槍・穂高・常念 無雪期特殊

晩秋の北アルプス 燕岳〜蝶ヶ岳〜徳本峠〜霞沢岳1/2

夏の活気も落ち着いた11月の上旬。静かな北アルプスを4泊5日で縦走してきた。
2日目以降は、山小屋も全て営業終了し、水の補給にも苦労した。
疲労の激しい山旅だったが、秋の爽やかな空の下、北アルプスの雄大な景色を堪能できた5日間だった。

日 時  2019年11月4日 (月・祝)〜11月8日(金)

山 域  北アルプス 南部

目 的  テント泊縦走

コース

 初日:中房温泉〜燕山荘
2日目:燕山荘〜大天井岳〜常念乗越
3日目:常念乗越〜蝶ヶ岳ヒュッテ冬季小屋
4日目:蝶ヶ岳ヒュッテ冬季小屋〜大滝山〜徳本峠
5日目:徳本峠〜霞沢岳ピストン〜上高地

国土地理院地図(YAMAPログより)

累積標高 (上り)4,723m・(下り)4,672m

人 数  1人

天 気  全体を通して好天

気象庁 過去の天気図

気象庁 過去の天気図

山小屋のアルバイトを終えて、どこか山に登りたくなった。
そんな中、「中房温泉行きのバス」が11月4日(月・祝)で今年度の営業を終える事を知った。
4日からの天気をヤマテンで調べてみると、ラッキーな事に好天が続きそうだ。

2日に自宅に帰宅したばかりで、本日は3日である。
なんと慌ただしいことか。しかし、このチャンスを逃してしまえば、次のチャンスは来シーズンになってしまう。

これは行くしかない。

早速、山と高原地図を広げ、行きたいルートを辿る。
「あれもこれも」と欲張ったら、結局4泊5日の行程になった。
スーパーで食材を買い込み、60ℓのザックに荷物を詰め込む。
そして、翌日。まだ薄暗い中、家を出発した。

中房温泉での出会い

9:10、中房温泉に到着。
バスに同乗していたのは、私の他に父親と息子の親子と、男性1名だった。
中房温泉で身支度をしていると、親子の父親に声をかけられる。
「もしかして山小屋の人ですか?」
何で分かったのだろう?もしかして、バイト先の小屋に泊まりに来てくれたお客さんだろうか。
何故分かったのか聞いてみたら、何となく風貌が山小屋の人のようだとの事だった。
確かにこの時期、この日に歩きに来る人は珍しいのかもしれない。

実は、この親子とは、数ヶ月後に再会を果たす事になる。
私の冬のバイト先である山小屋に泊まりに来たのだ。本当に偶然である。
もしかして、「秋に燕から縦走してました?」と聞かれた時は驚いた。
素直に嬉しい気持ちになったし、その後山の話が盛り上がったのは良い思い出だ。
そして意外と「顔」は覚えられているものだと思った。
山の世界は広いようで狭い。
いかなる時も「笑顔」だけは忘れないでいようと強く感じた。

合戦尾根

9:20、私にとって2度目の合戦尾根を登る。
初めて登ったのは2017年のお盆休みだ。
あの時は、正直なところ合戦尾根はそこまで「キツい」と感じなかった。
しかし、今回は。。。
キツい。
荷物が重いのが原因なのか、階段で太腿を持ち上げるのが非常に億劫だ。

今回は、テント泊装備に加えて、アイゼン、ピッケル、竹ペグなどの冬山装備も一式持ってきている。シュラフも厳冬期用だし、食事も5日分だ。
私が、山小屋営業終了後の北アルプスを縦走するのは初めての試みだ。
気温も、ルートの状態も、全てが未知であるので、正直な所、装備も何が必要で、不要なのかが分からなかった。
しかし「低体温症」や「滑落」などの遭難は絶対に避けたい。
今回に関しては装備は多少重くても「万全」を意識したところ、だいぶ重量が増してしまった。
水はほとんど担いでいないのにこの重さは、、、先行きが不安である。

