日 時 2020年11月14日(土)〜15日(日)
山 域 飯豊連峰
目 的 雪山登山
行 程
11月14日(土)一日目
6:35御沢(おさわ)野営場ー6:45御沢登山口ー9:30横峰ー10:45地蔵山下分岐ー13:15三国小屋ー15:55種蒔山ー16:45切合(きりあわせ)小屋
11月15日(日)二日目
6:10切合小屋ー7:15草履塚7:30ー8:10切合小屋8:45
ー9:25種蒔山ー11:30三国小屋ー13:15地蔵山下分岐ー14:05横峰ー16:05御沢登山口ー16:15御沢野営場
人 数 2人
天 気 晴れ

今週はどこの山へ行こうか。
週末の天気予報を見ると、両日共に晴れ予報だ。
どこでも行けるからこそ、どこに行こうか悩んでしまう。
これから季節は冬になる。
冬型気圧配置の影響で、次第に雪山を歩くチャンスは限られてくるだろう。
せっかく晴れているのだから、チャンスを逃さず雪山を歩くべきではないか。
雪のついた飯豊・・・。豪雪に閉ざされる前に行くべきでは。
チャンスは今だ。
私にとって初の飯豊連峰。
ラッセルはキツかったが、連なる稜線は雄大で美しく「また行きたい」と思わせてくれた。
1日目:御沢野営場〜三国岳〜切合小屋
前日、磐梯山SAで仮眠後、登山口の「御沢(おさわ)野営場」へ向かう。
てっきり駐車場は混雑しているかと思ったが、私たち以外には誰一人としていなかった。
トイレは既に封鎖されていた。
準備を済ませ6:35出発。

今日の午前中は強風予報。
駐車場でもそこそこの風が吹いている。稜線は少し寒そうだ。
尾根上はほぼ無風でむしろ暑い。
標高1,334mの横峰まではなかなかの急登が続く。
CO830m付近から雪が現れ始めた。

高度を稼ぐほどに雪は深くなっていく。
適当な場所でワカン装着。
雲ひとつない晴天。紫外線がじりじりと照りつける。
日焼け止め、サングラスは必須だろう。

9:30横峰到着。
今シーズン初の雪景色に思わず歓声を上げる。

森林限界を超えたが、思ったより風は強くなく快適。
まるで残雪期のような気候だ。
雪もグサグサのザラメ。
残念なことにワカンが壊れてしまったので、私はツボ足で進むことにする。
道中、多数の毛虫が雪面を歩いていた。
この子たちはどこから出てきたのだろうか?
暑すぎて道路に出てくるミミズはよくいるが、同じ感じなのだろうか。

三国岳手前の剣ヶ峰近くは痩せた岩稜が続く。
アイゼン、ピッケルを装備し、慎重に歩いていく。

登れない岩のピークを2つ右から巻いた。
なかなかの高度感があるが雪は安定している。
埋まった鎖を掘り起こしつつ進んだ。
13:15三国岳避難小屋到着。
ラッセルが深く、地蔵山分岐以降、思ったよりも時間がかかってしまった。
とはいえ、まだ昼過ぎ。腰を落ち着けるにはまだ早すぎる。
日没前には着くだろうという事で切合小屋を目指すことにした。


続く稜線にあるのは熊のトレースのみ。
引き続きラッセルをしながら進んでいく。
振り返ると、避難小屋からだいぶ距離が離れてきた。
と、ちょうど避難小屋に2人の人影が。
見ていたら、向こうが大きく手を降ってくれたので、振り返した。
あの2人は三国泊まりかな?なんてKさんと話した。

剣ヶ峰でアイゼンを装着してからそのまま進んでいたが、ひたすら続くラッセル・・・。
悪場も特に無いのでKさんがアイゼンを外し、再びワカンを装着した。
私はワカンが壊れたので、アイゼンつけっぱなしで頑張る。
調子が良いと膝くらいだが、時折ズボッと腰まで踏み抜く。
本当に残雪期のようだ。

目前左側のピークが種蒔山。右奥に本山が見えている。
いよいよ種蒔山手前のコル「七森」辺りに差し掛かる。
ふと振り返ると、2人がこちらに向かって歩いてきているのが見えた。
もしかして、さっき三国岳避難小屋から手を振ってくれた2人組?
早っ!!!
そして程なくして、追いつかれた。
若い男女の2人組。
ラッセルのお礼を言われて、先頭を交代してくれた。
2人ともツボ足でガシガシ進んでいく。
その後は4人でラッセルを交代しつつ進む。
私はここら辺で、今年一番と言っていいほどバテてしまった。
次第にペースが落ち、最後尾へ。
みんなのトレースを追うだけでも大変。
まるで協力できなくて申し訳なかった・・・。

