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東北山スキー

厳冬期の和賀山塊へ 羽後朝日岳

東北

日 時 2020年1月23日(土) 〜 24日(日)

山 域 東北 和賀山塊

目 的 雪山登山 (山スキー スノーシュー ワカン)

行 程
1月23日(土)
5:50 除雪終了点 – 6:45 渡渉点 – 10:00 標高点1,091m – 10:50 幕営地 (標高1,190m) 11:10 – 11:20 沢尻岳 – 12:15 大荒沢岳 – 13:15 羽後朝日岳 – 14:50 沢尻岳 – 14:45 幕営地 (標高1,190m)

1月24日(日)
6:30 幕営地 (標高1,190m) – 8:05 モッコ岳 – 9:15 幕営地 (標高1,190m) 9:40 – 10:05 標高点1,091m – 11:20 渡渉点 – 12:00 除雪終了点

距離 : 20.1km 累計高度(+) : 1,957m 累計高度(-) : 1,952m

人 数 4人

天 気 1日目は晴れ、2日目は標高1,300m付近はガスと強風。高度を落とすと曇り空。

2021年1月 過去の天気図 気象庁

雪 の 状 態
森林限界上はウィンドパック、シュカブラ。樹林帯はサンクラストのモナカ雪。

Powder Search

土日の天気予報を確認すると、ちょうど南岸低気圧が接近しており、関東や甲信越辺りは大方悪天予報のようだ。
代わりに、普段なかなか晴れ間を見せない東北山域は晴れ予報。
こんなチャンスは滅多にないぞと、先週に引き続き、今週も東北へ赴いた。

今回の目的地は和賀山塊の羽後朝日岳(うごあさひだけ)。
岳人マイナー12名山の1つにも数えられている。(岳人No.658 2002年4月号にマイナー12名山特集が記載されている。)

SさんとM氏もお誘いし、Kさんと4人パーティー、1泊2日で山頂を目指すこととした。

1日目:羽後朝日岳

前日の夜、最も近いサービスエリアまで移動し仮眠。
ここら辺はコンビニが一切無い。下手をすると食料難民になるので、忘れずにあらかじめ食料を調達しておく。

当日の夜明け前に、西和賀町の貝沢集落へ向かう。
除雪終了点に車を停めさせていただき、5:50登山開始。

私とKさんはスキー、Sさんはスノーシュー、M氏はワカンというバラバラな混成パーティー。
スキーの方が歩くのが楽だからと、Kさんがテント本体、私がポールを担いだりと共同装備の分担を気にしたがSさんもM氏もこっそりと御馳走や装備あれこれを隠し持っていたので、結局荷物の重さでは私が一番軽かったかもしれない。

いつも2人には感謝ばかりだ。(もちろんKさんにも。)

夜明け前の林道を歩く

しばらく林道を歩き、尾根の取り付きへ向かう。
夜明け前で雪面は硬いものの樹林帯へ入ると時折踏み抜きがあった。
スキー歩行を初めて見たM氏が、「スキー1mmも沈んでない!!」と驚いていた。
いいぞいいぞその調子だ。(スキー買っちゃえ。)

当初の予定では、沢の渡渉を確実に行う為にも、地形図上に表記されている林道を進み、おそらく存在するであろう橋から左岸に渡り尾根に取り付く予定だった。

実際のところ林道の道らしい道は地形図上の表示とは異なる方向に伸びており、結局知らぬ間に尾根の取り付き付近まで沢の右岸を進んでしまった。

渡渉地点を探して、無事に左岸へ渡る。

渡渉点(photo by Kさん)

渡渉すれば、尾根の取り付きはすぐ目の前だ。

雪面はやはりガリガリ。

けっこう幼木が多い。

尾根のライン上にはブナの広葉樹林が広がっているが、一歩ラインを外れると針葉樹林帯という不思議な植生。ブナ地帯には幼木も多く藪がそこそこうるさいので、時おり針葉樹林帯の中を歩きつつ高度を稼ぐ。