今日の目的地は燕山荘だ。コースタイムとしては大したことはない。
ただただ自分を励ましながら標高を稼いでいく。

合戦小屋にて・・・

合戦小屋で一休みしていると、聴き慣れた声がする。
もしかして、あのグループは、知り合いかもしれない。
しかしサングラスをずっとかけているので、どうにも決定打にかける。
チラチラと様子見つつ、証拠を探す。
うどんを食べ始めた。しかしサングラスだけは何故かとってくれない。
湯気で曇らないのだろうか。
その内バチっと一人と目が合う。声をかけてくれた。
やっぱりそうだった!
地元から遠く離れた場所で仲間に会うのは、何だか嬉しい気持ちになる。素晴らしい偶然だと思った。

燕山荘到着

13:50、スタートから約4時間半かかって、ついに燕山荘に到着した。
テント場の空いているスペースに幕営。
もう、クタクタだ。
何をする気にもならず、シュラフを取り出し、まずは昼寝。
テント場受付は後でやろう・・・。
よく考えてみれば、テントを担ぐのも、山に登るのも久々だ。
まぁ、稜線についてしまったのだから、明日からはボチボチゆっくり歩こう。
1時間程度眠り、テント場の受付と水購入の為に燕山荘へ向かう。
その帰り、ふと燕岳をみる。
雲ひとつない青空の下に、燕岳が鎮座している。

今日は疲れていたので、「燕岳」に登ろうという気は微塵も起きていなかった。
そう、さっきまでは。

その姿を目の当たりにした瞬間、みるみる私の体力と気力が回復していく。
これは、行くしかない!
もはや、登りに行かなければ燕岳に失礼だと感じる程、とても美しかった。

燕岳

15:50、燕岳に向かって出発。
身体の疲労も回復し、20分程で山頂に到着。

大天井岳へ向けて出発

翌日、テントを片付け6:40、表銀座の縦走路へ向けて出発。
登山道上に雪はまだ無く、夏道を順調に辿っていく。
9:20、大天井岳直下の、巻道との分岐点に到着。
少し手前の切通岩付近から雪が増え、いつの間にか晩秋から初冬の景色へ様変わりしていた。
といっても、積雪量はまだ少ない方なので、大天正の登りも夏道ルートのトラバースで問題なさそうだ。
荷物が重く、スリップが心配なので、ここで12本爪アイゼンを装着する。
アイゼンさえ着けていれば滑る心配はまずないだろう。
両手にはストックを持ち、トラバース開始。

バランスを崩さぬように、1歩1歩慎重に進んでゆく。
大天井岳の北東面はすっかり雪景色だ。
久々に雪を踏む事が出来て、私の気持ちも高揚する。
トラバース面は、雪が積もる事により、夏場よりも一段と傾斜が増している。
写真を撮るにしても、まずは安全確保が最優先だ。
13:5、無事に大天荘に到着

大天井岳

荷物をデポして、大天井岳の山頂へ向かう。
今日も秋晴れの素晴らしい天気だ。
山頂からは、槍ヶ岳を始めとるする北アルプスの山々が一望できた。

以前、お盆休みに縦走した時は、雨天でガスがかかっていた為、展望が全く見えなかった。
晴れていれば、こんなに展望が素晴らしいのか。
しばし、山頂で景色を堪能する。

雪から水を作る

大天荘は、既に昨日で営業が終了した。この先の常念小屋も、蝶ヶ岳ヒュッテも全てクローズしている。
ここから先は、一切山小屋に頼る事は出来ない。
一番考えるべきは「水の確保」だ。

そして、おそらく積雪があるのは、この大天井岳付近のみだろう。
この先、雪から水を作れる保証は一切ない。
私が次に寄る予定の水場は、2日後の幕営予定地である「徳本峠」にある。
一応、本日幕営予定の「常念乗越」から往復2時間程の場所にも水場がある。
しかし、今日、水を汲みにいく時間が確保出来るかどうかも分からない。

