の中身お見せします!」ということで地獄軍団のあれこれを教えてくださった。
↓がんちゃんの雪山讃歌
地獄の掟、地獄軍団の必須装備や推奨装備などからはじまり、地獄軍団の山行計画の立て方や年末年始の遠征時の毎日のルーティーン。無駄を省き、効率良く毎日山へ行くためにどうしているかなどをお話してくださった。
私自身、地獄軍団の皆様は時間管理が非常に優れていると常々思っていて、今回話を聞いて、やっぱり凄い・・・。と思った。山が強いのは当然だが、メンバー全員、仕事出来る感もすごい。その他、ちょっと面白い小ネタも披露してくださり、私の地獄軍団へ対する印象が多少はマイルドになった。笑
発表後の質問タイムでは皆興味津々のようで、がんちゃんに対して質問が集中した。噂の地獄軍団、その中身を知ることが出来て良かった。私も日常生活から色々改善していきたいです・・・!

山スキー1年目報告:信越トレイル、オートルート: かなこ
かなこさん(@kynpy)といえば、ロングトレイルで個性的な記録を打ち出すことで有名だ。2019年5月に奥多摩駅から八ヶ岳へ、総距離178kmを10日間で歩ききった記録は知っている人も多いだろう。そんなかなこさんが今シーズンから山スキーデビューをした。
山スキー1年目でありながらも、かなこさんらしい個性的な山行が炸裂。誰もやっていない素晴らしい記録の報告があった。
↓ヤマレコの記録 霧ヶ峰・美ヶ原中央分水嶺トレイル38km 1泊2日
↓ブログ「今日も明日もやまのこと」信越トレイル 斑尾〜苗場 4泊5日 ソロスキー縦走
なんとこの時、山スキーでの泊まり山行(しかもかなこさんはツェルト泊!)は初めてらしく、泊まり山行に対する試行錯誤や工夫についても面白い話を聞くことが出来た。
テントやツェルトを使用した泊まりのスキー山行は、山スキー人口に対してそもそも実践する人が少ない(気がする)し、私自身、最初の泊まりのスキーは中々勇気が湧かなくて山仲間のKさんが同行してくれてようやくデビューした。
山スキー1年目にして単独でそこまでやっちゃう行動力は目を見張るものがある。
信越トレイルの山行を終えて4日後には黒部横断、一ヶ月後には日本オートルートをこなしている。かなこさんのフットワークの軽さはずば抜けている。
きっとかなこさんの頭の中には常人には思い付かない、次なるロングトレイルの計画が思い浮かんでいるはずだ。今後の山行も楽しみにしてます!

シーズンの山行報告、初滑降や装備について:遅刻軍団
滑降、体力、技術共に優れている若手の山スキー・ボード集団「遅刻軍団」の山行報告。全員モチベーションも高く、今シーズンはコンディションにも恵まれたようで、いくつかの素晴らしい山行記録が残された。
①hatchさん(@wakhattori)からの報告(初滑降)
②もるさん(@moru26)からの報告
③いっしーさん(@isshijitensha)からの報告
どれも目眩がするような記録ばかりで、ナイストライ!としか言いようがない。ヤマレコでは書かれることのなかった緊張や迷いの感情も、当人の声で聞くことでリアルに体感することが出来た。さすがスティープを攻めるだけあって、雪崩や雪質に対する危機管理能力も高く、さすがだなぁと感じた。