皆楽しそうだ。

標高650m辺りから針葉樹林は早々に姿を潜め、ブナ林のハイクアップが始まる。

スノーシューやワカンはそれなりに踏み抜きがあり大変そうだ。
M氏が珍しく疲れている様子。

標高950m直下はやや急登。
場所によりサンクラストしており滑りやすいので一部クトーを装着して登行した。

クトーを装着する前にうっかりバランスを崩して2mくらい滑り落ちてしまった。
運悪く?その現場を目撃したKさんに心配されてしまった。
場所が樹林帯だったから良かったが、もし森林限界上で同じように落ちてしまったら普通に「危険」だ。
クトーを装着するかしないかの判断は疎かにせず、安全を一番に考えた行動をしたい。

急登を越えると、後は幕営予定地の沢尻岳まで緩やかな斜面が続くのみ。

モッコ岳
見えているのは高下岳や根菅岳だろうか

そのうちにモッコ岳や和賀の山々も姿を見せてくれ、みんなで絶景に感動しながら登ってゆく。

笑顔の皆

先日登った白髪山が2ヶ月ぶりの登山だったというSさん。
あまりにも久々で山へ対する愛を忘れかけていたようだが、美しい山々を目の当たりにして、すっかり元通りになったようだ。

やっぱり山は素晴らしい。何よりSさんが元気になってくれて良かった。

尾根の東側には雪庇が発達している。
付け根には大きく割れたクラック。
今は露骨なクラックだが、これが新雪に隠れるとタチが悪そうだ。

いよいよ標高点1,260m、沢尻岳が近づいてきた。
広い雪の尾根にはブナの木々。見上げる空は真っ青。
素晴らしく贅沢な空間。
まだピークを踏んだ訳ではないが、「来て良かった」と心の底から思った。

10:50、標高1,190m付近、樹林帯がもうそろそろ終わる場所でテントを張る。

11:10、不要荷物を全てテントにデポし羽後朝日岳を目指す。

M氏がだいぶお疲れモードだったので「テントで待ってる。」なんて言い出さないかヒヤヒヤしていたが心配ご無用だった。
Sさんが「和賀が晴れるのは貴重なんだぞ。」とM氏を必死に励ましている。

確かにそうだ。東北の厳冬期でここまで晴れるなんてそうそうないだろう。
それは登る時に見かけた雪庇が物語っている。好天が続くような山域で雪庇が発達するはずがない。
素晴らしい日に、和賀を歩ける喜びを噛み締める。

沢尻岳への登り
西を向けば連なる山脈が見える。
東を向けば美しく白いブナ。

幕営地からすぐに森林限界を越える。
開けた雪原と真っ青な空。ひたすら続く絶景に感動が止まらない。

高下岳(正面)の向かって右隣が和賀岳か
大荒沢岳とその後ろに羽後朝日岳。向かって右端が志度内畚(しとないもっこ)

沢尻岳に到着すると一層素晴らしい展望。

沢尻岳から羽後朝日岳まではアップダウンがある。
1つめのコルまで、Kさんが気持ちよさそうに滑降して一足早く辿り着く。
私はシールのまま滑降。

木々に張り付いた霧氷はまるで白い珊瑚のようだ。

沢尻岳の山頂直下は積雪が薄く、スキーを履いていてもズボッと踏み抜く場所があった。

一足早くコルに到着したKさんと正面に大荒沢岳。

コルから大荒沢岳に向けて、再び登り返しが始まる。

雄大な山々に囲まれて。
早池峰山が見える。
岩手山
振り返るとモッコ岳

大荒沢岳手前のポコの登りは緊張して冷や汗が出た。
北側斜面をトラバースしつつ尾根に乗り上げたが、斜面がややカリカリしていた。

どこまでも美しい稜線。背後にあるのが大荒沢岳

無事に大荒沢岳を通過し、いよいよ羽後朝日岳が近づいてくる。

秋田駒ヶ岳

雪をべったりくっつけた秋田駒ヶ岳が美しい。こちらも登ってみたい山だ。

羽後朝日岳とSさん
山頂直下最後の登り(photo by Kさん)

最後のひと登りを終えて、13:15いよいよ羽後朝日岳へ到着した。

奇跡的な好天の1日。
こんな深い山の懐にひたれるとはなんて幸せな事か。

羽後朝日岳山頂にて
高下岳と和賀岳(クリックして拡大)