結局、今日を含めて3日分の水をここで作っていく事にした。
荷物の重量が一体どうなってしまうのか、実に恐怖であるが、覚悟を決めるしかない。
これこそが、秋の北アルプス縦走の厳しさなのだろう。
むしろ、少しでも雪があって良かった。
全く無ければ、さらなる苦行となっていたはずだ・・・。

燕山荘で購入した2リットルの水の他に、2.5リットルの水を雪を溶かして作り出した。
行動水と朝晩の食事を含めて、1日の目安は1.5リットルとしている。
大天荘の前で座り込み、小一時間、せっせと水作りに勤しむ。
小屋閉め作業をしていたスタッフさんが、こんにちは。と声をかけてくれた。
最初、こんなとこで座り込んで良いものかとビクビクしていたが、普通の様子だったので、少し安心した・・・。

初の縦走路

12:00、大天井岳から常念乗越に向けて縦走する。
積雪はあったが、稜線も広く緩やかなので、アイゼンは一度外してツボ足で歩く事にした。
担いだザックが非常に重い・・・。スピードアップしたくても無理。
カメペースでノロノロと歩き始める。

クラストのトラバース

しばらくは軽快に歩いていたが、しかし、東大天井岳に近づいてきた辺りで、不穏な雰囲気に。
クラストしている・・・。
テカテカと光っている雪が実に不気味だった。
とりあえずは、ツボ足でフラットに足を置きつつ、慎重に進む。
荷物の重さが、緊張感を引き立てる。

いやいや、ザックにアイゼン入っているのに、不注意で滑落したら、相当バカだ。
傾斜が緩んだところで、即座にアイゼンを装着する。
ツボでも歩けるかもしれないが、そこで横着して、無駄に神経すり減らして、意味もなく滑落するのも、間抜けな話だ。
ただしここではピッケルが活躍する事はなかった。
ストックの方が安定した。

その後は、標高の高いピークは雪がついており、それ以外では夏道が露出している状態が続いた。
一見すると、山々がガトーショコラのように見えて可愛らしかった。
一度は雪が積もったのか、雪のない部分も全体的にベチャベチャしている。
植生の問題も考えて、都度、アイゼンをつけたり外したりして忙しかった。

ザックが重い

ザックが鉛のように思い。
途中、一時的に慣れたのか、重さを感じなくなった時もあったが、時間がたつにつれて次第に疲労が増してくる。
肩に食い込むザックが痛い。時々、膝に手をつく姿勢をとって、ザックの重さを分散させる。
これは、アザが出来そうだ。

常念乗越到着

15:30、ついに常念乗越到着。
今日も、すっかり疲れた1日だった。
周囲に雪は全く無い。苦労して水を運んで良かった。

テント場の奥に、テントが1張り、男性が1人、準備をしていた。
私もそこから少し離れたスペースにザックを置く。
とりあえず常念岳の冬季避難小屋を見に行く。

常念小屋 冬季避難小屋

常念小屋の前の広場のベンチに、別の男性が座っていた。
てっきり、小屋閉め作業中のスタッフさんだと勘違いした。
「こんにちは。」と声をかける。
避難小屋の事を聞いてみたら、どうやら分からない様子だった。
自分の目で確かめに行こう・・・。

様子を見にいくと、冬季小屋は存在した。中にも入れた。
なかなか綺麗だった。ここに泊まろうかとも考えたが、テントでも十分暖かいので、今回はやめておく事にした。
いつか、厳冬期に縦走する事があったら利用してみようと思う。

テント場に戻る際に、先ほどのベンチの男性に再び声をかけられる。
「明日はどこへ行くのですか?」
「常念方面へ縦走します。」
すると「大丈夫ですか??」と驚くような、心配するような口調で聞かれた。
何に対しての「大丈夫」なのか分からなかったが、とりあえず「大丈夫です。」と答えた。

どうやら、この男性と、テント場の男性は、同じパーティーだったようだ。
しばらくテントから話し声が聞こえたが、夜は18時頃には、ピタリとおさまる。
寝るの、早い・・・。
私も特にやることもないので、食事を済ませ、早々にシュラフに潜り込んだ。

【続く】

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