北岳バットレス・ヒドゥンガリーの初滑降は三浦大介さん。18年前に既にこのラインを見出して滑降した、山スキーのレジェンド。三浦さんのバトンを引き継ぐのは、他でもない「遅刻軍団」ではなかろうか?
その素晴らしい熱意を絶やさず、今後もワクワクする記録を残していって欲しい。私には到底真似できませんが陰ながら応援しています!
その後、もるさんから山スキーの道具選びについて、鉄チンさん(@hiro_tetsu)から山で使うアマチュア無線について、最後はテラ(@terako258O)から黒部源流の山行報告と、遅刻軍団の山飯についての発表があった。
強い山屋は技術もさることながら装備にもしっかりと意識が向いている。滑りを楽しみつつ、軽量化出来る装備は軽量化してバランスをとる。もるさんのたゆまぬギア研究の末のお勧め装備をお聞きした。私は滑り系の山行はあまりやらないが、「楽しく滑れる」っていう言葉に魅力を感じる。騙されたと思って、おすすめのスキー板買っちゃおうかな?笑
山スキーで特定小電力無線機(いわゆるトランシーバー?)を使っている人は多いかもしれないが資格が必要なアマチュア無線を使用している人はどれくらいいるか?実際に遅刻軍団ではアマチュア無線を持っていたおかげでアクシデントをスムーズに対処できた例もある。(ヤマレコ:西穂高岳 途中撤退)
私も一応アマチュア無線4級を所持し、秋葉原で2万円の無線機を購入して開局もしたが、実は山には持っていっていない。笑
そもそも無線機をまだ使いこなせておらず、見知らぬ人と対話するのが緊張するし、コールナンバーを言わなければいけないのがなんだか億劫に感じてしまい。(ただの無線初心者!)あと無線機ちょっと重いし。しかし鉄チンさんのお話を聞いて、まずは使いこなせるように練習しようかな?とも思った。気が向いたら頑張ってみます・・・!
金銭的コスパが良くて最軽量の山飯といえば「カレーメシ」だろう。遅刻軍団の皆様も例外でなく。しかしいくら猛者だからと言って連日カレーメシでは次第に精神が崩壊するらしく、人によってはアレンジをしたり別の食事を食べているのが意外だった。笑
テラはなおカロリーコスパも徹底するらしくカレーメシに牛脂(1個20g 188cal)を入れて食べるらしい。今回プレゼン発表はなかったが、テラもまた軽量化大好きなギアオタクである。プレゼン後に手持ちのザックを4〜5個ほど見せてもらった。大量のザックを目に、テラも、もるさん同様たゆまぬギア研究をしている背景が垣間見えた・・・。10年後、どんなオタクに成長しているのか楽しみ!
懇親会
17:00からスタートしたプレゼン発表は、1人あたり30分の予定だったが、なんだかんだ伸びて全てが終了した時には21:30になっていた。
この後は懇親会タイム。人の多さにコミュ障を発揮した私だったが、少しだけでもお話したい方々と会話できて有意義な時間になった。
2階が寝床になっており、次第に脱落者?が増えてゆく。私は1:30頃まで交流していたが流石に眠くなり上の階へと引っ込んだ。翌朝は6:00頃に起床。どうやら宴会は4:00まで開催されていたらしい。大学生か。笑
翌朝も残っていた人たちとのんびりお話して、9:00過ぎには解散した。
まとめ
「どんな山をやりたいのか?」
今回の集まりでは色々なスタイルの人の話を聞くことが出来て大変有意義な時間になった。
どの道具が良いとか悪いとかではない。それはあくまでも山スキーの方向性やスタイルによって異なる。
確かに、山スキーというジャンルの中で、全員が同じ目標を持って同じことをやっていては面白くない。
ショートスキーを勧める人がいる一方で、長くて太くて重い板を勧める人もいた。どちらも個性があって理屈があって、為になった。
方向性は人それぞれだが、全員に共通するのは山が好きで、強い興味関心、熱意を持って取り組んでいるということだ。山に対するそれぞれの向き合い方に対して大変刺激を受けた。
また、今回は数人の方に発表していただいたが、決してそれらだけが素晴らしいという訳ではなく山行に優劣はないということをトマさんが念を押して話してくださった。
同じような言葉を植村直己さんも言っていたことを思い出した。「どんな小さなハイキング的な山であっても、登る人自身が登り終えた後も深く心に残る登山が本当だ。」と。
私も、自分らしい山スキーを自信を持って楽しんで、実践していけたらと思います!
↓参加者の報告記事