4人で記念撮影をし、私とKさんは滑降準備に取り掛かる。

羽後朝日岳から滑降


雪面はウィンドパックされているものの、シュカブラはそこまで発達しておらず滑りやすい。

SさんM氏より一足早くコルまで降り、2人が来るまでにシールを取り付けてハイクアップの準備を行う。

昼寝をするM氏

歩きの2人もそのうちにコルまでやってきた。
あまりにも快適なので、寝師のM氏が早速寝転がる。

14時過ぎになり、上空の雲量がやや増えたものの、どこまでも美しい和賀の山々だった。

14:45幕営地無事帰着。

みんなでご飯

みんなで鍋を囲み、ソーセージや鴨肉をつまむ。
疲れていたので早々に就寝する。

2日目:モッコ岳

翌日、4:30起床。
のんびりと支度をして6:30モッコ岳を目指す。

朝一の山は残念ながら曇り空。

沢尻岳からモッコ岳の間はさほど距離はないが、雪庇・シュカブラが発達しており、地形図上で見るよりもアップダウン・急傾斜が多い。

東風が強く、けっこう寒い。
時折山の陰に隠れて小休止。

樹林帯へトイレに行ったSさんが、クラックに落っこちて全身穴に入ってしまったようだ。
大事には至らなかったものの、恐ろしい話だ。

私は、スキー板の調子が悪く、ビンディング(キングピン)が上手く閉まらない。
よく確認すると、おそらく雪詰まり?
前日テントに入る前にも念入りに雪を落としたつもりだったがそれでもダメだったようだ。

道中、何度も板がスッと外れてしまう。
何度もブラシで雪を落とすが、なかなか奥までとれない。
(※山スキーではこれ↓を携行している。)

枝で奥までほじくり返していたら、そのうちにビンディングが元通りになったのでとりあえず安心。
しかしまぁ、ビンディングの不具合はあまりよろしくない事態だ。
今度ビンディングを買う時はキングピンはやめようかな・・・なんて思ってしまった。

シュカブラの発達したモッコの稜線はまさにモッコモッコしている。
歩きづらく、スキーではなかなか捗らない。
これは滑りも修行になるだろうということで、適当な場所でスキーをデポしてツボ足で進むことにした。
多少沈む場所もあるが、快適に進めるようになった。

高度を上げる程に視界が悪くなる。

8:05、モッコ岳山頂到着。
山頂付近は一層強い風が吹き付け、濃いガスに覆われている。展望は皆無。

展望なし

お互いに写真を撮り合い、早々に下山を開始する。

山頂から50m程標高を下げると、強風地帯から抜けたのか、やや風がおさまった。

ぼんやりとガスの向こうに羽後朝日岳が見えた。
森吉山も見える。

澄み切った青空ではないものの、空のグラデーションが虹のようで綺麗だった。

沢尻岳まで戻ってきた。

沢尻岳まで戻り、幕営地へ向けて滑降準備。

Kさんが「先に滑ってていいよー。」というので準備を終えた私が先に滑り始める。
私は、周りの植生と、登った距離が朝降った距離と比例していない気がしたという事と、先ほどの皆の会話から、勝手に現在地を50m程勘違いしていた。
若干山頂方向にトラバースしてから下へ降りるつもりだったが、実際は既に山頂に近い場所にいたようで、真っ直ぐ降るだけで良かった。
トラバースすることで、うっかり東側の沢地形に滑り込みそうになってしまったが、Kさんが気づいて「違うよー!」と声をかけてくれたので助かった。

どれだけ疲れていても、気を抜かず、GPSを確認するべきだったと反省。
山スキーはとにかくスピードが早い。「思い込み」は命取りだ。

9:15、無事テントに戻り撤収準備。
9:40、改めて下山開始。
Sさんが荷物持つよと言ってくれたので、お言葉に甘えてポールを持ってもらった。

幕営地直下はなだらかで、比較的樹林の間隔も広く快適だったが、次第に藪が煩くなりまた雪質もサンクラストのモナカ雪になり苦戦するようになる。

最初こそは、スノーシュー・ワカンのSさんM氏よりも早く降っていたが、転んだりしているうちに追い抜かされてしまった。

私があまりにも転ぶので、いよいよ「疲れた!もうヤダ!」と文句を叫ぶようになる。
ブログに「雪の状態:クソモナカ」って書いてやりたい程に、憤りを感じていたが、Kさんが落ち着けとなだめてくれた。
かと思えば、今度はKさんもよく転ぶようになり、次はKさんが発狂モードになる。
すると何故か私は冷静さを取り戻し、Kさんを「あともう少し頑張ろう!」と励ますようになる。
2人揃って冷静なのがベストだが、なかなかそうはならないのが現実だ。