やがて日没が近づき、山々が赤く染まり始めた。

3人ともその絶景にワーワー興奮し始める。
正直私は、疲れすぎて楽しむ余裕がなかった・・・。


16:45、とうとう切合小屋に到着。
長い長い1日だった。無事に到着出来て良かった。
切合小屋は2階から中へ入った。
室内は広々としており、かなり快適。
夜ご飯の焼きそばを食べつつ、土間を挟んで向こうに居る2人とも会話を楽しむ。
向こうの1人が新潟県の岳人だから、会越や下田川内の話をすると、どうやら逢塞川を遡行したことがあるそうな。
こんなピンポイントで話が盛り上がるとは凄い。Kさんも嬉しそうだ。
話をしていくと、なんとM氏の知り合いだということが分かった。
そういえば過去にM氏から新潟にヤバイ沢屋がいると言う話をされてヤバイヤバイ!って盛り上がった記憶がある。
なるほど。全てが繋がった。
ヤバイ沢屋ってこの人のことだったのか・・・。
M氏の知り合いのNさんと、相方のKちゃん。
山の世界が狭すぎてびっくりした。
それでも素敵な出会いがあって良かった。初冬の飯豊連峰、恐るべし。笑
夜19時半頃、就寝中にどこかから人の声。
Nさんが起き上がり外に様子を見に行くと、どうやら今6人の山岳会パーティーが到着したようだ。
(明日話しを聞くと、中津川から地蔵岳経由で入山したがラッセルで時間がかかったそう。)
バタバタと小屋に入ってきて1階に降りて行ったが、程なくして静かになった。
そりゃそうだよなぁ。流石に疲れるよな・・・。
夜中、お腹の調子が悪くて何回か起きてしまう。
外に出ると満天の星。雪の稜線は白く光っていて綺麗だった。
時刻は22時頃、疲れすぎて寝たと思った山岳会パーティーはいつの間にか再び起き出してひっそりと宴会をしていた。
なんだかんだ元気でちょっとクスっとしてしまった。
2日目:切合小屋〜草履塚〜同ルート下山
翌日は4時起床。
ゆっくりと朝食を済ませ、夜明けごろに草履塚まで散歩。

雲ひとつない素晴らしい天気。
地平線が太陽で赤く燃えている。
明け方の景色は好きだ。紺色からオレンジに変わるグラデーションの中で、山々がぼんやりと姿を見せている。

まだまだ、ひっそりと、静かな飯豊の山々。
次第に日が昇り、飯豊の山々が赤く染まっていく。


モルゲンロート。
美しい光景。
つい何枚も何枚もシャッターを押してしまう。

ぼんやりと見えていた、新潟、群馬の山々も次第に姿形がくっきりとしてきた。

ブラブラと草履塚まで歩きながら景色を楽しむ。
昨日より雪は締まっていて歩きやすいが、疲労が残っておりペースは上がらない。

7:15、草履塚到着。

ここで本山まで往復する2人とお別れ。
私たちは先に引き返す事とした。
昨晩、夜明け前出発をして本山まで歩くかどうか悩んでいた。
Kさんにどうする?と聞かれて「本山は行かない。」と言ってしまった。
あまりにも疲れていたし、ラッセルも時間がかかりそうだと思ったからだ。
いざ草履塚から本山方面を眺めると、今まで歩いてきた稜線と違い雪もそこまで積もっていない。
そこまでキツくなさそうだ。行っても良かったかもと割と後悔。
昨晩もかなり天気良かったし、ナイトハイクもやってみれば楽しかったかも。
実に魅力的な稜線・・・。
ただ私の足の筋肉がだいぶ疲弊している事は事実。
やっぱり無理せず引き返してきて正解だったとは思う。
でも次はもうちょっと頑張ってみたいと思った。

昨日は本当にキツかった。
今年色々行ってはいるものの、大方余力があり「疲れた〜!」とはあまり感じなかった。
今回は本気で「疲れた」。
ラッセル筋がまるで無いのだと思う。どうにかして鍛えなければいけない。
切合小屋へ戻ると、起き出してきた山岳会パーティーの方々に挨拶される。
全員が全員、「昨日は夜遅くにすみませんでした。」と謝ってきた。
地元の方のようで、毎年飯豊に来ているようだ。
感じの良い方々だった。
私たちがどのルートから来たのか尋ねられ、「御沢です。」と答えると、面白いことに全員から「剣ヶ峰はどうだった?」と決まって聞かれた。
地元では剣ヶ峰の登山道が怖いと有名だったようだ。
「ちょっと怖かった。」と答えておいた。
8:45切合小屋出発。

種蒔山付近から飯豊本山を眺める。
これで見納め。ありがとう、また来るよ。

一生懸命つけたトレースのおかげで、帰りはいくらか楽だった。

剣ヶ峰から地蔵山にかけての稜線上で再び雪面に転がる毛虫たちを目撃。
ピクリとも動かないのもちらほら・・・。
昨日の夜に凍死してしまったのもいるかもしれない。
本当、どうしてこんな場所にいるのだろう。

昨日今日で雪解けがかなり進んだようだ。
稜線も、樹林帯も、行きとは随分見た目が変わっていた。
昨日は誰一人会わなかったが、今日はちらほらと登ってくる人とすれ違った。
軽く会話をするが、・・・何だろう漏れなく皆個性溢れる方々だった。
16:15御沢野営場無事帰着。
下山後、駐車場で後片付けをしていると、軽トラに乗った地元のおじちゃんがやってきた。
挨拶をすると、「無事に帰ってきたか!」と言われた。
おじちゃん、東北のなまりが強くて、大方何言ってるか分からなかったのだが・・・。
どうやら登山届が提出されていないのに車が一台あったので心配していたそうだ。
あと一日遅れてれば通報していた(冗談?)と言われた。
この時期の飯豊は大変だろ〜と言われた(気がした)ので、大変だった!と答え、ご心配おかけしました。ありがとうございます。と伝えた。
それにしても、シーズンオフの登山ポストをしっかり見てくれていることに驚いた。
私もKさんも、家族に登山届を提出した。
地元の方にこんなに心配されるなんて、有難い気持ちと申し訳ない気持ちがあった。
今後も、命だけは落とすことがないように十分気を付けたい。
そして、初の飯豊連峰は本当に素晴らしい場所だった。
本山まで行かなかったことが少し心残りだが・・・。
また、今後もたくさん歩きに行きたい。
好天の2日。良い雪山シーズンのスタートだった。