Kさんのスキー板はパウダー仕様なので、ブレーキを取り付けていない。
その代わりにリーシュコードをブーツにつなげている。
もちろん転んだ時に板は流されなかったのだが、何故か板を履き直すときに、カラビナが勝手に外れて沢方向に向かって板が1枚流されていった。
かなり焦ったが、10m程流されて運よく止まってくれた。本当良かった・・・。

色々と困難があったものの、気力を振り絞って高度を下げていく。

やっと尾根を降り、あとは林道へ合流するだけだ。
行きで使った渡渉点がイマイチだったので、帰りはスキーを履いている事だし、少し南下して橋を目指す事にした。
結局、橋に到着する前に、適当な場所で渡渉してしまったが。

ここでいわゆる「認知バイアス」が働いてしまう。
てっきり沢は西から東へ真っ直ぐ伸びているものと思い込んでいたが、実際は途中で北に蛇行している箇所があった。
私たちは勘違いして進む方角を間違えてしまった。
渡渉を終えて、Kさんが「やった!これで戻れるぞ!!」と苦労から開放された喜びを叫び、早速沢を背中にして滑っていく。私もまるで疑問に思わず、ついていく。
自分たちの感覚では南へ進んでいるつもりだったが実際には東に進んでしまっていた。

そのうち行手に、地形図にはない小さな沢が現れて、KさんがGPSを確認して間違いに気づいた。

そのときはなかなかの絶望。

沢尻岳の山頂でKさんが間違いを指摘してくれたように、私も渡渉した時点で現在地を確認して間違いに気づくべきだったのだが、それが出来なかった・・・。

立て続けに起こるアクシデントに疲れていたせいもあるが、ただ疲れただけの理由でやっていいミスでは決してない。

今回は一緒に歩く山仲間としても頼りない事をやってしまった。
本当に反省した。申し訳ない・・・。。

再びシールを取り付けて改めて南に軌道修正。
沢は少し西に進むとすぐに雪の下に隠れて消えてくれた。
(渡渉せずに済んだ事は本当に良かった。)
さほど時間はかからず林道と合流。

SさんとM氏がぼんやりと景色を楽しみながら私たちを待ってくれていた。
待たせてごめんね。と言ったら、景色を楽しみながらのんびり歩いてたよ。と言っていた。
実際はかなり待たせたと思う。ありがたや・・・。

いよいよゴールも近い。

12:00除雪終了点無事帰着。

今回、奇跡的な好天に恵まれ、厳冬期の和賀山塊という奥深い山域に入れた事がとても嬉しい。
羽後朝日岳も素晴らしいピークだった。
私以外の3人は、2020年の秋に大鷲倉沢を遡行し、紅葉の素晴らしい和賀を歩いている。
私は当時藪を歩いて蜂窩織炎になってしまいその山行に同行出来なかった。

和賀山塊は秋田県内で最も広い原生林が残っている場所だ。
林野庁の指定した「森の巨人たち百選」の中にも和賀山塊の「日本一のブナ」と「日本一のクリ」が選定されている。
豊かな原生林をこの目で見てみたい。無雪期にも歩いて、その山深さに浸りたいと強く思った。

今回、奇跡的な好天の中、羽後朝日岳へ登れて良かった。
初めて歩いた和賀山塊。またいつか必ず、再び訪れたい。

↓Sさんの山行記録

厳冬の羽後朝日岳
2021.1.23-24 マイナー12名山は2002年4月号の「岳人」にて3人の登山家(沢登りのエキスパート)…

↓M氏の動画

↓秋の大鷲倉沢遡行の動画

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登山ガイドWaka
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